スイスが2014年に発効した中国との自由貿易協定(FTA)更新を目指す一方、中国政府はスイスの人権問題を巡る自国への批判を理由に、見直しに応じていない。ドイツ語圏の日刊紙NZZ日曜版と大衆紙ブリック日曜版が29日報じた。
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NZZ日曜版によると、スイス連邦政府は関税の引き下げ対象となるスイス製品を増やし、持続可能性に関する内容を盛り込むため、更新に向けた話し合いを進めたいと考えている。しかし、中国政府は2018年から話し合いを拒否し、更新に向けた取り組みは停滞している。連邦経済省経済管轄庁(SECO)は同紙に対し、現在までに深く掘り下げて検討しなければならない共通項目リストについては合意できていない、と認めた。
中国はスイスにとってドイツ、米国に次ぐ3番目の輸出相手国。
専門家は、更新に向けた取り組みが停滞したのは、スイスが中国の人権問題に批判的な姿勢を強めているためだと指摘する。スイス機械・電気・金属協会「スイスメム(Swissmem)」のジャン・フィリップ・コール副会長はNZZ日曜版に対し、「責任は現在のスイスの政治的議論にある。中国の国家機関の一部にはそれがよく理解されていない」と述べた。
同紙でコール氏は、少数民族ウイグル族の強制労働を非難する議会イニシアチブなど、スイスの政界では中国に対する批判の声が高まっていると指摘。バーゼル大学で中国を専門とするラルフ・ウェバー氏は、中国への依存度を下げるよう求める圧力は、市民社会でも高まりを見せており、スイスの中国との「特別な道」は明らかに行き詰まりつつあるとの意見を述べた。
スイス紙の報道を受け、中国商務部の報道官は31日、公式サイト外部リンクで「交渉が停滞しているという事実はない」と報道内容を全面否定した。両国は緊密なコミュニケーションを維持していると主張した。
同報道官は、FTAを「ハイレベルで内容が濃く、互恵的」と表現。昨年の二国間貿易額は440億ドル(約5兆6800億円)と、前年から97%増えたという。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
※本記事は、2022年5月31日に配信した内容に、同6月1日に追記しています。
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