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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

swissinfo.chが毎週月曜日にお届けする「スイスのメディアが報じた日本のニュース」では、スイスの報道機関が配信した日本関連ニュースを要約して紹介しています。こちらのページは、これまでに配信した記事の一覧です。

取り上げるトピックスは外交や政治、科学技術、暮らしなど、多岐に渡ります。このページは毎週更新されますので、ぜひブックマークをするなどしてご活用ください。

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5月21~26日

移民を呼び込みたい日本

ジョー・バイデン米大統領が今月初め、日本は「外国人嫌い」だと発言外部リンクし、物議を醸しました。ドイツ語圏の日刊紙NZZのマルティン・ケリング記者はバイデン発言を検証し、日本は労働力不足を補うため国境開放を進めていると解説しました。

記事によると、人口に占める外国人の割合は日本全国ではわずか2.4%ですが、首都東京の中心部・新宿では37%に達しています。スーパーやコンビニでも、顔や名札で外国人と分かる従業員が増えています。「これは、日本の保守政府が外国人に対してさらに国境を開放したいと考えていることを示す兆候だ」

急速な人口減少を補うため、政府は厳格だった移民規制の改革を進めています。2023年には外国人労働者の数が初めて200万人の大台を突破しました。1986年から日本に住む経済学者イェスパー・コール氏は同紙に、「2030年までに労働力の1割が外国人になる。日本は移民の国になるだろう」と語りました。

金利上昇は投資家にとって何を意味するのか?

日本の長期金利(新発10年物国債利回り)が24日、11年ぶりに1%の大台に上昇しました。NZZのケリング記者は表題の記事で、金利上昇が日本経済・金融にどのような影響を与えるかをQ&A形式で解説しました。

記事は「投資家にとって今の大きな関心事は、金利上昇が円安、ひいては株式市場の記録更新に終止符を打つことができるかどうかだ」と指摘します。

日本の金利上昇で日米金利差が縮小すれば円高に振れる可能性もありますが、記事は根強いインフレを抱える米国が早急に利下げに転じるとは想定しにくく、円相場は低水準で安定するとの専門家の見方を紹介しています。

また物価上昇に伴って名目国内総生産(GDP)の成長が続き、資産価格の押し上げを通じて株高が続くとの見方も挙げました。

スタートアップ引き寄せる東京

NZZのケリング記者はさらに、5月26日まで東京ビッグサイトなどで約1カ月開かれた「SusHi Tech Tokyo2024外部リンク」の取材レポートを執筆。「日本の首都は『最もスタートアップに優しい都市』であることをアピールしようとしている」と伝えました。

イベントには47カ国から400社以上のスタートアップ企業が出展。スイスからも「swisstech」を看板にしたブースに12社が出展、日本語で書かれた冊子で100社を紹介しました。スイス団を率いる科学領事館Swissnex外部リンク(スイスネックス)のフェリックス・メスナー在大阪領事はNZZに「日本への注目はどんどん高まっている」と語りました。「(日本の)大企業は多額の資金を蓄えているが、パイプライン(製品開発に至るまでのプロセス)をイノベーションで満たす必要がある」

日本の#MeToo、985件

旧ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏による性加害報道から1年。フランス語圏の地域紙トリビューン・ド・ジュネーブは「かつてないほど揺れるJ-Pop」との副題で、日本の芸能界、さらに文化業界全体が揺れている現状を解説しました。

記事は「ジャニー喜多川は3つの日本文化のタブーを利用した」として、①個人は常に集団の一部として生きることが求められ、一人称で話すことが難しい②性的暴行に関しては被害者の4分の3が誰にも話さず、告訴するのは1割以下③家父長制の強い日本では、性的暴行の被害者になった男性は男らしさの欠如を卑下されるか、同性愛者ではないかと疑われる―と説明しました。

