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アルプスの国に再び


役所広司さん、27年前のスイス撮影当時を振り返る


鹿島田芙美


27年ぶりにスイスを訪れた役所広司さん (swissinfo.ch)

27年ぶりにスイスを訪れた役所広司さん

(swissinfo.ch)

日本アカデミー賞をはじめ国内外で数々の賞を受賞し、今日、ハリウッド映画にも出演する俳優、役所広司さん。初主演を務めた映画は、スイスで撮影された。それから27年。久しぶりにスイスを訪れた役所さんに、当時の思い出について聞いた。

昨年から続く日本スイス国交150周年を祝う最後のイベントとして、スイス・日本協会国際交流基金が共催した「役所広司特集上映」が、チューリヒの映画館Filmpodiumで3月末まで行われている。

「役所さんをスイスの人々に知ってもらうため」(スイス・日本協会)、代表作13本が上映される。役所さんは先月、この上映会に出席するため、27年ぶりにチューリヒを訪れた。

初主演の映画「アナザーウェイ -D機関情報-」(1988年)は、第2次大戦下、特殊爆弾の原料となるウランの買い付けにスイスを訪れた関谷直人海軍中佐が、日米和平工作に巻き込まれていくというストーリー。

スイスの雄大な山々や首都ベルンを背景に、大戦という激動の時代に翻弄されていく関谷役を演じた役所さんは、「終戦70周年記念の年にふさわしい映画だ」と振り返る。

swissinfo.ch: 27年ぶりのスイスです。当時を振り返って一番記憶に残っていることは?

役所: 休みの日にずっと部屋でドイツ語のセリフの勉強をしていたことです。発音に関してはコーチがいました。異国の言葉でお芝居をしたことがなかったので。

スイスでの撮影時には、インターラーケンにも行きました。休みの日にユングフラウに登って、そこから電話したんですよ、妻に。いいところだからすぐ来ようって(笑)。で、今回27年経ってやっと一緒に来ることができました。

swissinfo.ch: 役所さんにとって「アナザーウェイ」は初の主演映画です。大役を背負ってスイスにやってきた当時の気持ちを覚えていますか?

役所: 実はあまり記憶がないんです。ただ、あの頃は俳優の仕事をして4、5年経っていましたが、映画で演じることに関してもっと真剣に取り組んでいたらよかったと今思います。あれだけの予算と時間をかけた映画。もう一度やり直したいと思いますね。

swissinfo.ch: どの部分がもっと良くできたのではないかと思いますか?

役所: 僕個人的には、(役作りを)もっと頑張ればよかったと思います。もっと勉強すべきだったと。役作りに関しては、当時はまったく知らなかったので。

一応、ドイツ語や英語のセリフは一生懸命やりましたが。役を演じるということに関して、もっと深くその人物を知るための方法を知らなかった。

swissinfo.ch: それには何が必要でしょうか。

役所: やはり勉強でしょうね。研究しなければならなかっただろうし、(映画に登場する人物となったモデルや時代背景は)今だったらインターネットですぐに情報が手に入るんですけど。そういう意味では、(当時は)情報不足だったのかもしれませんね。

swissinfo.ch: 「アナザーウェイ」に出演して学んだことは?

役所: これだけの予算の映画で、外国スタッフと日本スタッフとのミックスで、キャストにもいろんな国の人がいて、そういう映画を経験したってことは、本当に財産になったと思います。

普通に日本で日本のキャストとやっていくのと、本当に違いますからね。スタッフ同士でコミュニケーションが取れずに行き違いでもめることもあったでしょうし。越えなければならない問題はいっぱいあったと思います。

物語を理解するということも、お国柄で理解の仕方が非常に違う。監督一人をトップにしてみんなに監督の想いを浸透させるというのは、やはり本当に時間のかかることだと思います。

swissinfo.ch: 現地の人との交流はありましたか?

役所: 仕事だったので、現地の人とは交流する機会がありませんでした。撮影中に水ぼうそうになってしまって、お医者さんには通いましたけれど。(笑)

あの頃は、チェルノブイリ原発が爆発した直後でしたから(事故発生は86年)、スイスにもいっぱい放射能が飛んできているんだろうなぁと思ったら、あまりちゃんと食べられず、健康状態は良くなかったですね。

swissinfo.ch: 放射能が気になりましたか?

役所: 怖かったです。日本を発つ前にそういう情報がわーっと広まったので。

朝ご飯のバイキングでも、やはり乳製品とかはなんとなく避けていました。それで体力を失ったんだと思います。

ただ、ドイツから友人が来たんです。通訳もやってくれた学生さんだったのですが、彼がドイツから運んでくるドイツビールを部屋でしょっちゅう飲んでいました。(笑)

swissinfo.ch: すでに国内では名高い賞を数々受賞されてきました。今後はもっと外国映画に出演していきたいと思いますか?

役所: それはもう、やってみたいなという役に出会えればですが。基本的には今まで通り日本映画を一生懸命やって、海外のお客さんが楽しんでいただけるものを作りたいなと思います。

swissinfo.ch: スイスのロカルノ国際映画祭には、これまで青山真二監督や黒沢清監督などが訪れています。ご自身もロカルノに来てみたいと思いますか。

役所: ええ、呼んでくださればいつでも来ますよ。そういう(ロカルノに出品されるような)作品に出会えるように頑張りたいと思います。

映画も作ってみたいですね。脚本に関しては人に任せることもできますが、自分で撮るときはやっぱり少しはそれに携わっていたいですね。

役所広司略歴

1956年1月1日、長崎県諫早市に生まれる。

「役所広司」という芸名は、役所勤めをしていたことから、恩師である仲代達矢氏が、役どころが広くなるようにという思いを込めて命名。

85年、伊丹十三監督「タンポポ」に出演、脚光を浴びる。

88年、日本・スイス合作映画「アナザーウェイ -D機関情報-」で初主演。

96年、映画「Shall we ダンス?」が大ヒット。

2007年にはハリウッド映画「バベル」に出演。

これまで日本国内外において数多くの賞を受賞。近年では「渇き。」でシッチェス・カタロニア国際映画祭にて最優秀男優賞、「蜩ノ記」で第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞している。

swissinfo.ch



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