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コロナワクチンの国際共同購入 スイスの参加、なぜ重要?

現在、多数の新型コロナウイルス感染症のワクチンが臨床試験(治験)の段階にある。しかし、どのワクチンが安全で有効なのかはまだ分からない。世界保健機関(WHO)などが主導するワクチンの国際共同購入の枠組みは、国のリスク回避を助ける Keystone / Bagus Indahono

新型コロナウイルスの第2波によって、有効なワクチンの開発はより一層の急務になった。世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)はこの夏、画期的な行動として「COVAX(コバックス)ファシリティー」を立ち上げた。すべての国が公平にワクチンを入手できるようにする国際的な共同出資・購入の枠組みだ。スイスのコバックスへの参加は、なぜ重要なのだろうか?

このコンテンツは 2020/11/20 08:30

すでにワクチン製造会社2社とコロナワクチンの調達契約を結んでいるスイスは、国際的な共同購入の枠組み「COVAX(コバックス)ファシリティー」への参加を躊躇しているように見えた。しかし、最終的に参加を決めた。コバックスとは何か?なぜスイスの参加が重要なのだろうか?

スイスの参加は不可欠だ、と国際製薬団体連合会(IFPMA、本部ジュネーブ)のトーマス・クエニ事務局長は話す。スイスは、世界保健機関(WHO)とワクチン普及に取り組む国際機関「Gaviワクチンアライアンス」の受け入れ国であり、(シンガポールとともに)フレンズ・オブ・コバックスの共同議長を務める。これらの立場を考慮すると、「スイスはコバックスへの支援を表明するのが少し遅かったと個人的には感じる」と同事務局長はswissinfo.chに対し語った。

WHOが9月21日に発表した最初の参加国リストにスイスは入っていなかったため、一部でひんしゅくを買った。ところが、その数日後に、スイスは参加を表明した。連邦内務省保健庁(FOPH)の報道官がswissinfo.chに対し説明したところによると、この遅れは「署名手続き」によるものであり、連邦政府の関与は「確固たるものだ」。

自国の利益

コバックスがきちんと機能するためには資金援助が欠かせない。国際的連帯を示すだけではなく、参加はスイスの国益にもかなうと専門家らは認める。ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)グローバルヘルス・センタースーリー・ムン共同センター長は、「正しい決断だと思う」と話す。米国、英国、日本、欧州連合(EU)などの大きな人口を抱える高所得国には、「どのワクチン製造会社もより大きい商業的関心があるかもしれない」。人口の少ないスイスに、これらの人口大国が持つ交渉への影響力は無い。コバックスを通して、「スイスは国内用のワクチンを入手するルートを持つ」と同センター長はswissinfo.chに対し語った。

しかし、富裕国として、スイスは、他の人口の少ない小国よりも大きな影響力を持つ。すでにワクチン製造会社2社と調達契約を締結している。8月には、米バイオテクノロジー企業モデルナとの間で、同社で開発中のコロナワクチンが完成した際に450万回分の供給を受ける契約を結んだ。ワクチンは、モデルナと提携するスイスの製薬会社ロンザが国内で製造する予定だ。また、10月には、英製薬大手のアストラゼネカと、開発中のワクチンについて最大530万回分の供給を受ける契約を締結した。

コバックスに参加していない米国をはじめとして、他にも製薬会社と個別にワクチンの調達契約を結んでいる国がある。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は9月の国連総会で次のように訴えた。「私たちは、グローバル公共財としての治療と療法の推進に努めるとともに、どこでも物理的にも価格的にも入手可能な「人々のためのワクチン」開発に向けた取り組みを支援している。しかし、自国民だけがワクチンを手に入れられるよう、裏取引をしている国があることも報じられている。このような「ワクチン・ナショナリズム」は不正だけでなく、自滅にもつながる。誰もが安全でない限り、誰も安全でない」

