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スイスの製薬会社ロシュ 鳥インフルエンザで盛業

タミフルは一箱、86.5フラン(約7700円)もする高い薬

(Keystone)

EUで鳥インフルエンザ感染拡大の懸念が広まる中、ほくほく喜んでいるのは抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」を製造・販売するスイスの製薬会社ロシュだろう。

スイスでも、鳥インフルエンザが人に感染した場合に唯一効くといわれているロシュのタミフルの乱用や個人による無駄な備蓄が騒がれ、スイス医師連盟や薬局協会が無駄な処方や処方箋なしの販売を慎むように呼びかけている。

スイスでも買いだめ現象

 タミフルは日本でもスイスでも医者の処方箋なしでは買えない薬だ。しかし、ル・マタン紙の日曜版(10月16日付け)では「患者の強い要望で患者を失わないためにタミフルを処方する医者が増え、薬局の10件中8件はストックがない」と伝えている。スイス医師連盟のジャック・ド・ハラー氏は「便宜を図るためにタミフルを配ることによって悲劇的な結果を招きかねない」と警鐘を鳴らしている。

タミフルで大儲け

 タミフルは一箱86.50フラン(約7千700円)するカプセルタイプの錠剤で朝夕に数日間の服用が必要だ。ル・マタン紙によると製造費は30フラン(約2600円)前後で、薬局のマージンは35フラン(約3100円)ほどというから、儲けているのはロシュ社だけではない。

 この大当たりのタミフルのお陰でロシュの売上高は2005年前期だけを見ても前年比で357%高の5億8000万フラン(約516億円)にも上ったとル・マタン紙。

 しかし、鳥インフルエンザが世界的に流行する前には、この「金の卵」の製造をロシュは「値段は高いし、保険は効かないし、吐き気やめまいなどの副作用が大きい」として諦めるところだったと10月15日付けのトリビュン・ド・ジュネーブ紙は伝えている。

タミフルは本当に効くのか?

 世界保健機構(WHO)が鳥インフルエンザの対応に勧める薬品はタミフルと吸入剤のリレンザだ。しかし、タミフルの方が服用が簡単なために多くの国がこれの備蓄に急いでいるので世界中での需要が急増した。

 しかし、この「特効薬」ラッシュにブレーキをかける動きも出てきた。英科学誌ネイチャーが「鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染した患者から、タミフルに耐性を持つウイルスが検出された」という研究が10月20日に発表される予定と朝日新聞や仏ル・モンド紙などが報道した。同研究は鳥インフルエンザに感染した患者のウイルスの遺伝子を調べたところ別の抗インフルエンザウイルス薬リレンザは効果が認められたことからタミフルばかりでなく、リレンザも備蓄するべきかもしれないという趣旨のもの。

 また、10月上旬に同様の「タミフルに対するウイルス耐性が見られる」といった研究結果が香港の研究者からも報告されている。

ロシュの専売特許

 WHOは鳥インフルエンザが人間に感染した場合に備えて人口の25%を治療できる薬品が必要と各国政府に呼びかけている。

 ロシュは急増する需要に対応するために「2006年までに生産量を2004年時の10倍」にすると発表している。ロシュのタミフルの専売特許は2016年までで現在のところ独占状態のうえ、ジェネリック薬(特許が切れた新薬を同じ成分でつくる後発医薬品)の製造も今のところ認めていない。

 しかし、ここ数日間でトルコ、ルーマニア、ギリシアでの鳥インフルエンザの発生に続き国際的圧力も高まり、10月18日、ロシュはこの需要に応えるために他社にタミフル製造のライセンスを認可する用意があると発表した。世界貿易機関(WTO)の取り決めでは保険衛生上の危機に関わる場合はジェネリック薬の製造を許可している。このため、ロシュは何としてもこれを避けたいところだろう。

 「風が吹けば桶屋が儲かる」と言う諺があるが、「鳥が病めばロシュが儲かる」という方がピッタリの事態にある。


swissinfo、 外電 屋山明乃(ややまあけの)

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WHOが鳥インフルエンザに対応する薬として勧めているのは抗インフルエンザウイルス剤のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル/ロシュ社)と吸入剤のサナミビル水溶液(商品名リレンザ/グラクソ・スミス・クライン社)だが、タミフルはカプセルタイプの飲み薬のため服用が簡単。

タミフルはスイスのホフマン・ラ・ロシュ社が米国のギリアード・サイエンスと提携して開発したA型、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)阻害剤。

タミフルは日本では中外製薬が輸入販売している。服用には医者の処方箋が必要。

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