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ブログ「もっと知りたい!スイス生活」


バーゼル人のように、街中のライン川で泳ぐ! ~@夏のバーゼル


ローマのテヴェレ川で泳ぐのは、ドブネズミと決まっている。バーゼルのライン川で泳ぐのも、私はまったく興味がなかった。なのに昨年6月、友人が泳いでいると聞き、急に私も行きたくなったのである。バーゼルは市をあげてライン川の浄化に努めたため、現在は泳げるほどの水質だというのだ!

バーゼルで最も古い橋、ミットレレ・ライン橋……の下を泳いでゆく人たち (swissinfo.ch)

バーゼルで最も古い橋、ミットレレ・ライン橋……の下を泳いでゆく人たち

(swissinfo.ch)

 大聖堂が見下ろす、深い緑色をたたえたライン川は、バーゼル市民に大変親しまれ、歌にもなっている。ライン川は貿易における重要な航路であり、市民の憩いの場でもある。そして気温が20度にも達しようものなら、ライン川で泳ぐ人が出没する。

 が、しかし。いくらなんでもラインで泳ぐなんて。だって水は冷たいだろうし(夏でも水温は20度前後)、流れも速いし(秒速2~4メートル)、川底はかなり深いだろうし(水深2~7メートル)、川幅だって広い(5つの橋は平均250メートルほど)。バーゼルの至るところにプールが(20カ所近く)あるのに、なにもわざわざそんなところで泳がなくても!

 ……と決めつけていたのに、バーゼルに住んで10年、この街の魅力にとりつかれた私は、友人の話を聞いた途端その気になり、うっとり想像にふけってしまった。深い緑の水に身を浸し、文字通りバーゼルにどっぷり浸かってみたい。平泳ぎをしながら、大聖堂を眺めたらどんな気持ちだろうか。背泳ぎをしながら、ラインの上空を見るのはどんな気持ちだろうか!

 私は早速、水泳の練習を始めた。ライン川遊泳の際の注意事項を読んだからである。

 ライン川での水泳は、しっかり泳げるスイマーが対象。浮き輪などの補助具は禁止。決して1人で泳がないこと。橋からの飛び込みは禁止。川の中央は流れが速く、船も通るので避けること。ガラスの破片があるので、サンダルを着用のこと……。

 と同時に、天気予報も注視していた。川を泳ぐのに最適の天候は、風のない快晴で気温30度以上という。気温が30度を超える日が続いても、川の水温は20度以下のこともある。

 なのに彼らは泳いでしまう。水温22度以下は水泳に適さないと日本ではいうけれど、バーゼルの22度は、それこそ理想的な水温なのだ。

 重度の低温動物である私は、水温28度でさえとても入れない。そこで低水温に慣れる努力はしてきたが、22度なんて失神か凍死では……!?これはもう、寒中水泳に挑むつもりでいるしかない、と覚悟を決めた。

ライン川では、カモの親子や白鳥たちと一緒に泳ぐことができる (swissinfo.ch)

ライン川では、カモの親子や白鳥たちと一緒に泳ぐことができる

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 そしてバーゼル観光局に出かけていき、「ヴィッケルフィッシュ」なるものを買った。訳すと、「巻き魚」。決して海苔巻きではなく、これはウォータープルーフのビーチバッグなのである。中に空気を入れ、先をくるくる巻いて止めると浮き袋にもなる。というのは、川では流れに乗って移動するため、泳ぎ終えて岸に上がると、自分の荷物がある場所まではるばる歩いて戻らねばならない。そこで荷物を濡らすことなく携帯できる、このフィッシュが開発されたのだ。さらに浮くので、これにつかまっていれば泳がなくてもただ流されていればいいという優れものだ。

 ただし、このフィッシュに頼らず、いざとなったら自力で泳げる能力を持っていることが大前提。川の流れにのまれ、通行中の船や橋桁に衝突する危険があるし、川から上がるにはやはり自力で移動するしかないからだ。

色とりどりのヴィッケルフィッシュを準備するスイマーたち。遠くからも目立つよう、すべて派手なパステルカラーである (swissinfo.ch)

色とりどりのヴィッケルフィッシュを準備するスイマーたち。遠くからも目立つよう、すべて派手なパステルカラーである

(swissinfo.ch)

 昨年8月、「第35回バーゼル水泳大会(Basler Rheinschwimmen)」を見物した。これはスイス・レスキュー協会が主催の、皆で一斉にライン川を泳ごうというイベント。船の運航をわざわざ止め、レスキュー隊を配備して行う。競争ではなく、参加賞がもらえる。

 その日は晴れのち曇り、気温は22度、水温に至っては20度。主催者側も「今年は記録的な参加者数は見込めないだろう」と言ったほど。それでも決行となったのは、水温が19度以上だったからだそうだ!そしてなんと、1000人以上もの参加者があった。

 カラフルなフィッシュを下げた水着姿の老若男女が道をうめつくし、まるで海辺の町のよう。

スポンサー企業が無料でビーチボールや風船、ドリンクを配っていた (swissinfo.ch)

スポンサー企業が無料でビーチボールや風船、ドリンクを配っていた

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 驚いたのは、外国人の姿も多かったこと。トルコ人、中国人、インド人など、観光客ではなく住民だろう。ラインで泳ぐのは、決してバーゼルっ子の特権ではない。挑戦してみたい外国人は私だけではないのだとわかった。

 それを見ていて、私もどうしてもやってみたくなった。冷たい水に入る時の、きゃあきゃあ騒ぐ人たちさえうらやましい。冷たい水に驚いたのか?雄叫びもあちこちから聞こえてくる!

