スイス連邦内閣は13日、新型コロナウイルス(変異株)の感染拡大を受け、18日から現行の制限措置を強化しセミロックダウンを講じると発表した。生活必需品以外の商店の営業を停止し、在宅勤務を義務付ける。レストラン、スポーツ施設の閉鎖は延長する。
このコンテンツが公開されたのは、
ギー・パルムラン連邦大統領は同日の会見で、感染力の高い変異株が新たな感染者の急増につながる恐れがあるとして、「(人との)接触を大幅に減らす」ためにこれらの措置を決めたと述べた。
パルムラン氏は「容易な決定ではなかった。だが絶対に必要だ」と強調した。会見にはウエリ・マウラ―財務相とアラン・ベルセ内務相も出席した。
パルムラン氏は感染の第3波を防ぐため、全ての側面からの「更なる努力」の必要性を訴え、「必要なのは共に危機を乗り越えることだ」と政府の政策を批判する人達へ理解を求めた。
セミロックダウンは18日月曜日から、生活必需品以外の商店の営業を停止し、在宅勤務を義務付ける。私的なデモ活動、集会の人数は上限5人とし(子供含む)、職場では適切な対人距離を取っている場合でもマスク着用が必須。営業可能な小売店やキオスク、ガソリンスタンドは夜間・日祝日も営業可能になる。
銀行、美容院、郵便局、携帯電話ショップなどは営業可能だが、午後7時~午前6時は営業停止とする。スキー場は定められた感染予防措置を順守していれば営業できる。
期間は2月末まで
昨年12月に始まった新たな制限措置は1月22日までの予定だったが、政府は現状を鑑み期間を5週間延長し、2月末までとした。既に営業を停止しているレストラン、バー、スポーツ施設も2月末まで閉鎖する。
保健行政を管轄するベルセ内相は「(12月に)措置を強化したが、現時点で(感染者数の)明確な下降傾向はみられない」と理由を語った。1日当たりの新規感染者数は昨年秋に1万人を超え、その後約3千人に落ち着いたが、ここ数週間は横ばいが続く。
ベルセ氏は「対策を講じるかどうかは問題ではない。いつ実施するかだ」とし、今何もしなければ、後でさらに厳しい制限措置が必要になるかもしれないと話した。
政府は、春の第1波の時のような休校措置には踏み切らなかったが、選択肢として除外はしないと述べた。政府は教育を管轄する各州に対し、学校での最善の感染予防措置を講じるよう求めている。
ここ数週間、新規感染者数は減少傾向にある。政府は、英国と南アフリカで最初に報告された非常に感染力の高い変異株を懸念していると述べた。アイルランドや英国では感染者が急増している。初期の試算では、変異株の感染力は通常のものよりも50〜70%高いとされる。
12月20日、スイスは英国と南アフリカからの入国を禁止し、フライトの運航も停止した。政府は11日、山間部のヴェンゲンで感染が急増している問題で、1人の英国人観光客が感染源の可能性があるとして、同地で予定されていたラウバーホルン・スキーワールドカップ(W杯)のダウンヒルスキーレースを取りやめた。
おすすめの記事
おすすめの記事
スキーのラウバーホルンW杯、開催地にもたらす経済効果は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの山村ヴェンゲンで毎年1月に開催される国際スキー連盟(FIS)のラウバーホルン・スキーワールドカップ(W杯)。連盟が主催するアルペンスキーW杯では最も歴史が古く、最もコースが長いことで知られる。W杯によって世界的に注目されたこの小さな村だが、この大会が村にもたらす経済効果はどのくらいなのか。村はこのイベントなしで生き残れるのだろうか。
もっと読む スキーのラウバーホルンW杯、開催地にもたらす経済効果は?
1月6日、政府は、現行の制限措置を2月末まで延長する提案を発表。州と協議し、13日に最終決定すると述べた。
連邦内務省保健庁は12日、感染者数は横ばいだが、その水準は「高すぎる」とした。1人の感染者から何人にうつるかを示す実効再生産数は1.02となっている。入院者数と死亡者数はわずかに減少したが、集中治療室のベッド占有率は約74%に上っている。
経済支援
政府は13日、制限措置の影響を受ける経済セクターに追加支援を講じると述べた。 政府の措置により、昨年11月1日から少なくとも40日間、営業を停止した企業は困難なケースとみなされる。レストラン、スポーツ施設、店舗がここに含まれる。企業はまた、2021年に売上の損失分を請求できるようになる。
レストラン・ホテル業界は、12月に営業停止措置が始まって以降、さらなる支援を求めている。同セクターの企業団体は10日、国内のホテル・レストラン事業の半数が、即時の財政支援を受けなければ3月末までに倒産すると訴えた。
マウラー財務相によると、レストラン、ホテル、小売部門を中心とした約10万社(見込み)が、緊急財政援助を申請する可能性がある。マウラー氏は援助申請の総額がどれくらいになるかは、まだはっきりしないと語った。
おすすめの記事
スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス下院委員会は連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)の留学生の学費をスイス人学生の3倍に引き上げる案を可決した。27日に始まる夏期本会議で審議する。
もっと読む スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
おすすめの記事
FIFA、脱スイスに向け定款改正
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)は17日、本部をスイス・チューリヒ以外に移せるよう定款を改正した。
もっと読む FIFA、脱スイスに向け定款改正
おすすめの記事
ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
このコンテンツが公開されたのは、
6月15~16日に開催されるウクライナ平和サミットの舞台として、ルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」が注目を浴びている。かつては庶民も受け入れられる高級リゾートして地元に愛されていたが、近年は事情が違うようだ。
もっと読む ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
おすすめの記事
スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
このコンテンツが公開されたのは、
気候変動の影響で、スイスで花粉症患者が増加している。有症率は2割で、経済損失は最大で年間6900億円に上る。
もっと読む スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
おすすめの記事
ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
このコンテンツが公開されたのは、
欧州国別対抗の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝が11日、スウェーデン南部マルメで行われ、「ノンバイナリー」を自認するスイス代表のNemo(24)が優勝した。会場周辺ではイスラエル参加に対する大規模な抗議活動も行われた。
もっと読む ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
おすすめの記事
スイス北東部でオーロラ観測
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北東部のゼンティス山頂で6日未明、オーロラが観測された。
もっと読む スイス北東部でオーロラ観測
おすすめの記事
ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。
もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
続きを読む
おすすめの記事
ワクチンのスピード開発、人工知能が貢献
このコンテンツが公開されたのは、
効果の高い2種類の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンがこれだけ迅速に開発できたのは、人工知能(AI)や、スイスも含む世界中の研究者が進める革新的な共同研究の賜物だ。
もっと読む ワクチンのスピード開発、人工知能が貢献
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
休校措置も感染対策に有効 スイス研究
このコンテンツが公開されたのは、
2020年春にスイス全国で敷かれた休校措置は、人の移動を減らし新型コロナウイルスの伝播を抑える効果があった、とスイスの研究は結論付けた。公共の場での集まりの禁止やロックダウン(都市封鎖)も効果が高かった。
もっと読む 休校措置も感染対策に有効 スイス研究
おすすめの記事
「コロナワクチン接種遅い」スイス政府に批判
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府が、新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達、接種をめぐる国の政策にいずれも「ためらい」があったとして批判されている。
もっと読む 「コロナワクチン接種遅い」スイス政府に批判
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。