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東京バレエ団、「ザ・カブキ」でベジャールを悼む

「いろは47文字」を背景に芸者に扮した女性ダンサーたちが踊るシーンは、その華やかさに観客からの反応が大きかった

東京バレエ団が6月5~8日、昨年秋他界した振付家の巨匠モーリス・ベジャールの作品「ザ・カブキ」、「ブガク」、「バクティ」をローザンヌで上演し、熱い喝采を浴びた。

ベジャールは、東京バレエ団と40年近い交流を持ち「わたしの第2のカンパニー」と呼んだ。「ザ・カブキ 」などの作品は東京バレエ団だけが上演できるという特権を持つほどに同バレエ団を大切にした。

ほかのカンパニーには上演禁止

 「ベジャールの容体が悪いと聞いてすぐに飛行機に飛び乗った。しかし間に合わなかった。後を追いたいぐらいがっかりした」
 と東京バレエ団の総監督、佐々木忠次氏はしみじみと語った。「ザ・カブキ ( The Kabuki ) 」は10年の年月をかけ1986年に完成され、その間ベジャールは何度も日本を訪れ、1月1日の彼の誕生日と、日本の正月を何回一緒に祝った分からないぐらいだという。

 その結果、忠臣蔵を題材にした「ザ・カブキ 」、三種の神器を扱った「ブガク ( Bugaku ) 」、三島由紀夫をテーマにした「M」を完成させ、東京バレエ団に贈り、ほかのカンパニーには上演を禁止した。日本の文化、伝統を主題にしているだけに、日本人の体の動きでしか表現できない部分もある。

 いずれにせよ今回の公演は、そうしたベジャールが20年間を過ごした地ローザンヌでベジャールに敬意を捧げる追悼の意味もある。
「東京の舞台より狭くてやりにくいが、団員全員、全力投球した」
 と佐々木氏。

音楽的感性の鋭い人

 今回の演目の1つに、インドの伝統音楽に合わせてシバ神とその妻シャクティの役に扮した男女のダンサーがインドの彫刻のように官能的に踊る「バクティ ( Bhakti ) 」がある。この作品に凝縮して表現されているようにベジャールはアジアの国々の文化に造詣が深く、特に音楽を通してその文化を表現する才能に優れていたと言う。
「音楽的感性の鋭い人でした。音楽の中にその文化のエッセンスを感じとるようなところがあった。だから反対に、例えば『ボレロ』の音楽を聴くと、ベジャールの振り付けしか頭に浮かんでこない」
 と佐々木氏は説明する。

 一方、歌舞伎役者とも交流し、日本の舞台芸術を深く愛し理解した、ベジャールは、「ザ・カブキ」の中に、歌舞伎の諸要素、華やかな装飾性、感情やストーリーを展開させる拍子木などの音響性、黒子などの要素をうまく取り入れ、総合芸術としての「ベジャール歌舞伎」を作り出した。

 観客席からため息の漏れた着物の美しさや女性のエロス、男性ダンサーが集団となって踊るときに溢れ出るダイナミズム。屏風や紋などの象徴的な使い方など、数え切れないほどの表現にベジャールの才能と歌舞伎が融合された。

 ところで、「ザ・カブキ」は47人の赤穂浪士の切腹シーンで幕が下りる。
「ベジャールは素晴らしい。しかし切腹シーンは残酷で、違和感を感じた」
とある観客の反応。確かに、三島由紀夫に心酔したように、ベジャールは忠臣蔵の「切腹」という要素を特に「至上の美」に仕立てあげているところがある。それは彼独自の美意識であり、そうした日本文化の切り取り方は好むと好まざるとにかかわらず、「ベジャールの日本」なのだろう。

swissinfo、ローザンヌにて 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

東京バレエ団

1964年、東京で創設される。

日本より海外での公演のほうが多いといわれ、30カ国141の都市で計630回の公演を行った。

団員は70人。毎年オーディションを行い団員を募集する。

特にモダンダンスの振付家の作品を多く選び、ベジャールの「ザ・カブキ ( The Kabuki ) 」などの作品や、ジョン・ノイマイヤーの「月の7つの俳句 ( Seven Haiku of the Moon ) 」、ジリ・キリアンの「完全な概念 ( Perfect Conception ) 」などを過去に上演してきた。

「ザ・カブキ ( The Kabuki ) 」は1986年、「ブガク ( Bugaku ) 」は1989年、「M」は1993年にそれぞれ完成され、ベジャールは東京バレエ団だけに上演を許可した。

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