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伝統文化の融合 スイス人デザイナーの手がける日本刀 欧州に日本の伝統技術を発信

2017年4月の国際家具見本市「ミラノサローネ」でお披露目されたHonsekito(本関刀)と製作チーム

2017年4月の国際家具見本市「ミラノサローネ」でお披露目されたHonsekito(本関刀)の制作チーム。スイス人デザイナーのパトリック・レイモン氏(中央)がデザインを主導。刀身を26代藤原兼房氏(右)が打ち、長谷川刃物(社長・長谷川尚彦氏=左)が製造した

(atelier oï)

濃い茶色の鞘(さや)に、ピンクゴールドのらせんが絡む。モダンな外見とは裏腹に、刀身は室町時代から続く岐阜県関市の刀匠が打った生粋の日本刀だ。世界の美術品愛好家向けに限定12本で年内にも発売予定の「Honsekito(本関刀)」。デザインしたのは、スイス西部のル・ヌーヴヴィル(ベルン州)を拠点とする「Atelier Oï(アトリエ・オイ)他のサイトへ」だ。

 Honsekitoは全長110センチと大振りだ。鞘は飛騨牛の皮が施されている。濃い茶色だが、ピンクゴールドのらせんの効果で遠目には明るく赤みがかって見える。色味や左右非対称な装飾は、普通の日本刀ではお目にかかれない。

美濃和紙がつないだ縁

 アトリエ・オイは1991年、レイモン氏、アルマン・ルイ氏、オーレル・エビ氏の3人が立ち上げたデザイン建築事務所。レイモン氏とルイ氏は仏語圏スイス、エビ氏は独語圏の出身。ブドウ畑の広がるビール湖畔のアトリエでは、デザイナーやプログラマーら30人超が働く。ルイ・ヴィトンやロレックスなど世界の高級ブランドを顧客に抱え、ランプや椅子などの家具をメーンにデザインする。

 レイモン氏の岐阜県との出会いは2012年、チューリヒの雑貨卸業者、トーマス・メルロ他のサイトへ氏に紹介されて訪ねたのがきっかけだ。メルロ氏は美濃紙を使った紙雑貨「3120他のサイトへ」を欧州に輸入しており、和紙に興味を持ったレイモン氏を繋いだ。折しも伝統工芸品の海外での知名度アップを模索していた岐阜県の担当者にも紹介され、タイアップが実現した。

 オイ社が美濃和紙を使った照明オブジェ「Honminoshi Garden(ホンミノシガーデン)他のサイトへ」や飛騨木材をあしらった家具「Gifoi(ギフオイ)他のサイトへ」などをデザインし、2016年のイタリアの国際家具見本市「ミラノサローネ他のサイトへ」に出品。展示は好評を博し、ホンミノシガーデンは欧州でも売れ行きが良い。

関の技術を世界に

 Honsekitoはその第2弾として、17年春のミラノサローネでお披露目された。日本の刃物は品質が高く、日本刀は美術品としても知名度がある。一方で、日本の刃物メーカーといえば欧州では貝印などごく一部しか知られていない。欧州でなじみのある独刃物メーカーツォリンゲン(Zollingen)の製品の6割近くが関市で生産されているにもかかわらず、だ。レイモン氏は「関市の技術を欧州に広めたい」とデザインに臨んだ。

 16年5月に視察のため関市を訪れたレイモン氏は刀匠、第26代藤原兼房氏の技を目の当たりにし、日本の技術力に驚いた。「自然に存在する素材を使って新たにモノを創造するのはまるで料理のよう」。原料がどこから来ているのか、どんな思いで刀を打っているかなどじっくりと聞き込んだ。

 デザインの決定には半年ほどかけた。日本刀をデザインするのはもちろん初めてだが、特に難しさは感じなかったという。「日本の歴史を知り尽くしていたら、欧州にも受けるようなデザインはできないのではないか」。斬新さを求める一方で、関市の技術や文化を受け継いできた歴史は切り離せない。「継承」を端的に表現するため、遺伝子を象徴する「らせん」をあしらうことを決めた。

外見こそモダンな西洋風だが、刀身には日本の刀匠の名が刻まれている

(atelier oï)

 Honsekitoは約1年の開発期間を経て完成。岐阜県海外戦略推進課の池戸克成課長補佐は「これまでの伝統的な日本刀とは一線を画したデザイン」と話す。販売は関市の刃物メーカー「長谷川刃物他のサイトへ」が担う。価格は未定だが、一振り15万フラン(1700万円)以上と見積もられる。愛好家向けの現代刀の数十万円に比べると高額だが、「多くの職人が関わり長い時間をかけて作っているのでこの価格になる」(レイモン氏)。ウェブサイト他のサイトへで受注を受けつけており、既にコレクターからの引き合いがあるという。

 関市の名を世界にとどろかすべく生まれたHonsekitoは早くも成果を出し始めている。ミラノサローネの展示を受け、17年10月にはスイスの刃物メーカー大手ヴィクトリノックス他のサイトへの創業者カール・エルズナー社長が関市を訪問。11月には関市長がシュヴィーツ州にある同社を訪れ、オイ社を交えて新たなコラボレーションの道が開いた。レイモン氏は「家業として技術を代々引き継ぐこと、自然の中に存在する素材を使ってモノを創造しようという試みは、日本もスイスも同じ」と語る。

「パッションが駆り立てられる」

 レイモン氏はこれまで20回以上訪日している。デザイン学校で内田繁や倉俣史朗、安藤忠雄ら日本人デザイナー・建築家の作品を学び、日本の美学や空間の使い方に感銘を受けた。「デザイナーにとっての日本は、映画ファンがハリウッドに憧れるようなもの」と話す。

 そんなレイモン氏にとっての日本文化とは。「デザイナーはプロフェッション(職業)ではなくパッション(感情)の仕事。日本にいると最もそのパッションが駆り立てられ、自分の夢がかなうと感じる」。山や湖、森林と自然に恵まれた岐阜の土地を歩くと「まるで故郷のビール(ビエンヌ)にいるように感じる」という。

 現在は来年のミラノサローネに向け、同じく岐阜県の伝統工芸品である美濃焼を出品すべくデザインを練っている。アトリエ・オイは「メード・イン・ギフ」ブランドの世界市場への挑戦に伴走を続ける。

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