リスクの回避

連邦政府は、コバックスへの参加は個別契約の「補完的手段」だと言う。どのワクチンが有効なのかまだ誰も分からないのだから、補完的になるだろう、とムン共同センター長は話す。モデルナとアストラゼネカが開発中のワクチンが承認されたとしても、スイスが「より効果の高い、あるいは国民の様々なサブグループにより有効な他のワクチンを調達するかもしれない。例えば、1つのワクチンは若年層に安全で有効だと証明されたが、より年齢の高い層にはもう1つのワクチンの方がより安全で有効だと証明されることがあり得るからだ」と説明する。

その一方で、個別契約をするワクチン製造会社がコバックスにワクチンを全く供給しない、あるいは十分な量を供給しないリスクがあると同センター長は警告する。「連邦政府がこのような政治的主張に取り組み続けることを強く希望する。私たちにとって本当に必要なことは、個別の契約ではワクチンを手に入れることができないすべての発展途上国のために、すべての製薬大手が一定量のワクチンをコバックスのために取っておくと同意することだ」

さらに、コバックスに出資することで、「1種または数種の有効なワクチンを手に入れることが保証される」とIFPMAのクエニ事務局長は指摘し、「コバックスは保険ではない。もしどのワクチンが有効か分かるまで待てば、個別に契約を結ぶ製薬会社からそのワクチンの供給があるまで待たなければならない。だから、コバックスはリスクを回避させる」と説明する。

COVAX(コバックス)ファシリティーとは?

Gaviワクチンアライアンスによると、「コバックスは、政府や製薬会社と協力し、世界中のあらゆる経済力の国が新型コロナのワクチンを入手できるようにする唯一の国際的取り組みだ」。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)やWHOと共にコバックスを主導するGaviは、先進国や発展途上国のワクチン製造会社、ユニセフ(国連児童基金)、世界銀行、市民社会団体などと提携している。


現在、スイスを含む90カ国以上の高所得国が出資国として、ワクチンの供給を受ける資格のある低・中所得国が92カ国参加している。2021年末までにさまざまな製薬会社から20億回分のワクチンを調達することをめざす。


しかし、この取り組みが上手く行ったとしても、人口の20%分―主に、医療従事者や重症化のリスクが最も高い人々―にしかならない。富裕国はこの取り組み以外にも個別に調達契約を結ぼうとするのはそのためだ。

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コバックスの2つの基金

低所得国にワクチンを提供するコバックスを支援するため、スイスは開発援助予算から2千万フラン(約22億9千万円)を拠出している。連邦内務省保健庁(FOPH)によると、これは「パンデミック(世界的流行)とのグローバルな戦いのために、連邦内閣が承認した4億フランのパッケージの一部だ」。

コバックスの出資国には、自国民のためのコロナワクチンを確保するために、第2の「基金」に追加資金を拠出するという選択肢もある。

スイスは第2の基金に拠出するかというswissinfo.chの質問に対して、FOPHは、「スイスは9月、国民の最大20%分のワクチンを確保するため、出資国としてコバックスに正式に参加した。コバックスの出資国としての支払額は最終的に、ワクチンの選択によるだろう」と答えた。

責任あるビジネス?

クエニ事務局長によると、IFPMAは「コバックスに積極的に関わるパートナーだ」。コバックスには、IFPMAのメンバー企業のものを含む多数のワクチン候補がある。「メンバー企業のレバレッジ(少額の投資で利益を高め、事業拡大を図ること)で、コバックスは非常に手頃な価格を確保できるのではないか」と同事務局長はswissinfo.chに対し語った。また、「業界として、個別の価格や一般的な価格方針を議論することはできないが、数多くの製薬大手がパンデミックの間に、利益を追求せず取り組む、あるいは社会的に責任ある価格で取り組むと公言するのを見たことがあるだろう」と指摘した。

これは上手すぎる話に聞こえる。しかし、同事務局長は、新型コロナのパンデミックは前例のないグローバルな課題であり、製薬大手の協力は大いに期待できると話す。「製薬会社にとっては、この責任感に応えることになる。その一方で、製薬会社がこの事態につけ込まないことも求められる。かつてない事態だ。人々より利益を優先している場合ではない」

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