今年10月のスイス連邦議会総選挙を踏まえ、スイスでは12月11日には新しい連邦閣僚が選出される。閣僚は一体どんな生活を送ることになるのか?
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連邦閣僚は7人。4年ごとの総選挙の後に開かれる上下院の合同会議で選出する。閣僚になると公の人物になり、スイスの街なかをお忍びで出歩くことはできなくなる。
公の場の発言は一言一句大きな重みをもち、多くのマスコミが耳をそばだてている。公務以外の私生活でも街に出れば顔を知られた存在となる。
「連邦閣僚は極めて公的な存在だ。それでもスイスでは、閣僚がトラムに乗ったり首都ベルンの街なかでコーヒーを飲んだりする姿を見かけることはそう珍しくない。(1998~2009年に閣僚を務めた)パスカル・クシュパンもそうだった」。クシュパン氏や同じく元閣僚のジャン・パスカル・ドラミュラ氏に秘書官として仕えたシュテファン・ニュンリスト氏はこう話す。
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「スイスらしい」
公の場で閣僚に遭遇すると、人々はただ立ち止まって視線を送るにとどまらず、握手を求めたり一言二言交わしたがったりする。
「ドラミュラ氏もクシュパン氏も、全く気に留めていなかった。それどころか、人々とそうやって触れ合うことをとても喜んでいた。閣僚職に就きたい理由の一つといってもいいかもしれない」(ニュンリスト氏)
「大半の人は内閣の一員に出会うことを喜ぶ。内閣とそのメンバーに対して多大な敬意を払っているからだ。スイスらしいことだ」
2019年に国防・国民保護・スポーツ相に就任したヴィオラ・アムヘルト氏はヴァレー(ヴァリス)州、司法相に就任したカリン・ケラー・ズッター氏はザンクトガレン州出身。ベルン市内に引っ越したか、少なくともセカンドハウスを構えた可能性が高い。閣僚の就業時間は朝7時から夜10~11時と長いからだ。
他の閣僚と同じように、新閣僚には公用車と運転手、加えて私用者があてがわれる。どのメーカーのどのモデルを選ぶかは自由だが、10万フラン(約1090万円)を超えてはならない。自宅に固定電話を引き、携帯電話を持つこともできる。
笑いのネタ
新閣僚がミスを犯さないよう、就任直後は大勢の職員がフルサポート。ただ遅かれ早かれ、閣僚をネタにしたジョークが世間に広がることになる。
ケラー・ズッター氏の前任、ヨハン・シュナイダー・アマン氏が2016年3月のスイス「病気の日」に寄せたビデオメッセージはその一例だ。しかめ面をピクリとも動かさず、まるでお悔やみの言葉でも述べるかのような口調で「笑いは健康に良い」と呼びかけた動画は、世界中で笑いものになった。たどたどしいドイツ語訛りのフランス語から、用意された原稿を読み上げているだけなのが一目瞭然だったからだ。
ニュンリスト氏は「おそらく秘書官もこんなに面白いことになるとは予期できなかったのだろう。そうでなかったらあれは止めたはずだ」と話す。動画は当時のオバマ米大統領の目にも止まったという。シュナイダー・アマン氏は後に自分自身を笑いのネタにして、権力者が持つべき最も重要な能力、つまり自分を客観視する力を備えていたことを証明した。
批判の目
新閣僚が批判にさらされない日はない。彼らは時に批判に目をつぶらざるを得ない時もある。だがうまく受け流す方法を教えてくれる人は誰もいない。
閣僚は決して取り乱さない。少なくともニュンリスト氏の知る限り、取り乱した閣僚はいない。「閣僚はスイスで政治経験を極めた人物ばかりだ。彼らは攻撃を見極める術を知っており、個人に対する批判と物事に対する批判を区別できる」
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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