スイスの視点を10言語で

台湾は「スイスとの自由貿易協定に前向き」 台湾駐スイス代表

Taiwan skyscraper
いたずらに中国を刺激したくないスイス連邦政府は台湾との協定締結に及び腰だ Keystone / Ritchie B. Tongo

台湾の黄偉峰(David Huang)駐スイス代表は15日、独語圏日刊紙アールガウアー・ツァイトゥングに対し、スイスと台湾の間にはより「現実的な協力関係」を築く余地があり、台湾は「スイスとの自由貿易協定(FTA)に前向きだ」と語った外部リンク

スイスは台湾を国として公式に承認はしていないが、非公式な関係は維持している。スイスにとって台湾はアジアで5番目に大きな輸出相手国であり、貿易額も年々増加していることから、スイスでは近年、台湾とのFTA締結を求める声が幾度となく上がっている。

しかし、いたずらに中国を刺激したくないスイス連邦政府は台湾との協定締結に及び腰だ。

黄氏は、スイス人は政治だけでなくビジネス関係においても、中国政府を怒らせたくないばかりに「過剰な警戒心」を持つ傾向が見られると話す。結果として心理的な「自己検閲」が行われ、スイス当局や多くのスイス企業は、面倒な手間を省くために台湾との取引を一切行わないという。

おすすめの記事
台湾のデジタル担当相、唐鳳(オードリー・タン)氏

おすすめの記事

台湾のデジタル民主主義からスイスが学べること

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの直接民主制は、古いアナログな制度としては「世界一」とされる。だが、電子投票制度の導入が失敗するなど、デジタル化への道は極めて険しい。一方、台湾はデジタル版の参加型民主主義で世界の先端を行く。異色な経歴を持つ台湾のデジタル担当相、唐鳳(オードリー・タン)氏にその成功の理由について聞いた。

もっと読む 台湾のデジタル民主主義からスイスが学べること

同紙によると、スイス政府が避けたいのは、台湾との協定締結により、2014年に発効した中国とのFTAの改定が更に先延ばしになることだ。スイス政府は、関税の引き下げ対象となるスイス製品を増やし、持続可能性に関する内容を盛り込むため、中国とのFTA見直しを進めたいと考えている。しかし、中国は2018年に話し合いを拒否。以来、改定に向けた取り組みは停滞している。

スイスでは台湾との関係緊密化を求める声が大きくなっている。6月には多岐に渡る分野での関係深化を望む動議外部リンクが連邦議会に提出された。スイスの中国への依存度が高すぎるとして、様々な政党の政治家がこうした台湾との関係強化を求めている。ただその一方で、経済関係の強い中国との衝突を避けたいという声も聞かれる。

黄氏は同紙に、「民主的で輸出志向型の小国であるスイスと台湾は、強者の意思に依存せず、ルールに基づいて国際秩序が機能することに大きな関心を持っている」と話した。

スイスは早くから中国政府と深い人脈を築き、良好な関係を保ってきた。だが習近平政権がナショナリズムを煽るなか、台湾問題に関しては難しいかじ取りを迫られている。

台湾を国家として承認し、国交を結んでいる国は世界で20カ国弱に過ぎない。スイスを含む多くの国は、台湾と非公式な関係を維持している。

英語からの翻訳:大野瑠衣子

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

マンション

おすすめの記事

スイスでマイホームが賃貸よりお得に

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは住宅ローン金利の低下と家賃上昇により、2025年初めには不動産を賃貸するより購入した方が安上がりになる――こんな見通しを銀行最大手UBSが発表した。

もっと読む スイスでマイホームが賃貸よりお得に
イスラム教徒の墓に描かれたナチスの鉤十字

おすすめの記事

ヘイト・シンボルを禁止 ジュネーブ住民投票

このコンテンツが公開されたのは、 ジュネーブで9日行われた住民投票で、ナチスの鉤十字などのヘイト・シンボル表示を禁止する憲法改正案が84.7%の賛成で可決された。投票率は46%だった。

もっと読む ヘイト・シンボルを禁止 ジュネーブ住民投票
Finmaのロゴ

おすすめの記事

スイス金融当局新トップ、「経営陣の個人責任を追及」

このコンテンツが公開されたのは、 スイス金融市場監督機構( FINMA)の新長官に就いたシュテファン・ヴァルター氏は、監督権限の強化を求めていく立場を明確にしている。非協力的な銀行経営陣をFINMAが解任する権限も必要だとみる。

もっと読む スイス金融当局新トップ、「経営陣の個人責任を追及」
花粉症の女の子

おすすめの記事

高濃度の花粉で血圧上昇 スイス研究

このコンテンツが公開されたのは、 花粉の飛散量が高まるとアレルギー患者の血圧を上昇させることが、スイスの研究で分かった。女性や太りすぎの人では特に影響が大きい。

もっと読む 高濃度の花粉で血圧上昇 スイス研究
ロジャー・フェデラー

おすすめの記事

フェデラーの艇庫建設に反対運動 「湖岸への出入りを阻害」

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの元テニス選手、ロジャー・フェデラーさんが計画するチューリッヒ湖畔のボートハウス(艇庫)建設に対し、「人々の湖畔の往来を阻害する」として反対する声が上がっている。

もっと読む フェデラーの艇庫建設に反対運動 「湖岸への出入りを阻害」
スーツ姿の男性と女性

おすすめの記事

スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス公共放送協会(SRG SSR)は25日に開いた総会で、次期会長にドイツ語圏スイス公共放送(SRF)で文化部長を務めるジャーナリストのスザンネ・ヴィレ氏(50)を選出した。女性のトップ就任は初めて。

もっと読む スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ
EPFL

おすすめの記事

スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス下院委員会は連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)の留学生の学費をスイス人学生の3倍に引き上げる案を可決した。27日に始まる夏期本会議で審議する。

もっと読む スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部