しかし「国民感情は明確ではない」と続け、SNS上では無数のジャニーズファンがスキャンダルを「古い歴史」として葬ろうとしていると伝えています。

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5月13~20日

オーバーツーリズムに悩む日本 欧州観光客に照準⁠

京都・祇園地区の私道が立ち入り禁止になったり、富士山の写真スポットに黒幕が設置されたりするなど、主に外国人観光客による迷惑行為への対策に乗り出す観光地が増えています。そんな中、スイス・ドイツ語圏の日刊紙NZZは、日本政府が「欧州からの観光客に期待している」と報じました。⁠

NZZ東京特派員のマルティン・ケリング記者は、岸田文雄首相が4月17日に開いた観光立国推進閣僚会議で「外国人の宿泊を地方に分散し、持続可能な観光地域作りを加速していくことが喫緊の課題だ」と述べたことに注目。「明言はしていないが、その意味するところは間違いなく『政府はこれまでのようなアジアの近隣諸国ではなく、欧州や米国からの観光客を誘致したいと考えている』ということだ」と分析しました。⁠

セブン・イレブンが欧州展開強化スイス進出は?⁠

「日本の巨大小売企業は急激な変化を遂げつつあり、欧州市場に目を向けている」――ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガー企業担当のジークムント・スカラール記者は、セブン・イレブン @seven_eleven_japan を営むセブン&アイ・ホールディングスが4月下旬の投資家向け説明会「IRデー」で欧州市場を「第4の成長の柱へ育成」と位置付けたことに注目。スイス小売業界にもたらしうる影響を予測しました。⁠

スイスの食品小売大手ファーミー(Farmy)のドミニク・ロシェ会長は、「大規模でコンビニ志向、かつ長時間営業規制のハードルが低い国を見つけることが、市場参入の成否を分ける」とコメントし、スイスへの参入は難しいとみています。「Avec」や「Kiosk」などを展開するヴァローラ(Valora)が2022年にメキシコFEMSAに買収されて以来、スイスでは多くのコンビニ型店舗が姿を消しています。⁠

日本の株高…今回は違う?⁠

フランス語圏のオンライン金融メディアallnews.chは、ジュネーブ大学の金融学者ミシェル・ジラルダン氏による日本の株式ブームに関する論考を掲載。1980年代のバブル期と比較し「今回は違う」とバブルを否定するのは「誤った安心感を与える」と警鐘を鳴らしました。⁠

バブル期は日銀の金融緩和を背景に、住宅を担保にお金を借り、株式市場に投資する動きが広がりました。アダム・スミスの自由主義経済理論に倣って日銀はそれを放任しましたが、「この『緩み』が日本に多大な損害を与えた」と、政策転換の遅れがバブル崩壊を招いたとジラルダン氏は分析。「金融政策で同じ間違いを犯せば、同じ結果になる」と警告しました。⁠

今の株高もバブル期同様に「金融政策から十分な恩恵を受けてきた」もので、「中銀が方針を変えれば終焉を迎える」と指摘。円相場が1970年以来の円安水準にあることを踏まえると、「当然のことながら、日銀が方向性を変えるのはそう遠くない」と予想しています。⁠

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5月6日~12日

トヨタ、円安とHV戦略で過去最高益

トヨタ自動車が8日発表した2024年3月期決算は、本業のもうけを示す営業利益が5兆3529億円と、日本企業として初めて5兆円台を達成しました。ドイツ語圏の日刊紙NZZは、「ハイブリッド車(HV)が牽引し96%増益」と伝えました。

記事は、総販売台数が1100万台を超え、利益率11.3%を誇るトヨタは「世界の自動車産業においても別格であることを強調した」と評しました。販売台数では独フォルクスワーゲンを、利益率は独BMWを大きく上回っています。

増収増益の背景には円安もありますが、HV人気の高まりが大きな牽引役になっています。「多くの市場で消費者は電気自動車(EV)の購入を躊躇しており、その前の移行段階としてHVを好む傾向がある」。それはトヨタがEVよりHVを重視する長年の戦略そのものだとしています。

ニンテンドースイッチ後継機への期待

任天堂は7日の決算会見で、ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機の詳細を、2025年3月末までに発表することを明らかにしました。スイスでは仏AFP通信の関連記事が日刊紙ル・マタンや無料紙20min.などに転載されました。

