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電子認証 何でもできる電子身分証、スイス国民は不信感

ホワイトボードにサインする男性の後ろ姿

スイスには、デジタルの個人認証サービス「スイスID」がある。このサービスを提供するベンチャー企業には、民間企業や公共性の強い企業が参加。写真は、このベンチャー企業に関する合意に手書きで署名する、スイス連邦鉄道のアンドレアス・マイヤー最高経営責任者(CEO)

(© Keystone / Ennio Leanza)

公的証明書のダウンロード、保険のアップグレード、電子投票制度を利用して国民投票への参加も、ログイン一つでできるとされる。電子身分証をすでに導入している国もあるが、スイスでは議論が続く。時代に乗り遅れないよう、政府と連邦議会は法案を作成したが、その内容は国民の期待からずれている。

この記事はスイスインフォの直接民主制ポータルサイト「直接民主制へ向かう他のサイトへ」#DearDemocracyの掲載記事です。当ポータルサイトで紹介している社内外の見識者の見解は、スイスインフォの見解と必ずしも一致するものではありません。

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電子身分証は、欧州では全ての国で導入済みだが、スイスではまだ実現していない。 

スイスはこのギャップを埋めようと、「電子的な身分証明サービス」に関する新法他のサイトへの制定を目指す。法案は国民議会(下院)で3月に可決され、今月上旬には全州議会(上院)も通過した。た。 

この法案は、主に民間企業がスイスで電子身分証を発行し、国は可能な限り介入しないことを前提にしている。

スイスID 

電子身分証は、単に旅券を電子化したもの、というわけではない。 

むしろ、これ一つで国の行政機関、郵便、銀行、保険、携帯電話会社、鉄道などのサービスが利用できる「統一アカウント」と言える。 

スイスにはすでに「スイスID他のサイトへ」という電子認証サービスがあり、日常の多様なオンラインサービスを無料かつ安全に受けることができる。 

サービス提供者はスイス・サイングループ。この合弁企業の立ち上げに関わったのは、元国営のスイス郵便スイス連邦鉄道、スイスコム、銀行大手のUBSおよびクレディ・スイス、チューリヒ州立銀行、保険会社、健康保険会社。 

スイス・サイングループは、スイスIDをスイスの公的な電子身分証に昇格させ、利用できるサービスをさらに広げようとしている。 

電子身分証は欧州のすべての国で導入されている。草分けの一つがリトアニアだ。

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国はバックにいるだけ 

そして、国の役割は電子身分証の規制だけとされるが、国はそれさえも自ら行うつもりはなさそうだ。第三者の専門家委員会が、民間企業による電子身分証の運用を監督し、特にデータ保護に目を光らせることになっている。 

このように、国の姿勢ははっきりしている。 

国民の反応はどうか。先日発表されたアンケート結果によれば、新法は国民の望む形と正反対だ。電子身分証の発行者として信用できるのは国だけと考えるのは、回答者の87%。一方、民間企業を信頼するとした人は2%だけだった。 

アンケートを委託したある連盟は、レファレンダムの提起で、新法に拒否権を突き付けようとしている。この連盟に加盟するのは、Digitale Gesellschaft他のサイトへなど様々な消費者団体や、政治キャンペーン向けのオンラインプラットフォーム「Wecollect他のサイトへ」とクラウドロビイング・スイス他のサイトへ。Wecollectは、スイスで民主主義の電子化を推進するダニエル・グラーフ他のサイトへ氏が立ち上げたことで知られる。レファレンダムが提起され、100日以内に有権者5万人分の署名が集まれば、法案の是非が国民に委ねられる。 

「国民が電子身分証の利用を考えているのは、オンラインショッピングなどではなく、国のサービスを利用するときです。政治と国民との間に溝があるのはそのためです」と、スイスのオンライン雑誌レプブリークの記者で、デジタル民主主義に詳しいアドリエンヌ・フィヒター氏は話す。 

一方、政治家たちの考えは逆だ。国民にとって商業利用できない電子身分証には魅力がないため、電子身分証一つであらゆることができるようにすべきと考える。「しかし大半の人はその考えには全く納得していません。個人データ保護の観点から、そのような高いリスクのある制度は望まれていないのです。1人に一つだけの電子身分証登録ナンバーを通し、あらゆるデータを中央集権化することに危機感があるのです」(フィヒター氏) 

直接民主制 遅々として進まないスイスの電子投票制度作り 

国外で暮らすスイス人のために電子投票システムを整備することは、スイスで20年近くも議論されている。だが制度作りが完了するのはまだ先になりそうだ。

信頼の問題 

民間企業が電子身分証を発行することに対し、国民の間で不信感が募っている。フィヒター氏はその理由として、近年、テクノロジー企業で起きた数々のデータ流出事件を挙げる。「公的な電子身分証を発行してもらうのに、民間のeコマース・プラットフォームや銀行で申請しなければならない点も、不信感の要因になっています。旅券事務所や役場が発効する方が、信頼されやすいでしょう」 

先月レプブリークに掲載されたフィヒター氏の記事他のサイトへによると、欧州では大半の国で、国の機関だけ、もしくは少なくとも国と民間の両方で電子身分証が発行されている。一方、スイスが目指す、国が発行に関わらない制度を導入しているのは、デンマークと英国だけだ。 

失敗に終わった「スイスID」 

では、なぜ国は公的な電子身分証の発行を嫌がっているのだろうか?「(個人認証サービスの)『スイスID』が失敗したことが大いに関係していると思います。国が立ち上げ、民間がサービスを提供しましたが、あまり世間に受け入れられませんでした。その教訓から、国は『全く関与せず、最低限の任務だけ引き受けるべき』との姿勢になったのです」 

現在はどうだろうか?「国民から受け入れられず、信頼されないサービスを再び導入するのであれば、まず過去を振り返ってからにすべきでしょう」とフィヒター氏。ただ、国中心のサービスという選択肢がないまま、民間中心の制度が「しかたなく」世間に受け入れられる可能性もあるという。 

フィヒター氏によれば、重要なのは、スイスの電子身分証が欧州連合(EU)の統一ルール他のサイトへ(eIDAS規則)に準じるものとしてEUに認められることだ。「そうすればスイスの電子身分証で外国のウェブサイトにアクセスし、サービスを受けることができます」


(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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