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100%チョコレート展

宝箱は海賊だけのものではなさそう swissinfo.ch

スイスでは、イースターシーズンにチョコレートの消費量が跳ね上がる。しかし、チョコレートで作ったウサギやチョコタマゴが姿を消した今、何が残っているのだろう?

中央スイスのルツェルンにある歴史博物館では、この疑問に答えるかのように世代を超えたチョコレート好きに向けた展覧会「100%チョコレート展」が開催中だ。

香りで魅惑

 ルツェルン歴史博物館 ( Historisches Museum Luzern ) のキュレーター、アレクサンドラ・シュトレーベル氏は、チョコレートのない人生なんて考えられないと言う。彼女自身1日40グラムのチョコレートを食べるという。実際、展覧会の準備で1日200グラムまで食べてしまったこともあったそうだ。もちろん、調査のためにという理由があってのことだが。
「いろいろなチョコレートをもらったので、それを試食しなければならず。誘惑は強く、それを拒否することは難しかった」
 とシュトレーベル氏は言い分けがちに弁明する。

 見学者にとっての誘惑は、展示会場に入ったとたんに始まる。チョコレートの匂いが立ちこめ、嗅覚を通しての誘惑も加わる。チョコレートに使われるキャラメル、ジャスミン、バニラといったフレーバーを嗅ぐことができるコーナーもある。

 「おいしいチョコレートには約500種の香りがありますが、ここで嗅げるのは6種類だけ」
 とシュトレーベル氏。見学者を満足させるために、炒ったカカオ豆など3種類のチョコレートのサンプルを試すことができるようになっている。味覚に訴えるコーナーもあるが、視覚に訴えるコーナーもたいしたもの。見学者は、ダークチョコで作られた高さ約1メートルのエッフェル塔のほか、ホワイトチョコの白熊がミルクチョコのカメの横にポーズするといったオブジェなど、パティシエがチョコレートを素材にした作品およそ30点に目を奪われる。

 素材がチョコレートでもあり、5カ月続く展覧会に耐えられるのだろうか。
「暑さには弱いのですが、チョコレートの彫刻は何年も大丈夫です」と「アート・オン・フード&アイス ( Art on Food + Ice) 」のトニー・シュタイニガー氏は言う。理想の温度は15度から18度だという。シュタイニガー氏も「ウイリアム・テル」とルツェルンの観光名所の「瀕死のライオン」を出展。ウイリアム・テルは50センチメートルの高さで、50時間かけて作ったという。

 展覧会はチョコアートのほか、一般に消費されるチョコレートにも焦点を当てている。キュレーターのシュトレーベル氏のお気に入りのチョコレートは「フェルフリン ( Felchlin ) 」と「オフォマルティン ( Ovomaltine ) 」だが、あまりよく知られていないものも含め、スイスの主要メーカーのチョコレート一同にお目にかかれる。特注で少量しか作られない高級チョコにも注目したい。

たっぷり甘くちょっぴり苦い

 エキゾチックでエロチックなチョコレートも展示されている。例えば、身体の一部のアートチョコや、これまで嗅いだこともないような変わった香りがするチョコレートなどだ。
「ハムやチーズといった組み合わせのチョコレートもあります」
 とシュトレーベル氏。メインディッシュなのかデザートなのかという疑問は残るが、チョコレートの味がするパスタというものもある。珍しいものより、単においしいチョコレートを満喫したいと訪れる見学者は、たっぷりとココアバターを使った品々がバスタブ一杯に溢れるオブジェを見てください。

 一方、チョコレートの甘さに隠れている社会面もこの展覧会は忘れてはいない。それはカカオ産業が抱える児童労働だ。この展覧会の協賛者でもある人権擁護団体「ベルン宣言 ( Erklärung von Bern ) 」がフェアートレードのチョコレートを展示し、この問題についての啓蒙情報を展示している。

 博物館のショップでは、うさぎチョコはもちろん数々のチョコレートが販売されている。
「レストランではチョコレートメニューも用意しました。チョコレートドリンク、チョコレートアイス、チョコレートケーキなどあります。ですから、チョコアートは食べないように願います」
 シュトレーベル氏は見学者には展覧会に気軽に来てほしい。チョコレートが食べたくなったら、ショップで土産を買ってほしいと望んでいる。

swissinfo、スザン・フォーゲル・ミシカ 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

2004年から5年間、スイスのチョコレート産業の総売上は増加し続けている。
2008年の総生産量は18万4969トンで前年より2%増加した。金額にして18億1800万フラン ( 約1566億円 ) 。このうち6割以上が輸出向けだ。
スイス国内での消費量は1人当たり12.4キログラムで、前年より100グラム増加した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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