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Rino Scarcelli

1980年9月5日に行われたゴッタルド道路トンネルの開通式

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ゴッタルド道路トンネル開通40年

このコンテンツが公開されたのは、 1980年に開通したゴッタルド道路トンネル。1881年のゴッタルド鉄道トンネル開通から約1世紀が過ぎていたとは言え、当時としては技術的にも前例のない工事だった。しかし皆が開通を好意的に受け止めていたわけではない。40年前の様子を振り返る。

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The Synhelion prototype

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「飛び恥」解消?排出量ゼロの航空機燃料

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのスタートアップ企業が水や太陽光、CO2を使った航空燃料を開発している。この「排出量実質ゼロ」燃料は、フライトシェイム(飛び恥)の解決策になるのだろうか?

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ティチーノ州の小村インデミニの小屋

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1フランで売ります― マッジョーレ湖を一望できるスイスの山小屋

このコンテンツが公開されたのは、 イタリア語圏スイスのティチーノ州にある石造りの小屋9軒がそれぞれ1フラン(約110円)で売りに出されている。これは同州ガンバローニョ市によるシアガ山岳地域の復興開発事業だ。

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国外からの工場Uターン、米国とイタリアが率先

このコンテンツが公開されたのは、 企業は長年、生産拠点を国外に移転してきた。しかし、米国や欧州の企業の多くは工場を自国に戻したり、自国に近い場所に移したりするなどして工場のUターンを進めている。  こうした現象はリショアリングまたはニアショアリングと呼ばれる。リショアリングをする企業が増えているのはなぜだろうか?またリショアリングを行う企業が最も多い国はどこだろうか?雇用への影響は?識者たちに聞いた。用語 リショアリングとは、工場を移転先の国から本社のある国に移すこと、または国内の業者に生産業務を委託することを指す。 一方、工場を移転先の国から本社に地理的に最も近い国外拠点に移すこと、または隣国の業者に生産業務を委託することをニアショアリングという。 イタリアのラクイラ大学のルチアーノ・フラトッチ準教授は、リショアリングおよびニアショアリング戦略を研究するイタリアの大学共同研究グループのまとめ役を務めている。この研究グループはこれまで5年間、1980年代以降から現在までに工場を自国に戻した企業および自国の第三者に業務委託した企業数百社に関するデータを収集してきた。  「リショアリングは90年代中期から継続的に見られるもので、世界経済危機を境に顕著になった」とフラトッチ氏は語る。世界経済危機により、企業は徹底したコスト管理を迫られたが、その一方で米国も2桁の失業率を下げるために様々な政策を打ち出すようになった。  企業はとりわけ、中国から生産拠点を引き揚げようとしている。欧州企業の多くは極東からの移転を図っているが、米国企業の多くは東南アジアおよびインドからの移転を進めている。スイス・ティチーノ州商工会議所のルカ・アルベルトーニ会頭によると、リショアリングを積極的に行っているのは米国とイタリアの企業で、スイスではニアショアリングが時折行われるだけだ。 国内回帰の理由  工場を国外に移す唯一の理由に人件費が挙げられることが多いが、移転先の国々でも人件費が上がっている。例えば中国では人件費が年間15%上昇している。そのため、企業は高い輸送費や関税を相殺できるほどの人件費を節約できなくなった。  また、リショアリングの背景には消費者の要求が高くなっていることが挙げられる。工場が地理的に近ければ品質管理が徹底でき、研究開発部門と生産部門の連携も密接になり、輸送時間も短くなるからだ。さらにカスタマーサービスも迅速に行え、重要度が増している「メイド・イン」ラベルの表示もしやすくなる。 失業率の低下  工場が外国から自国にUターンするということは、その国にとっては喜ばしいことだ。なぜならそれは専門知識が自国に戻ってくるということであり、国内総生産(GDP)の上昇や貿易収支の改善につながるからだ。  一方、リショアリングによる雇用への影響はどの国も同じというわけではない。「2015年にリショアリングで生み出された雇用数は、同年にオフショアリング(国外移転)で失われた雇用数に等しかった。欧州はまだその段階に入っていない」とフラトッチ氏は語る。  スイスではロボットの活用が増えればリショアリングが促される可能性があると、アルベルトーニ氏は言う。ロボットの導入により一部の生産工程は単純になり、競争力が増すからだ。  同様にフラトッチ氏も、オートメーション化が人件費の高い国でリショアリングを促す可能性があると考える。そのため、リショアリングを行う企業にとって「金銭的な要因だけではなく、生産工程を革新的にするための要因が重要だ」と同氏は言う。 スイスの状況  スイスではリショアリングはあまり多くないが、アジアに一部の生産工程を業務委託していた企業がルーマニアやポーランドにニアショアリングをすることが増えていると、アルベルトーニ氏は言う。  スイスでは今後、「スイス・メイド」のラベルを表示するための規定が厳格化されるが、その影響について論じるのはまだ早い。しかし、ある産業分野はすでに新規定への対応を始めている。ティチーノ州時計製造者協会のオリヴィエロ・ペセンティ会長によると、同協会に加盟する時計ブランドの一部はリショアリングに着手したり、特に時計ケースの製造をリショアリングするかどうかを検討したりしているという。新規定ではムーブメントだけでは「スイス・メイド」のラベルを表示できないからだ。  スイスでリショアリングが少ない理由は、企業の種類にある。スイスには多国籍企業の経営部門や研究開発部門が置かれることが多いが、生産部門は少ない。また、化学企業や医薬企業などのスイスの基幹産業は、他国の同分野の企業と比べ、業務をあまり国外に委託しない。  だが「もしスイスの企業が国外に業務を移転していたとしても、すぐに自国に戻そうとはしないだろう。化学工場の再移転は衣服や靴の生産工場の再移転よりもはるかに複雑だからだ」とフラトッチ氏は説明する。また様々な研究によると、医薬産業はリショアリングへの関心がとても乏しいという。 ものづくりの「再建」  リショアリングが必ずしも放棄された工場を再建したり新工場を建てたりするわけではない。「リショアリングでは第三者への業務委託がよくある。言い換えると、工場を国内に戻し、地元の業者に業務委託することがよくあるということだ」とフラトッチ氏は語る。  またサービス産業が長い年月をかけて発展してきた国では、リショアリングはものづくり文化の再建という意味合いが強い。例えば米国では、手工業などの重要な専門技術の不足に対応するため、職業訓練や大学の講習を変更する計画が立ち上げられた。  一方、英国ではリショアリングを行う企業が増加し、空洞化した産業がそれに対応できずに問題になっていると、フラトッチ氏は指摘する。「しかし、適切な産業政策を行い、職業訓練に投資をすれば、この問題をある程度和らげることはできる」と同氏は付け加える。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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