いきなり飛び込む熟練者、そろりそろり入る初心者 (swissinfo.ch)

いきなり飛び込む熟練者、そろりそろり入る初心者

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その光景を眺めながら、今度気温が上がったら絶対に行こう、と心に誓った (swissinfo.ch)

その光景を眺めながら、今度気温が上がったら絶対に行こう、と心に誓った

(swissinfo.ch)

 初回だけは必ず、経験者と一緒に行くように言われていた。私は体調を整えながら同行者を探しつつ、手帳と天気予報を照らし合わせていた。気温は低迷、絶好のライン日和はなかなか訪れない。と同時に、あてにしていた友人たちとも都合が合わなかった。

 それでも、夏の終わりは確実にやってきた。8月末日に再び30度を越えるという予報を見た私は、にわかに「ライン水泳ハウス(Rhybadhüssli)」の存在を思い出した。

 そこは安心して泳げるよう、川の水が囲ってある施設なのである。これならフランスまで流される危険はない(ライン川で溺れるとそのまま流され、フランスの発電所にある、川がせき止められた地点で発見される)。風景が鉄製の施設に邪魔され、風情に欠けるきらいはあったが、仕方ない。常に誰かしらいて、写真撮影も気軽に頼める。

あるおじいさんは親切にいろいろ教えてくださった(彼は冬でも週1回来て泳いでいるという!ただし水に浸かるのは2、3分程度とのこと) (swissinfo.ch)

あるおじいさんは親切にいろいろ教えてくださった(彼は冬でも週1回来て泳いでいるという!ただし水に浸かるのは2、3分程度とのこと)

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 ここはおそらくバーゼル人率100%、外国人は1人もおらず、私の存在は非常に目立った。が、おかげで受付のおばさんは私の顔を覚えてくれた。確かに若くてもせいぜい40代、そこは完全にご年配の方々に支配されていた。川で泳いでしまう元気なバーゼルのお年寄りたちを目の当たりにし、深く感銘を受けた。

 その日、水温は22度。訓練の甲斐あって私は難なく水に入ることができた!……囲みの中は木の葉や鳥の羽が浮いていてきれいとは言い難く、やはりライン川を実感したくて、囲みの外側を泳いでみた。

ここから外に降りていくか、このおばさまのように飛び込む。ここは水深7メートル、バーゼルの中では深いほうだ (swissinfo.ch)

ここから外に降りていくか、このおばさまのように飛び込む。ここは水深7メートル、バーゼルの中では深いほうだ

(swissinfo.ch)

 その建物のすぐ近くなら危険はない。50メートルほどあったが、流されるため楽に浮くし、あっという間に着いてしまう。私は何度も入っては出て、をくり返した。フィッシュにつかまって浮くのは意外に難しく、流れに乗りながら平泳ぎをするほうが実際は楽だ。ただし体力が続けばの話。

 それに一度、建物に戻ろうとしたのに2メートルほど行き過ぎてしまい、流れに逆らって泳ぐことになった時は参った。2分ほど両手両足を動かし続け、やっと手が届いた。泳ぐ練習をしておいて本当によかった!

とうとう私もラインで泳いだ!広々とした水をかいていくのはなんともいえない。ふだん眺めているだけだったライン川の、中を泳いでいるなんて! (swissinfo.ch)

とうとう私もラインで泳いだ!広々とした水をかいていくのはなんともいえない。ふだん眺めているだけだったライン川の、中を泳いでいるなんて!

(swissinfo.ch)

 そこのザンクトヨハンからだと、バーゼル大聖堂は背にして泳ぐことになってしまった。大聖堂を眺めながら泳ぐ夢は、翌年に持ち越された。来年こそ、夏の初めに計画を立てよう。そのために、今後も水泳は続けようと心に決めた。(2015年9月)

注:ちなみに今年は異常気象で、6月に入っても最高気温は20℃前後、ライン川日和はなかなか訪れない。6月24日だけは30℃を超え、泳ぐ人の姿も見られたが、連日の雨により水位が1,5メートルほど上がっており、流れも速くなっている。また水温は17℃前後で気温との差が激しいこと、さらに水中には木の枝などが一緒に流れていること等から危険度は高く、スイス・レスキュー協会は、しばらく遊泳は避けた方がいいとしている。

平川 郁世

プロフィール:平川郁世

神奈川県出身。イタリアのペルージャ外国人大学にて、語学と文化を学ぶ。結婚後はスコットランド滞在を経て、2006年末スイスに移住。バーゼル郊外でウォーキングに励み、風光明媚な風景を愛でつつ、この地に住む幸運を噛みしめている。一人娘に翻弄されながらも、日本語で文章を書くことはやめられず、フリーライターとして記事を執筆。2012年、ブログの一部を文芸社より「春香だより―父イタリア人、母日本人、イギリスで生まれ、スイスに育つ娘の【親バカ】育児記録」として出版。

 



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