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ローザンヌ国際バレエコンクール、吉田都「ありのままの自分を出して」

「やりたいことをやりたい時期に、自分でコントロールしてできるのが今の私には合っている」と吉田都氏 Shunki Ogawa

「コンクールではありのままの自分を出すことが大切なので、自分を解放してあげることだ。ローザンヌはこれからの成長を見る場。今、完璧でなくてもいい」と吉田都(みやこ)氏は強調する。

 「第40回ローザンヌ国際バレエコンクール」に審査員として参加し、1週間ハードなスケジュールをこなす吉田氏。若いダンサーへのアドバイス、またフリーとして活躍するようになった経緯や、今後の活動の方向性などを聞いた。

swissinfo.ch : ローザンヌの審査員を今年で3回引き受けられました。ぎっしりと詰まったスケジュールで、その上ボランティアです。なぜこんなハードな仕事を引き受けられたのでしょうか。

吉田 : 人生がここでガラリと変わったからです。ほかの審査員の方もみなさんそうですが、今自分があるのはここを通過したからで、だからお返しするというか、引き受けるのが義務だと思っています。ぜひやらせてくださいという感じのものです。

世界中から審査員だけでなくコーチの方も来ていますが、やはりみなさん特別な思いがローザンヌにはある。

それに、フェアーな素晴らしいコンクールなので、お手伝いしたいと思います。バレエ界にとっても大切な所です。世界中で活躍しているたくさんのダンサーがここから巣立っていますから。

swissinfo.ch : 今ここでコンクールに参加している生徒たちにアドバイスをいただけますか?

吉田 : ありのままの自分を出すことが大切ですから、自分を解放してあげることです。このコンクールは、これからの成長を見るものなので、今完璧でなくてもいいのです。

また、ここに来ているだけですごい経験をしている。違う環境、違う劇場の中で世界中から集まった同世代のダンサーたちと稽古をするだけで、ものすごく勉強になる。ですから、いろいろな人たちといるというこの環境を楽しんでほしいですね。

小さな学校から来ている生徒は、たいていはいつも1人の同じ先生に習っていて、先生本人にも、先生の出すエクササイズにも慣れている。ところがここではいろいろな先生から指導を受けられるという、それも素晴らしい経験です。

swissinfo.ch : 先ほど、クラシックの練習で、足の動きのパターンが理解できない生徒がいましたね。

吉田 : 確かに。インターナショナルな学校から来た子はいろいろなパターンに慣れているのですが・・・。でも、その子が技術的にできないのか、それとも慣れていないからできないのか、というのは見ていて分かるので、すぐにマイナス評価にはなりません。しかし、やはりきちんとできてアピールできた方がいいですよね。

それと、分からないときは聞いた方がいいです。何回も聞くと聞きづらいのですが、分からないのに聞かないということの方が問題だと思います。

swissinfo.ch : 技術的な質問です。吉田さんは音楽に合わせるというより、まるで体の中で音楽が鳴っていて、それを自由に使いこなすといった印象を受けるほど、音楽に乗った踊り方をされます。それは先天的なものか、それとも訓練でできるようになるものなのか。もしできるとしたら生徒たちにアドバイスがありますか?

吉田 : 音楽は大切です。先ほど練習を見ていて音楽を使ってないというか聞いていないというか、そういう子がいましたね。まあ、みんな必死ですから、緊張して音楽が耳に入ってないのかもしれない。

しかし(将来)舞台をやるとなったら、それこそ自分の中から音楽が出てくる位に体の中に入っていないとだめですよね。そうでないと体が解放されないと思います。

swissinfo.ch : 吉田さんの場合、どうやって体の中に音楽を入れられるのですか?

吉田 : とにかく音楽をいやというほど聞きますね。新しい曲の場合は、特に音だけを何度も聞きますね。

でもリハーサルのときに何度も聞きますから、それでも音楽に合わない生徒というのは、問題があります。

中には、多少音楽に遅れてもいいから回転を終わらせてその技術を見たいという人もいるかもしれませんが、わたしは音楽に遅れる位回っているよりは、1回ぐらい回転が減っても音楽と共に終わらせてくれないと、見ていて気持ちが悪く感じる方です。

自分では、一つのフレーズの中で(はじめに)長めに使って動きをやり、遅れた分をその後早めて最後はきちんと合わせて、というのはやります。それが強弱を生み出すし、見ていても面白いと思います。機械みたいにいつもカウントで踊ってもそれは面白くないですから。一つのフレーズの中で音楽と遊ぶような感じです。

swissinfo.ch : 最後に、現在フリーで活躍されていますが、フリーになられた理由と、今後の活動の方向性を聞かせていただけますか?

吉田 : たくさんの理由があるのですが・・・。一番大きかったのは、日本人と結婚して日本が視野に入ってきた。ちょうどそのころに、長く現役で踊ってはいられないので、やはり踊りをやめる前に日本のお客様の前で踊りたいなというところがあり、日本に帰ろうと思いました。

最初はベースのカンパニーがないととても難しいと思っていたのですが、今になると、やりたいことをやりたい時期に、自分でコントロールしてできるのが今の私には合っているというところに行き着いて、フリーランスを選んだのです(微笑む)。

swissinfo.ch : では、満足していらっしゃいますか?

吉田 : はい。ただ、日本に帰った初めの何年かは、まず日本の社会に慣れるのに苦労しました。でも今は落ち着いて自分のやりたいことに集中できる環境ができています。

swissinfo.ch : 長いスパンでは、いつか教える側に回るといった考えもおありですか?

吉田 : ええ、今でも教えることは始めています。去年もセミナーをやりましたし。子どもたちからは逆に、私が勉強させてもらっています。

今、自分の中で何をしなくてはいけないかということで、迷いがありますが、タイミングや様子を見ながら進めたいと思っています。

日本ではバレエの人気は凄いです。それは先輩や先生方が道筋を作ってくださったお蔭です。ただ、もう少しダンサー達が踊りだけに集中できる環境が整えられればと思い、その辺りのことを考えています。

多分ヨーロッパの(劇団、カンパニーが国立や州立のような)環境を作るのは、日本では難しいと思います。でもアメリカのカンパニーの在り方を少し見習って、国の援助がなくてもスポンサーや基金などでお金を集めて維持する方法があるのではと、現在模索しています。 

1965年、東京に生まれる。


1983年、「ローザンヌ国際バレエコンクール」で入賞し、「英国ロイヤル・バレエスクール」に入学。

1984年、「サドラーズ・ウェルズ・ロイヤルバレエ団」に入団。

1995年以降、「英国ロイヤル・バレエ団」のプリンシパル(最高位ダンサー)として活躍。

2004年、ユネスコの平和芸術家に任命される。

「英国ロイヤル・バレエ団」のプリンシパルを2010年に辞め、現在フリーとして活躍。紫綬褒章、大英帝国勲章受章。

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