「飛び恥」解消?排出量ゼロの航空機燃料

スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の屋根に昨年取り付けられたSynhelionの試作品 RSI-SWI

新型コロナ危機のさなか気候変動問題は二の次になっていたが、消費や移動が回復するとともに地球温暖化への懸念が再び頭をもたげている。スイスのスタートアップ企業が水や太陽光、二酸化炭素(CO2)を使った航空燃料を開発している。この「排出量実質ゼロ」燃料は、フライトシェイム(飛び恥)の解決策になるのだろうか?

このコンテンツは 2020/06/10 11:30

Synhelionは連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)が創業。もう1つのETHZスピンオフ企業Climeworksと共同で、市場化に向け持続可能な航空燃料の開発を急ぐことを定めた合意文書を独ルフトハンザグループと交わした。

目標は排出量ゼロの航空機を新しく作ることではなく、今飛んでいる飛行機が温室効果ガスを出さなくて済む燃料を2030年までに開発することだ。つまり、燃焼中に放出される量と同じだけのCO2を、燃料の製造過程で大気から回収する仕組みだ。

だが果たして、CO2と水と太陽光だけでどうやって燃料を作れるのだろうか?

物理学者でSynhelionの最高経営責任者(CEO)を務めるジャンルカ・アンブロセッティ氏は「炭化水素を酸素で燃やすと、エネルギーが発生し、CO2と水蒸気という酸化物が生成される。イメージとしては、このプロセスを逆回転させる。植物による光合成のように、水とCO2を結合させて炭化水素を生成する」と説明する。

Synhelionが開発した反応器の中で熱化学プロセスを起こし、合成ガスと呼ばれる水素と一酸化炭素の混合物を生成する。

「これは既に工業化されている数々の合成燃料の基本技術を活用したものだ。比較的標準的な精製プロセスにより、メタノールやジェット燃料など様々な形の炭化水素に変換されている」

ドイツ航空宇宙センターの太陽光シミュレーターにあるSynhelionの実験室 RSI-SWI

多段階生産

反応器の効率がまだ低いため、この新方式を使った「グリーン燃料」の工業生産は2030年の開始を目標としている。並行して、Synhelionは排出量が50%少ない燃料の開発を進めている。

そのためにSynhelionはいくつかのコンポーネントを開発している。「熱化学反応器や、反応器に必要な熱量を得られる太陽光パネルなどだ。少なくとも夏には24時間稼働させるための熱エネルギーを貯蔵できるようになる」(アンブロセッティ氏)

航空機汚染

高度の低い場所で起きる大気汚染の主な原因は窒素酸化物だ。一方、地球温暖化の主な原因は大気中のCO2濃度の増加だ。スイス連邦航空局によると、航空機からのCO2排出量は人工排出量の2~2.5%に過ぎない。ただ乗客1人当たりの排出量に換算すると、飛行機は輸送手段のなかで最も排出量が多い。

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2030年を目標に開発中の「純粋な」グリーン燃料は、今の航空機で使えるのか?こうした疑問に対し、アンブロセッティ氏は「一部のコンポーネントは、あらゆる合成燃料と同様に適応させなければならないが、原則として最小限の変更で済むはずだ」と説明する。

だが削減量が50%だろうが100%だろうが、グリーン燃料より有望視されているのは電動航空機だ。それでもグリーン燃料にこだわる理由は何か?

「電動航空機は確かに有望だが、今のところ実現可能性は非常に低い」とアンブロセッティ氏は話す。「電動航空機は、バッテリーのエネルギー密度が燃料飛行機よりずっと低いという問題がある。電気動力ではバッテリーが重すぎて、飛行機の離陸など飛行の大部分が不可能になる」

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