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33人のアルプホルン奏者 スイスで学ぶ

愛知万博では4月30日、韓国のヨーデル協会のメンバーと一緒に137本のアルプホルンが共演した。韓国との交流は盛ん ( 愛知万博ホームページから) Expo 2005 Aichi

神奈川県厚木市には自分でアルプホルンを作り演奏するグループ「玉川アルプホルンクラブ」がある。7月13日からおよそ10日間、アルプホルンの練習を中心としたスイスでの研修が予定されている。

今年のスイス研修に参加するのは33人。自作のアルプホルンを抱えての参加だ。スイス音楽を通してのスイス人と日本人の交流が深まる今年の夏である。

 スイスのアルプホルン演奏者でさえ、多くの人が出来合いのアルプホルンで演奏する。しかし、これを自ら作り演奏するグループが日本にある。7月中旬に予定されている研修を前に練習中の会長の中川重年(なかがわしげとし)(56歳)さんに国際電話で伺った。

アルプホルンの存在感

 アルプホルンの魅力といえば、なんといってもその存在感にあると中川さんは言う。「なにしろ長さ3.4メートルの楽器を作るのですから。その醍醐味に魅せられてしまう」

 アルプホルンに適した木を伐採して乾燥させてから削り上げるまで、本格的に取り組めば、1本作るの1年以上かかることもある。手作りなので決して同じ音色のものができないのも魅力の一つかもしれない。アルプホルンの壁が厚いほどまろやかな音になり、薄いほどきらびやかな音を出す。そのほかにもいろいろな要素が音色に影響するからだ。

 存在感のほかに「平和の国スイス」への憧れもあるようだ。スイスの牧場には牛たちが草を食んでいる。そうした風景の中でアルプホルンを演奏してみたいと思って入会する人がほとんどという。アルプホルンは本来、自然の中で演奏する楽器であり、演奏しながら自然を身近に感じられるのが特徴だろう。

 日本人なら誰でも知っているアルプホルンだが、実際に見たことがある人は少ないはず。「日本の街中で、わたしがちがアルプホルンの演奏を始めると、通りがかりの人が沢山寄ってきます」と中川さん。イベントに参加したり定期演奏会などを開くクラブにとっては、アルプホルンに限らずスイス音楽を通してスイス文化を日本に紹介するのも楽しい様子である。

スイスの文化と自然に浸ること

 玉川アルプホルンクラブの85人の会員は、ほとんどが引退した人たち。肺活量が問われるため、スイスではアルプホルン奏者は伝統的に男性が多いが、会員は半分以上が女性というのもユニークだ。

 89年にクラブが発足してから不定期にスイスで研修をしてきたが、今回で4回目になる。今回の練習所はスイスの発祥の地であり、スイス音楽のメッカでもあるシュヴィーツ州の田舎町ウンテリベルク(Unteriberg)。アルプホルンの吹き方ばかりではなく、シュヴィーツ地方独特のハンドオルガン、旗振り、牛追いの鞭の打ち方など、スイスの風習に関係することも習う予定だ。

 「アルプホルンの曲には、演奏した場所の名前が付いていることが多い。その土地に行き、その風景を知ることでアルプホルンの音楽をより深く理解したい」また、スイス人が送るゆったりとした生活に触れることも研修の目的という。

 クラブのメンバーがアルプホルンの演奏の腕を磨き帰国したならば、他の楽器やヨーデル歌手も加えた「大楽団」ができることも夢ではなさそうだ。

swissinfo, 佐藤夕美(さとうゆうみ)

アルプホルン

アルプス山中の牧童間に生まれた合図用のらっぱの一種。

管長は1〜4mくらい。

本体は木製で表は桜の皮で巻いてある。

音は太く柔らかで,通常は1本でさまざまな合図に用いるが、19世紀ころよりスイスでは高低3本の楽器で,旋律や和音を奏するようになった。
(平凡社世界百科事典より抜粋)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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