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スイスのH&Mがゴールドメダルを受賞

ロンドンのテート・モダン現代美術館の堂々とした玄関、タービン・ホール swissinfo.ch

バーゼルの建築事務所、ヘルツォーク&ド・ムーロン ( Herzog & Meuron以下 H&M ) が建築界で世界的に権威のあるロイヤルゴールドメダル賞をロンドンの王立英国建築家協会 ( RIBA ) から受賞した。

同賞は毎年、世界の建築に大きな影響を与えた優秀な建築家を1人選んで表彰する。今年はヘルツォーク&ド・ムーロン建築事務所のジャック・ヘルツォーク氏とピエール・ド・ムーロン氏が受賞。授賞式は2月21日に行われた。

 ヘルツォーク&ド・ムーロンは2001年にロンドンの古い発電所を改築してテート・モダン現代美術館を手掛けた。この美術館で注目を浴びて以来、世界中で活躍している。

作品が毎回異なる新鮮なアプローチ

 王立英国建築家協会の会長のジャック・プリングル氏はH&Mの勇気、並外れた創造性と突出した質の良い作品を賞賛した。「ヘルツォーク&ド・ムーロンは世界で最も優れた建築家であることは間違いありません。彼らは一つ一つの建物に新鮮なアプローチを施しています」と説明。 

 「彼らは建物の背景や必要性、目的を大事にしてデザインします。大概の場合、それぞれの新しい建物に見合った才気溢れるアイデアを見つけます」

全て異なる

 プリングル氏はH&Mの成功の秘訣の一つはメイン事務所のあるバーゼルにあるかもしれないという。バーゼルは優れた近代建築が多い街だからだ。もう一つは2人の長いパートナーシップと友情にあると考える。「2人は真のパートナーで切り離して考えられません」

 プリングル氏はH&Mを「手掛けたプロジェクトが全て異なる数少ない建築家」であると分析する。それでいて、一般にスイス建築のトレードマークといわれるスイスらしさを備えているという。これは知性的 、芸術的でありながら技術的に精巧であるという特徴だという。

 それでも、彼らの創造性は国籍に起因するものではない。「彼らは究極のスーパー学生を思い起こさせます。極端なところから、新しいプロジェクトに取り掛かる新鮮さと貪欲さを持っているのです」と語る。

テート・モダンパート2

 H&Mの制作した東京の「プラダ・ブティック青山店」に関してプリングル氏は賞賛を惜しまない。「あれは最も素晴らしい、流れるようなシームレスな建物です。建物自体がオートクチュールだ」 

 ミュンヘンのサッカー場、アリアンス・アレナのコンセプトについても1つの画期的な建築と評価する。このスタジアムの外観は赤、青と白の光が週末のサッカー試合に合わせて変化して光る。「アイデア自体は特殊なものではありませんが、それを実現させることが素晴らしいのです」

 2008年の北京オリンピックのメインスタジアムを着工しているのもH&Mだ。「これは間違いなく、歴史的に最も素晴らしいスタジアムとして残るでしょう」。この「鳥の巣」と呼ばれているスタジアムは籐を編んだような複雑な構造が外から見られる、驚くべき構造になっている。

 ロンドンのダンス学校「ラバンセンター」も傑出した作品だと見るプリングル氏。2003年にスターリング賞を受賞したのがこの建物だ。「美しく、女性的な建造物で半透明な素材であるポリカーボネートの外装が色のついたアルミニウムに被さっています。まるでネグリジェのように」 

 同氏はロンドンにある2つの建物は全く個性が違うという。「一方はパワフルでがっしりとしたテート・モダン近代美術館です。これは古いどっしりした発電所を改築しました。他方はバレーのための小さくデリケートな建物です」 

 H&Mのテート・モダンとの冒険は終わっていない。2012年までに新たに、テート・モダン現代美術館の増築工事を請け負った。11階建てで、巨大なガラスのクーポラを抱くこの改築工事の総額は約4億ドル ( 約4億9000万円 ) となる。「テート・モダンは最初から大成功でした。ロンドンっ子にアート鑑賞という楽しみを目覚めさせたのです。ですから、新しい芸術家が展覧会をする場所がさらに必要となったのです」

swissinfo、ギャビー・オッセンバイン ロンドンにて、屋山明乃 ( ややま あけの ) 意訳

- 2000年 ロンドンのテート・モダン現代美術館
- 2001年 バーゼルのサント・ヤコブスタジアム
- 2003年 ロンドンのダンス学校、ラバンセンター
- 2003年 東京のプラダ・ブティック・青山店
- 2005年 サンフランシスコのデ・ヤング美術館
- 2005年 ミュンヘンのサッカー場、アリアンツ・アレナ
- 2007年 北京のオリンピックスタジアム。
- 2006〜2010年 マイアミの美術館
- 2006〜2011年 バーゼルのロシュビル
- 2005〜2012年 ロンドンのテート・モダン現代美術館の増築

- 建築家、ジャック・ヘルツォーク氏とピエール・ド・ムーロン氏はロンドンのテート・モダン現代美術館の独創的なデザインで一躍有名になった。

- 2001年に建築界のノーベル賞に例えられる米国のプリッカー賞を受賞。2003年に王立英国建築家協会 ( RIBA ) が 欧州連合域内にある建物 に与える建築の賞、スターリング賞を受賞。そして、今年はRIBAのゴールドメダル賞を受賞。

- ヘルツォーク氏とド・ムーロン氏の提携は1978年にバーゼルで共同事務所を設立して以来続いている。現在、200人あまりの建築家を雇い、世界中で40ほどのプロジェクトを抱えている。オフィスはロンドン、ミュンヘン、サンフランシスコ、東京と北京にある。

- 両者とも1950年、バーゼル生まれで2人は幼馴染みだ。

- 世界的に権威のある王立英国建築家協会 ( RIBA ) のロイヤルゴールドメダル賞は日本からも伊藤豊雄氏 ( とよお/2006年 ) 、安藤忠雄氏 ( 1997年 ) 、磯崎新氏 ( 1986年 ) 、丹下健三氏 ( 1965年 ) などの建築家が受賞している。

- スイスでこのゴールドメダル賞を受賞したのはル・コルビュジエ ( 本名シャルル・エドワール・ジャヌレ/1953年 ) 以来だ。

- ゴールドメダル賞は150年来ある古い賞で建築家のライフワークを表彰するもの。

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