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スイスの映画フィルム保管所建設案、資金調達で難航 

映画フィルムの保存状態が危ぶまれているスイス・シネマテーク Keystone

スイスの映画フィルムコレクションの保存状態が危ぶまれている。

映画資料館「スイス・シネマテーク」は、従来のフィルム保管所が手狭になったため、新たに空調設備のある収蔵庫を建設する計画中だ。政府に約1,500万フラン(約12億6,000万円)の資金援助を要請しているが、政府は難色を示しているという。

スイス政府は現在、財政難から経費を削減しているため、収蔵庫建設に必要な予算を確保するのは難しいという。景気が大幅に回復する見込みのない中、資金確保は望み薄との悲観的な見方もある。

厳しい財政事情

 スイス・シネマテークは1943年、北スイスのバーゼルに創設されたが、市から資金援助が打ち切られたため、1948年には西部ローザンヌに本拠地を移している。同館内では通常の上映プログラムの他に、映画史の講義を一般に公開している。ここには無声映画や、スイスで撮られた外国映画など貴重な映画フィルムが保有され、その数は約65,000本にも上る。

 同館長のエルヴェ・ドュモンさんは、これらのフィルム保管確保に頭を悩ませている。

 「スペースの問題は深刻だ。フィルムが一杯になってきて、保存するのに適切な湿度や条件が保ててなくなってきている。新しい収蔵庫建設には政府の援助が欠かせない」と訴える。「連邦文化局は私達に同調してくれているが、他の関係当局がOKしてくれない」と話す。

 緊縮財政を進めている連邦財務局が予算を出し渋るのは、映画資料館に対してだけではない。国立図書館や国立博物館に対しても状況は厳しい、と連邦文化局のダヴィト・シュトライフ氏は指摘する。

 連邦文化局は現在、妥協案として、フィルム収蔵庫を建てる用地を政府が提供できるかどうか、関係当局に打診しているという。また、スイス・シネマテークに対しても当初の計画から経費を抑えるよう見直しを促している。

 連邦文化局のシュトライフ氏は「もしこれでダメなら、景気がよくなって、財政予算に余裕が出てくるまで待つしかなさそうだ」と話している。


 スイス国際放送 ジョアンヌ・シールズ    安達聡子(あだちさとこ)意訳

スイス・シネマテークが保有する映画フィルムは約65,000本に上る

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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