
スイス政治の右左対立
右派と左派の対立が激化する中で、スイスは政治的コンセンサスの時代の終焉を迎えたのではないかとの懸念が大きくなってきている。左派政権政党・社会民主党は、右派議員のコメントについての政党間討議を全てボイコットすることを誓った。
右派と左派の対立が激化する中で、スイスは政治的コンセンサスの時代の終焉を迎えたのではないかとの懸念が大きくなってきている。左派政権政党・社会民主党は、右派議員のコメントについての政党間討議を全てボイコットすることを誓った。
クリストフ・ブロッヒャー人民党国民議会議員は、スイスを代表する右派議員。孤立政策強化・外国人排斥などのテレビ討論番組での発言で、スイス保守層に人気の政治家だ。このブロッヒャー議員、社会民主党を自国の右派政党よりもファシズムと近しいと言ってしまった。社会民主党がEUのオーストリア孤立政策に支持を示したことは、全体主義的傾向の証拠だと発言した。
ブロッヒャー議員は、歯に衣着せぬ発言ではスイスの政治家1だ。が、昨年10月総選挙で人民党が4位から2位に浮上して以来、彼のレトリックは過激になる一方だ。
スイス政治アナリスト、ジュリアン・ホッティンガーは、スイス政治ではコンセンサスから対立へと移行するはっきりした徴候があると言う。が、これがレトリックの問題なのか政党間にイデオロギー上の対立が本当に育っているのかは、まだ断定できないとしている。「国民は明確な思想を打ち出すことに神経質になっており、政治家はこれに対応しているだけだろう。」
が、右派中道・キリスト教民主党のパウル・フェルバー・スポークスマンはスイス政治は右派と左派に二分されつつあることに間違いはないと言う。コンセンサスは衰えてきており、中道政党は右派と左派に周辺に追いやられている。この状況は今後も続き、4大政党がパワーを分け合っていた「マジック・フォーミュラ」を脅かすことになるだろう。「スイスの政治はより対立的なスタイルに向かっていることを認識しなければならない。この傾向に対抗するには、システムを再考し政府から右も左も蹴り出さなければならない。」
キリスト教民主党は、政治討論番組「アリーナ」(スイス放送協会)参加をボイコットし、ブロッヒャー・スタイルの政治に反意を表明した。フェルバーは、番組が政治を真剣に議論するより過激な発言と派手なパフォーマンスで楽しませる政治家に時間を与える事に抗議するためと、理由を説明している。
ジュリアン・ホッティンガーは、ブロッヒャー議員のような政治家のうけは、やがて消えていくだろうと言う。「人民党はいくつかの主題を引き出し、騒ぎ立てた。が、彼等の提案も政策もスイスには適さない。人民党がこの路線を続ければ、長期的には自滅する。」
実際ホッティンガーは、ブロッヒャー議員の政治生命はいくばくもないと分析する。「他の政党は、彼の態度を人民党内で彼を孤立させるために利用し始めている。全政党の上層部では合意に達していると思われる。」
ホッティンガー氏の分析は正しいかもしれないが、ブロッヒャー議員が大人しくなる事はあるまい。社会民主党に対する発言に関しても、謝罪を拒否しただけでなく、攻撃を繰り返した。「国家の神格化と集団性の強調。それが社会主義だ。」

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