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運任せのギャンブルは不幸な末路を迎える



ギャンブル依存症の人は大儲けできるかもしれないと夢を見るが、それは悲劇に終わる恐れがある

ギャンブル依存症の人は大儲けできるかもしれないと夢を見るが、それは悲劇に終わる恐れがある

(Keystone)

カジノで大当たり。「ロト」で六つの数字を見事に当てる。万馬券を当てて賞金をさらう。スイスには甘い夢を見て、ギャンブルの世界にはまっている人が約10万人いる。しかし、それは結局悪夢に変わるのだ。ギャンブル依存症になったある男性の例を見てみよう。

笑顔が魅力的な長身の男性、ペーター・Kさん ( 仮名 ) はかつて全てを所有していた。しかし現在は破滅の深淵にはまっている。

ギャンブルで失ったもの

 以前、Kさんに不足しているものは何一つなかった。優しい妻と2人の子供がいて、一軒家を所有し、スイスの銀行に勤務していた。車庫に停めてあるのはいつも高級車だった。誰もが彼の人生を素晴らしいと思っていたのだ。

 しかし、今は何一つ残っていない。家や車は強制競売にかけられ、妻とは離婚する羽目に陥った。Kさんに残されたのは1億円を遥かに超える借金の山だ。これは、おそらく今のKさんが返済できる金額ではない。その上、かつての妻が老後のために貯蓄していた年金口座から違法な手段でお金を引き出してしまった。それを元通りに埋め合わせることもできないだろう。

 Kさんは、横領と文書偽造による刑事訴訟を控えている。今やかつての妻と子供はKさんと縁を切ろうとしている。Kさんのギャンブル熱と度重なる嘘が家族に与えた傷は深い。父に対する、そして夫に対する信頼は無くなってしまったのだ。

ギャンブル依存症への道

 なぜ人は人生や仕事を台無しにする危険を冒してまでギャンブルをするのだろうか。また、どのようにして人は病的なまでにギャンブルにのめり込んでいくのだろうか。
 「肯定的に説明すれば、依存症になる人は進んでリスクに向かっていくことができるからだと言えます。否定的に言えば、心の衝動をコントロールできないからだと言えます」
 と精神療法専門の心理学者であるイネス・ボドマー氏は語る。

 ギャンブル依存症になる人の8割は男性だ。
 「リスクを冒したがるのは男性特有の性質です」
ギャンブル依存症の原因にはさまざまな要素が絡んでいる。若いうちにギャンブルを始めると、ギャンブル依存症になる可能性が高い。一方で、ほかの中毒症状にも認められているように、ギャンブル依存症には遺伝的な要素もかかわっている。また、既に家庭内で賭博をする環境にいる場合、ギャンブル依存症になる確率が高い。

 さらに、ギャンブルが社会的に容認されている事実も見逃してはならない。
 「ポーカーゲームは、現代では粋なものとされているのです」
しかし膨大な借金を作ってしまうという面では社会で批判されている。金銭に困ることはばつの悪いことで、人はこれを恥と思う。
 「しかし、ギャンブル依存症は、アルコール中毒や麻薬中毒と比較して社会的にはあまり批判の対象になっていません」
 とボドマー氏は付け加える。

助けを求めるのはいつも最後

 ギャンブルをする人のほとんどは、ギャンブルに熱中する余り大きな損害を出してしまった後で助けを求めにくる。
 「ほとんどの人は自ら相談しに来るわけではありません。まず、周囲の人たちが連絡してきます。例えば絶望的になった配偶者や兄弟、様子を知ってこのまま放っておいてはいけないと感じた雇用主などが連絡をしてくるのです」
 

 大抵、最初に内輪で揉め事が起きる。妻が夫のクレジットカードの高額な明細書を見つけたり、雇い主の金庫のお金が足りなかったりする事件が起こる。ボドマー氏の経験によると、依存症になっている本人は中毒症状を否定したり、軽視したりするという。
 「依存症の人はいつまでも望みを持っているのです。『もう少し運があれば借金から抜け出せる。借金から抜け出したらギャンブルは止める』と。これはいつも聞くセリフです。ですが一度だけ大儲けをしてからギャンブルを止めるなんてことは幻想なのです」

 借金を抱えている人は、借金から抜け出すために賭け金をさらに増やすという悪循環に陥る。そして当然のごとくその計画は思った通りに上手くはいかない。Kさんも同様、初めて妻に問題を告白した後もギャンブル依存症から立ち直ることができなかった。
 「依存症の人のカウンセリングを行うときは、抱えている借金を帳消しにすることに重点を置きます。そのプロセスはとても辛いことですが」
 とボドマー氏は語る。

ギャンブル依存症とは

 ギャンブル依存症とは、ギャンブルが生活の中心になってしまったり、ギャンブルに対する欲求や頻度をコントロールできなくなってしまったり、借金を埋め合わせようとしてさらにギャンブルをしてしまったりすることだと国際的に定義されている。 
 
