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スイスの城主も楽じゃない!

「ベルン州のベルサイユ」と歌われるオーバーディスバッハ城 (Photo Schloss-Oberdiessbach.ch)

スイスで城の維持費は莫大なため、現在12件ほどのお城物件が売りに出ていると不動産専門のビジネス・インモビーリエン誌が伝えている。

スイス国内にはおよそ1500軒のお城、館があり、その半数は個人所有だ。プライベートでも公共でもお城を維持して行くのには多大な労力と豊かなイマジネーションを必要とするようだ。

 「お城で生まれ、遺産としてお城を受け継いだ人は、それを文化遺産として維持して行くことに疑問を抱きません」と語るのはオーバーディスバッハ城の城主、シクムント・フォン・ヴァッテンヴィル氏。「改修工事を続け、維持して行くのは“古い石”に情熱を抱いているから」と説明する。

 ヴァッテンヴィル氏は「ベルン州のベルサイユ」と名高いオーバーディスバッハ城の11代目の城主だ。古い石は維持費も修復費も高くつくため、城主という特権は高くつくには違いない。

「ベルンのベルサイユ」での生活は

 もちろん、文化遺産として指定された建造物には州が補助金を出す。しかし、州が金持ちかどうかによって補助金の懐の深さも異なる。ベルン州は気前のいいほうだが、それでも「歴史的な構造を保存するために補助金を受けますが、それだけでは生きていけない」というのが実情だ。

 ヴァッテンヴィル氏(45歳)は4人の子供がおり、農業で生計を立てている。それでも、生活に余裕を持たせるために、他の多くの城と同じように一般公開している。

 もちろん、家族全員がお城と庭園の維持に駆り出される。ヴァッテンヴィル氏は「でも、重荷ばかりではありませんよ。お城に住むというのは質の良い生活にも繋がります」と力強く語った。

お城売ります

 それでも、売らなければならないことも多い。不動産の専門誌ビジネス・インモビーリエンによると、スイスで現在12件ほどのお城物件が売りに出ている。中でも、最も高い物件はグラウビュンデン州にあるタラスブ城で売値は3000万フラン(約26億円)だ。 

 この岩の上に聳え立つお城の城主はドイツの元王子、ドナトゥス・フォン・ヘッセン氏。ドイツでも多くの城を所持している。同氏の家系が100年前からこの城を受け継いできたが、ここ数カ月前から売りに出している。

 この城は現在、半分公開されているが、新しい買い手がそれをやめる恐れがある。このため、地元の人は基金を作ってどうにかこれを買い取りたいと思っている。グラウビュンデン州は先買い権をもっているものの、まだお金が集まらない。

苦しむ城主たち

 ロマンド地方でもヴヴェイ(Vevey)の上にあるオートビル城など、100軒もあるヴォー州の最も美しい城の城主たちは城を維持できなくなっている。「修復を考えなくても、維持だけで毎年莫大なお金が掛かる」とオロン城を救う会のアンドレ・ロシェ氏は語る。

 幸い「お城の生活」に憧れる金持ちが買い取ることもある。ベルン州のゲームリンゲン城やベルクマルテン城などは最近、実業家に買い取られ、修復された。これは「幸福な運命」とヴァッテンヴィル氏はみる。

 「スイスのお城はフランスなどに比べると3倍する」と語るのはチューリヒの高級不動産ドレイヤー&パートナーズのマイケル・ドレイヤー氏。買い手を見つけるのも難しいわけだ。

ホテルにするのも難しい

 金持ちが買い取らない場合は国や自治体という解決策もある。しかし、国は既に国内の城の半分ほどを所持しており、それを美術館、カルチャー・センター、牢獄または事務所に改造し、使用している。スイス城塞協会のトマス・ビッテーリ氏は「これらの改造には多大な費用が掛かるばかりか、文化遺産保存の面でも問題がある」と指摘する。

 一方、これまで80ほどの城が美術館になったが、財政は火の車だ。他方、これらの城をレストランやホテルに改造するのも難しい。「文化遺産維持のため州の規制が厳しすぎて、州によっては古い構造と快適な設備を合わせるのは無理」とビッテーリ氏。

 この結果、隣国のドイツやフランスと比べるとスイスでは高級ホテルやチャーミングな宿に改造されたお城の数は断然少ない。

世界的建築家ボッタ登場の例

 それでも成功例はある。ヴァレー州のロエシュバンシュタイン城を救うために地元有志が1999年に協会を作り、修復され、現在では文化センターとして使われている。(注:まだ、修復は完了していない)ロエシュバンシュタインの地元では、崩壊しそうなお城の3つの塔に困り、30年来、解決策を探していた。

 そこで現れたのが建築界のスター、マリオ・ボッタ氏だ。「ボッタ氏がたまたま、ロエシュバンシュタインを訪れて、お城に惚れ込んだのは幸運でした」とロエシュバンシュタイン城協会のメンバーで政治家のぺーター・ヨセン氏。
 
 「彼も修復を手がけるのは初めてだったので、ある程度の自由を要求してきました」。そこで、ヨセン氏は世界的建築家、ボッタ氏と地元の建築家、政府の文化遺産保存委員会と三方の板ばさみになった。地震の際の安全規格にも合格させなければならなかった。

 多くの忍耐と想像力と外交術のお陰で改修の第一段階はうまくいった。塔の安全は確保され、金属の素晴らしいドーム(円蓋)が上に乗っかった。この難題に論争は激しかったが、ヨセン氏は「国際的スターを来させておいて、建築家特有のスタイルを残させないわけにはいかないでしょう」と言う。
 
 しかし、ボッタ氏の塔は多くの基準をクリアしたといえる。「盗作」や「偽の古さ」を回避することが出来たとみるのは前出のヴァッテンヴィル氏だ。「エレベーターや洗面所など近代的な設備を加える場合、新しいものとすぐ分かり、元の状態にすぐ戻せるようでなくてはいけない」という。偽の中世建築や想像上の中世建築ではなく、原型に忠実な形に留めたいからだ。


swissinfo、イサベル・アイヒェンベルガー 屋山明乃(ややまあけの)意訳

補足情報

- スイスでは約800の城があり、ほぼ同数の田園の館(マノワール)がある。

- 城、館の半分を国が所持している。

- 現在、12件ほどの物件が売りに出ている。

- 最も高い物件はタラスブ城で3千万フラン(約26億円)。

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