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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

スイスのメディアが報じた日本のニュース

志賀原発の俯瞰図
1月1日に起きた能登半島地震で、志賀原子力発電所に最大3メートルの津波が到達した。1月2日撮影 Keystone

スイスの主要報道機関が先週(1月8日〜14日)伝えた日本関連のニュースから、4件をピックアップ。要約して紹介します。

【スイスで報道されたトピック】

  • 上川外相、ウクライナ支援強化を約束(1/8)
  • スイス時計を猛追するグランドセイコー(1/8)
  • 能登地震、行方不明者数が大幅に増加(1/8)
  • スイス国際航空の安全性は?(1/9~10)
  • 志賀原発近辺で3メートルの津波を記録(1/10)
  • 米国人ユーチューバー「ジョニー・ソマリ」に有罪判決(1/10)
  • 日航、事故機残骸を保存へ(1/12)
  • スイス製「空飛ぶボート」デモ飛行(1/12)
  • 村上春樹氏75歳(1/12)
  • 大坂なおみ、うつ病から回復(1/13)
  • 全日空機の窓に亀裂 札幌へ引き返す(1/13)
  • SOMPO美術館「ひまわり」返還請求をめぐる困惑(1/14)

この中から今回は①志賀原発近辺で3メートルの津波を記録②スイス時計を猛追するグランドセイコー③スイス製「空飛ぶボート」、大阪万博見据えデモ飛行④SOMPO美術館「ひまわり」返還請求をめぐる困惑をご紹介します。

改めて意識される原発の危険性

北陸電力は10日、志賀原子力発電所(石川県)で、1日の地震発生後に約1~3メートルの津波が複数回到達していたことが分かったと発表しました。スイスでは仏AFP通信の記事がドイツ語・フランス語圏メディアに転載されました。

フランス語圏では「この災害は、津波により日本の北東部にある福島第一原子力発電所が深刻な被害を受け、原子炉3基の炉心が溶融した2011年3月の痛ましい記憶を日本に甦らせた」と報道。ドイツ語圏の大衆紙ブリックは「北電の発表は、地震や津波による原子力発電所のリスクを改めて浮き彫りにした」と指摘しました。(出典:Keystone-ATS/フランス語、ブリック外部リンク/ドイツ語)

スイス時計は競争に耐えられるか?

ルツェルンの時計・宝飾品店ブヘラは昨年11月末、グランドセイコーの販売開始を祝う記念イベントを開きました。ドイツ語圏の日刊紙NZZ英語版はこの機を捉え、日本の時計産業やグランドセイコーの歴史と未来を詳報しました。

グランドセイコーの誕生は1960年。翌年の時計輸入の自由化を見据え、スイスと競争することがブランド創立の目的でした。このため長い間、グランドセイコーはほぼ国内市場でしか出回りませんでした。

転機は2010年、セイコーグループ10代目社長の服部真ニ氏が海外展開を決めた時でした。海外では低価格帯の時計で知られていたセイコーは当初は苦戦したものの、次第に米欧で販売されるように。今ではスイスの高級時計見本市の常連になっています。

「今日のグランドセイコーの伝統的な職人技に対する誇りは、少なくともスイスと同等かそれ以上だ」。NZZはこう指摘したうえで、熟練労働者の賃金がスイスより大幅に低い日本では「価格の高騰を招くことなく、時計に多くの手作業を加える余裕がある」という強みを挙げました。

しかしNZZは、世界市場でスイスメーカーが駆逐されるとの見方はしていません。「一般に、日本人はヨーロッパ人に比べ、高級品分野における使命感が低い。さらに言えば、日本の時計ブランドで海外展開まで考えているブランドは多くない」というのがその理由です。一方で、「欲しい時計を手に入れるまで永遠に待たなければならない時計愛好家は、代替品を探すだろう」として、品薄が続くロレックスを念頭に、スイス勢に向け警鐘を鳴らしました。(出典:NZZ外部リンク/英語)

スイスベンチャーMobyFly、大阪万博見据え

排出量ゼロの「空飛ぶボート」を開発するスイス新興企業MobyFly外部リンクは12日、日本企業の視察団に向けヴァレー州ル・ブヴレでデモ飛行を開催しました。ヴォー州の日刊紙24 heuresはその様子を取材。大阪万博での日本デビューを目指す同社の取り組みを紹介しました。

MobyFlyのボートは格納可能な翼を持ち、時速50キロを超えると水面から約20センチの高さを航行します。二酸化炭素(CO₂)の排出量がゼロ、騒音が非常に少ない、揺れがないという3つの利点があります。試乗した視察団のホネダアキヒロ代表は取材に対し、「商用船のCO₂排出削減という日本の大きな目標を達成するため」に、同社の技術は貴重な資産だと述べました。

MobyFlyは競争が激化する市場で一歩リードするために、2025年の大阪万博を重要な試金石に据えています。同じスイス新興企業のAlmatechとコラボレーションし、大阪湾で水上輸送を披露する予定です。(出典:24heures外部リンク/フランス語)

略奪美術品への対応に不慣れな日本

SOMPOホールディングスが所有し「SOMPO美術館外部リンク」(新宿)で展示されているゴッホの「ひまわり」。この絵画がナチスの迫害により略奪されたものだとして、米国で返還と賠償を求める裁判が起こされています。フランス語圏の日刊紙ル・タンはその背景と、略奪美術品をめぐる日本の現状を解説しました。

同作品はSOMPOが1987年にロンドンで行われた競売で2500万ポンド(当時の為替で約58億円)で落札したもの。当時大きな話題となり、SOMPOを象徴する存在になりました。フランスの美術品専門家クレア・パタン氏は「何千人もの日本人がSOMPOの生命保険に加入し、落札費用は半年で回収できた」と試算しています。そして裁判の結果として同社が賠償に応じるとしても、作品を返還することはないだろうとの見方を示しました。

記事は「1990年代初頭、欧州のユダヤ人家族から盗まれたいくつかの作品が日本で販売された」ことも説明しました。それらの所在を明らかにすることは容易ではなく、「弁護士や警察官は、日本がこの問題に関してあまり柔軟ではないことを認識している」と指摘。特に1910~45年の間に中国や韓国から仏像などの美術品を略奪しており、「今後訴訟の増加に備える必要がある」との仏弁護士のコメントを紹介しました。(出典:ル・タン外部リンク/フランス語)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「新種の細菌35種 バーゼル大研究」(記事/日本語)でした。他に「スイスのチョコレート、ガーナでの原料生産に児童労働」(記事/日本語)、「Switzerland’s ‘Siberia’ registers winter temperature of -25°C」(記事/英語)も良く読まれました。

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現在、英語圏とスペイン語圏を中心に「私が懸念しているのは、社会が崩壊した場合、武装しているのは異能者やサイコパス、その他さまざまな機能不全に陥った人間だけになってしまうのではないかということだ」「私がスイスに移住した理由のひとつは、スポーツ射撃をしやすい可能性があったからだ」など多数のコメントが寄せられています。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は1月22日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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