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スイスのブサカ審判 サッカーW杯南ア大会を去る

世界審判賞を受賞したトップ審判のブサカ氏は、一度きりの審判でW杯南ア大会を去ることになった Keystone

スイスのトップ審判マッシモ・ブサカ氏は、たった一度きりの審判でW杯南ア大会を去ることになった。

ブサカ氏がこの大会で審判を務めたのは、予選リーグの南ア対ウルグアイ戦 ( 0 : 3 ) 。公正な良い審判を行ったが、試合後、南アのカロス・アルベルト・パレイラ監督から激しく批判された。

見つからない理由

 ブサカ氏はこの試合で南アのゴールキーパーにレッドカードを出し、さらに南アに対してペナルティを課した。パレイラ監督は試合後の記者会見で
「彼の顔はこのワールドカップ ( W杯 ) で、もう二度と見たくない」
 と、負けた理由を代表選手ではなくブサカ氏に負わせた。

 その後、開催国がブサカ氏に対してかけた圧力は相当なものだったようだ。審判委員会のフランチェスコ・ビアンキ委員長はこの決定をまったく理解できないと批判する。
「返す言葉も無い。マッシモが審判してはならないという理由は技術的に見てもスポーツ的に見てもまったくない」
 2005年に引退したスイスの元トップ審判のウルス・マイヤー氏も
「スポーツ的な理由はない。彼の審判はすべて正しかった」
 と言う。

 ブサカ氏は予選リーグで一度しか審判をしていないが、このことに対して、以前マイヤー氏と同じように国際的な試合の審判を務め、ここ数年間欧州サッカー連盟 ( UEFA ) や世界サッカー連盟 ( FIFA ) の動向を追い続けいてるビアンキ氏はまだ楽観視していた。
「彼が予選リーグで試合を担当したのは後半の方だったし、決勝トーナメントで担当することになるだろうと思っていた。だが、そのリストにも彼の名前は無かったので疑問がわいた。それでも、大会最後の4試合のどれかには必ず投入されると確信していた。さらに決勝戦の審判を任されることになっているというなら、話はまた変わっていたはずだが」

踏みにじられたフェアネス

 41歳のブサカ氏にとって、この「動乱の年」は完全などん底で幕を閉じる。昨年は2009年世界審判賞を受賞、シーズン終了直前に結婚もした。だが、スイスカップのバーデン ( Baden ) 対ヤングボーイズ ( YB、ベルン ) 戦でベルンファンに向けて中指を突き立てたことから、向こう3試合の出場停止処分を受けた。

 ブサカ氏とともに副審を務めるマティアス・アルネット氏はこの知らせに対し
「公式な発表があっただけ。続けて審判をする人もいれば、帰らなければならない人もいる」
 と冷静だ。しかし、インタービューは禁じられていると言いながらも
「もちろん、主審も副審も全員、 ( 決勝トーナメントの重要な試合の審判をするという ) まったく違った目標を持ってこの大会に参加した」
 と心情を漏らす。
「試合後、FIFAから受けたフィードバックは良かった。その後、二度と審判を務められなかったのはやはり意外だった」
 
 また、1992年に欧州選手権の決勝を裁いたスイスの元審判、ブルーノ・ガラー氏も次のように批判する。
「FIFAが審判を仕事ぶりによって差配すると思っている人はナイーブな夢想者だ。FIFA審判委員会などの委員会は、純粋にスポーツ政策的な観点からでしか成り立っていない。ブサカ氏は、ほかの者がとっくに自分の利益のために足で踏みにじったフェアネスをまだ信じていたために、高い代償を支払ったのだ」

swissinfo.ch、外電

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