記事は任天堂について「競合他社であるソニーやマイクロソフトと比べて、新型ゲーム機の予測がはるかに難しい」ものの、発売された機器は常に「それまでの能力を超えたイノベーションを備えている」と説明しました。

危険な日中のにらみ合い

「投資家は米国に注目しているが、日中関係の進展は経済的に大きな影響を与える可能性がある」――フランス語圏のオンライン金融メディアallnews.chは、ジュネーブにあるプライベートバンク「バンク・ヘリテージ」のジャン・クリストフ・ロシャ最高投資責任者(CIO)の寄稿を掲載しました。

ロシャ氏は、人口問題や不動産、消費の停滞、デフレと言った複合的な問題を抱える中国にとって、数十年に渡る停滞から抜け出しつつある日本は「不確実性の源となっている」と指摘します。特に人口減少で生産性の向上が急務となるなか、「日本円の暴落は、両国が競合する外部市場(特に地域市場)における中国の競争力を危険にさらしている」。これが中国内政への脅威となっているとしています。

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4月29日~5月5日

労働不足の日本 熟練労働者の育成は

ドイツ語圏の日刊紙NZZは「労働力不足の先駆者」である日本で、熟練労働者を確保するために国や企業がどんな取り組みを進めているか、静岡大学の熊野善介教授とのインタビューを交えて深掘りしました。

記事はまず、日本の労働力におけるSTEM(自然科学、技術、数学、工学)分野の人材比率は国際的には高くないものの、「工業化が始まった150年前から職業教育の歴史がある」(熊野氏)ため、他のアジア諸国より有利だと指摘しました。

また「日本の職業・STEM教育を魅力的なものにしているのは、日本人がモノづくりと呼ぶもの、つまり物を作ることの長い伝統だ」と強調。大企業での正社員は憧れの的であること、専門学校や高専も卒業生のほぼ全員が就職できることを紹介しました。

課題として挙げたのは、労働力不足が深刻化し廃業する中小企業が増えていることと、イノベーション力が衰えていることです。後者について、熊野氏は「伝統的な詰め込み教育から発明の促進への転換」が米国に比べ10年遅れていると指摘しました。

STEM分野の女性比率の低さも指摘しました。しかしこれは「好機」でもあり、STEM分野で女性を増やすことで、労働力不足を緩和する余地が他国に比べて大きくなる、と結びました。

バイデン氏、中ロ印と日本は「外国人嫌い」

ジョー・バイデン米大統領が1日、選挙関連のイベントで演説した際、中国やロシア、インドと並べて日本を「外国人嫌い」だと発言。それに対し日本政府が「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」と申し入れたことはスイス各言語圏で報じられました。

フランス語圏の大衆紙ブリックは、バイデン氏の発言を「中国とロシアが米国のライバルであるとすれば、日本とインドに関する彼のコメントは驚くべきものだ」と報道。バイデン氏が岸田文雄首相やインドのナレンドラ・モディ首相を国賓として待遇した事実を紹介しました。

ドイツ語圏のオンラインメディアGMXは、「ここ数カ月間、バイデン氏は失言や取り違えを繰り返してきた。これにより、同氏は大統領としては高齢すぎるという批判が高まっている」と付言しています。(出典:ブリック外部リンク/フランス語、GMX外部リンク/ドイツ語)

関西国際空港、30年間手荷物紛失なし

米CNNが2日、開業30年を迎える関西国際空港ではこれまで荷物の紛失(ロストバゲージ)が一度も発生していないと報道外部リンク。スイスのオンラインメディアbluewin.chのドイツ語・イタリア語版などがこれを取り上げました。

記事は、日本で最も混雑する空港の1つである関空が「他の多くの空港ではほぼ不可能なことをどうやって管理しているのか?」と疑問を呈しました。そして関空の広報担当者がCNNに「特別なことをしてきたとは思わない」と語った言葉を引用し、「スタッフは謙虚だ」と評しました。

また日経アジアを引用して「成功の秘訣は多層システムだ」と紹介。飛行機ごとに2~3人のスタッフが手荷物の数と種類を確認していると伝えました。

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