 「趣味と中毒や依存症の原則的な違いですが、仕事や家庭などにおいて、人生に悪影響を及ぼすと分かっていてもさらに続けるのが中毒です。ギャンブルに対する欲求をコントロールできないときや、ギャンブルが自分を駄目にし、損害を出し続けるだけならば、それも中毒です」
 とボドマー氏は語る。

ギャンブル依存症は治癒できるのか

 個人や家族、グループ単位で治療を行っているボドマー氏は、ギャンブル依存症はほかの中毒症状と同様に治癒できると言う。
 「ギャンブル依存症の場合は自然に治ってしまう確率も高いです。周期的にギャンブルをする時期と止める時期があるからです。また人生でつらい出来事があるとギャンブル依存症になることもあります。原則として話したり、治療したりすることで依存症を治癒することができます」

 再発の可能性はアルコールや麻薬などの依存症と類似した範囲内に止まるという。ボドマー氏は「3分の1原則」を引用する。
 「一度中毒にかかった人の3分の1は再び中毒になり、3分の1は症状がほぼ改善し、3分の1は禁欲の状態を保つようになります」

 ボドマー氏は世間一般で決まり文句になっている「症状の再発は中毒者を自動的に再び破滅の道へ追いやる」という考えには反対だ。
 「グラス1杯のアルコールを飲んで再び中毒になってしまうのは、( 自分は再びアルコール中毒になってしまうという ) 予言を自ら的中させているようなものです。なぜならグラス1杯のアルコールを飲むことも完全な堕落を意味することだと信じているからです。そういう人は ( グラス1杯も1瓶も同じだと思い ) 1瓶をすぐ空にしてしまうのです」

 正しいのは、グラス1杯のアルコールを飲んでもそれを失敗だとか挫折だと決めつけないことだと言う。
 「中毒専門家のヨルク・ペトリー氏は『再発』についてではなく『起こったこと』について話すことを薦めています。そうすればあまり大騒ぎすることにもなりません。起こった事実について『悲観的に見ない』ようにして、再び中毒になったと『信じ込まない』ようにすることが大切です」
 とボドマー氏は語る。

 治療の過程では、継続的に効果が出るわけではない。
 「治療が一気に進むことはありません。少し前進しては、その後また後退します。大切なことは、全体的に見て効果が出ていることです」
 とボドマー氏は説明する。

 Kさんはまだ治療の初期段階にいて、長く困難な道のりを歩み始めたばかりだ。職を失い、民事訴訟と刑事訴訟を控え、家族からも見放された状態で、そうたやすく平穏な人生を取り戻すことはできないだろう。

スイスにおける賭博

スイスでは七つのAライセンスのカジノ ( テーブルゲームとスロットマシーン ) と12のBライセンスのカジノ( スロットマシーンのみ ) が運営されている。
2008年、スイスのカジノで費やされた金額は総計9億9200万フラン ( 約835億3200万円 ) に上った。そのうち、3743台のスロットマシンに費やされたた金額は7億9600万フラン ( 約670億2800万円 )、テーブルゲームに費やされた金額は1億9600万フラン ( 約165億円400万円 ) に達した。また、宝くじや賭博に費やされた金額は9億1100万フラン ( 約767億1000万円 ) を計上した。
同年、スイス全国のカジノが法律に基づいて各州や老齢年金に納めた税金は、総計5億1700万フラン ( 約435億円 ) に上った。また、「スイスロス ( Swisslos )」と「ロッタリー・ロマンド ( Loterie Romande )」は社会、文化、スポーツの振興のために5億3500万フラン ( 約450億5000万円 ) の税金を州に納めた。

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スイスは賭博の国?

スイス全人口の6割が過去15年間に少なくとも一度は賭博をした経験がある。
大抵、最初に宝くじや賭博を経験し、その後カジノでギャンブルをするケースが多い。以前はオンラインカジノでギャンブルをする人は少なかったが、現在は増加の傾向にある。
2005年、人口の0.8%がリスクの高いギャンブルをし、0.5%が依存症になったことが、ある調査で報告されている。その数は約8万人に上った。
そのほかの調査ではスイスには逸脱した額を賭けている人、ギャンブル依存症になっている人が12万人以上いると報告されている。また、2万3000人以上のスイス人がカジノへの立入りを禁止されている。
ギャンブル依存症の人の7割から8割が男性。

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ギャンブル依存症による損失

カジノのギャンブル依存症の人が欠勤、治療、不法入手行為や離婚訴訟手続きなどで出費する金額は年間約7000万フラン ( 約59億円 ) に上る。
カジノ以外のギャンブル依存症による損失額は現在のところ推測不可能。

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( 独語からの翻訳、白崎泰子 ), swissinfo.ch


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