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『アルプスの少女ハイジ』がミュージカルに

ヨハナ・シュピリを主人公に、彼女の病気の息子に語ったハイジの物語。ミュージカルで知る作家の姿. TSW Event

夏は屋外劇の季節だ。今年は、『アルプスの少女ハイジ』がミュージカルとして上演される。去年のドイツ、ヴァイマールの劇団による『ウィリアム・テル』を上回る人気になるのか。地元観光局の力が入る。

『ハイジ』がミュージカルになるのは世界で初めて。原作は子供向けだが、ミュージカルは大人向けに作られている。原作者で19世紀の女流作家、ヨハナ・シュピリが直接語る設定の『ハイジ・ダス・ミュージカル』は、脚本、音楽とも英国人が手がけたもの。ミュージカルは、ドイツ語だがスイスの方言で演じられる。

 チューリヒから東へ70km、スイス東部にあるサルガンツ(Sarganz)地方を地元の観光局は「ハイジラント」と呼び、観光客の誘致に力を入れている。ハイジの小屋があるマイエンフェルトなど、日本人観光客にも有名な地方だ。7月末から1カ月にわたって上演される『ハイジ・ダス・ミュージカル』の構想も、観光局が希望して実現した。

作家ヨハナ・シュピリを知る

 物語は、病気で床に伏せている息子ベルンハルトを励ますためにアルプスの少女ハイジの物語を語る作家、ヨハナ・シュピリが主人公だ。ハイジがアルプスの小屋でおじいさんと過ごす日々をシュピリが語ると、ベルンハルトの病状は回復の兆しを見せ始める。ベルンハルトがライプチッヒで再び学ぶことを夢見るようになると、ハイジはおじいさんと別れ、フランクフルトのクララの下でさびしい生活を強いられるといった具合に作者の生活とハイジの物語が交差する構想だ。

 チューリヒの作家ヨハナ・シュピリは、一人息子ベルンハルトを失っている。しかし「『ハイジ』は息子が死ぬ5年ほど前に書かれたもの。この設定は、現実ではありえない」と指摘するのはシュピリについての論文もある、スイス人の女流作家のレギナ・シンドリ氏。しかし「彼女が一番愛したのは息子だったので、脚本はシュピリの私生活をうまく取り入れたものと評価したい」という。

 ハイジのことは良く知られているが、作者のことはあまり知られていない。これは、シュピリが自伝を書くことを嫌ったからといわれるが、残された手紙を通して、彼女の性格は十分知ることができる。

 シュピリを演じるミュージカルスターのスウ・マティスさんは、シュピリのモノクロ写真を指して語った。「厳しい目をした人です。実際に厳しい人だったと思いますが、19世紀の男性中心の社会の中で活躍したのですから、人間に対する情熱があったはず」マティスさんは、主人公のストイックさと情熱の二面性を舞台の上で出せるように演技したいという。

典型的な英国風のミュージカル

 『ハイジ・ダス・ミュージカル』はヨーデルなどスイス民謡は一切なし。「音楽はとってもブリティッシュ。ところどころにスイス的なものを入れているので、観客を裏切ることはないと思う」と演出家のシュテファン・フーバー氏。

 故郷を思う心や自分のルーツを求めるハイジは、アルプスを越えて世界の人々に理解されているので、特にスイスの音楽である必要はないという判断だ。それより「人間としてのハイジをヨハナ・シュピリとの対話を通して表現したかった」と語った。

 ミュージカルのほか、この夏にはマイエンフェルトのハイジの小屋を中心に、素人によるハイジ屋外劇も上演される。こちらは、原作どおりの純粋ハイジが舞台を飛び跳ねる。

swisinfo  佐藤夕美(さとうゆうみ)

ハイジ・ダス・ミュージカル
脚本 シャーン・マッケンナー
音楽 シュテファン・キーリング
出演 スー・マティス(ヨハナ・シュピーリ)
サビネ・シェドラー(ハイジ)ほか

ハイジ・ダス・ミュージカル

期間 7月23日から9月3日まで、日、月曜日を除く毎日。

場所 ヴァーレンシュタット

上映時間 20時から休憩を入れて2時間半。

チューリヒから特別列車も出る予定。駐車場はないので電車で行くことが勧められている。ヴァーレンシュタットの駅からシャトルバスが運行される。

チケット 平日 52〜117フラン(約4500〜1万円)。金・土 67〜132フラン(約5800〜1万1400円)

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