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秋の夜長に頭の体操はいかが

英国のファンにとって数独は単なる時間つぶしを超えた存在

(Keystone)

レオンハルト・オイラーと聞いてぴんと来る人は少ないだろうが、このバーゼル出身の天才が18世紀に生み出したものは、すでにあなたの家のテーブルの上に乗っているかもしれない。その名を数独という。

読みはそのまま「すうどく」。1度はまったらやめられないこのパズルは米国や日本、英国ではすでに有名だったが、最近になってスイスの新聞や本屋にも進出してきた。

 「数学はあまり関係ありません」と語るのは、イタリアのサピエンツァ大学で数学を教えるアルベルト・ベルサーニ教授。数独の熱狂的愛好者だ。「頭を抱えて謎解きをする、という事もありませんね。必要なのは論理的思考とすばやさ、そして我慢強さです」

 人気のあるゲームはいつもそうであるように、数独の理論もいたって単純明快だ。3×3のブロックに区切られた9×9の正方形の枠内に1から9までの数字を入れていく。3つ並ぶブロックの3番目はすでに数字が入っている。

 考え方はちょっとルービック・キューブに似ている。しかし頭をひねっているうちに、気がつけば手に持っているあわれな鉛筆の端を噛んでいるかもしれない。それほど数独は難解かつ魅力的だ。ルービック・キューブで色にあたるのが、数独では数だ。頭をひねりながら数を当てはめていくこのパズルは、就学前の児童にぴったりのゲームかもしれない。

 クロスワード・パズル愛好者は「言葉を当てはめていくパズルに比べれば、数なんて無機的だ」と思うかもしれない。ところがどっこい、それは簡単に比較できる問題ではない。数独では、純粋に論理的思考が求められる。いうなれば、チェスにも似ているところがある。語彙力や文化的知識などは役に立たないというわけだ。

バーゼル生まれ

 数独は長い国際的な歴史を持つ。一瞬、日本で生まれたものかと思われるかもしれないが、そうではない。数独は222年前にスイスの数学者レオンハルト・オイラーが考案した。彼は18世紀の数学に多大な影響を及ぼした天才だった。

 オイラーは1707年にスイス北西部バーゼルで生まれた。市の大学で勉強した後、19歳にして当時のロシアの帝都、サンクト・ペテルブルクに教授として招かれる。この天才的数学者は1783年に生涯を閉じたが、この晩年に「魔法の正方形パズル」を発案する。81の正方形で構成されたこの正方形のゲームが、彼が考案した最初の数独だった。

 オイラーは一度国を出た後、二度と故郷の地を踏むことはなかったが、スイスは今でも彼がスイス出身であることを誇らしく思っている。かつては10スイスフラン紙幣の顔だった。生誕300年記念にあたる2007年には盛大な催しが予定されている。

数独の世界進出

 オイラーが発案したこの正方形パズルは、何百年もほとんど無名だった。ところが1970年代にニューヨークのクロスワード雑誌が数独を「ナンバー・プレイス」として掲載し始めると急速に世界に広まっていった。しかしまだまだこれは一部のファンのみに知られていた存在だった。

 「ナンバー・プレイス」を見た日本の出版社が、これを「数独」と命名し(日本語で「すう」は「数字」、「独」は「単独の、独特の」という意味だ)、1984年に初めて日本に紹介された。これが日本で大当たりした。

 次に大きな波が来たのが1997年だった。ニュージーランド人のウェイン・グルド氏が東京の本屋をぶらぶらしている時に、偶然数独を見つけたのだ。彼はその後6年かけて数独を取り込めるコンピュータ・ソフトを開発した。そして2004年10月、満を期して数独は英国大手新聞、タイムス紙にお目見えした。

 タイムス紙は英国で最初に数独を掲載した新聞である。数カ月後、ブームに火がつき、今では全ての英国の全国紙が毎日数独を載せている。朝、多くのイギリス人が地下鉄の中でこぞって数独に没頭しながら通勤する風景が日常的に見られるようになった。

 スイスのトラムも遅かれ早かれ、ぶつぶつ数字をつぶやきながら乗っている人々で一杯になるかもしれない。

スイス上陸は5月

 数独に最初に飛びついたのは、スイスの中でもドイツ語圏地域だ。今年5月には日刊紙ターゲス・アンツァイガーが最初に掲載し、それから定期的に土曜版に載せることにした。「読者から大きな反響がありました」と編集者のベンノ・シュミットさんは語る。

 7月末にはタブロイド紙のブリックや首都ベルンで発行されているベルナー・ツァイトゥングが掲載に踏み切り、同じくフランス語圏ローザンヌではル・マタン紙が、ジュネーブではル・タン紙が続き、文字通り数独ラッシュとなっている。ル・タン紙のアヌッホ・セタキアさんが数独の人気を語る。

 「当初、掲載は夏の間の2カ月だけのはずでした。ところがあまりに反響があったので、定期的にずっと掲載することにしたのです」

 数独についての本も次々に売り出されている。スイス最大規模の本屋、オレル・フュースリによると、数独は7月に最も売れたベスト5に入るという。

swissinfo、 トーマス・シュテファン 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

キーワード

数独はスイスの数学者、レオンハルト・オイラーが1783年に考案した数字のパズル。

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