スイス連邦議会は、国際法より自国法を優先する国民発議「国内法優位イニシアチブ」に対し、反対を表明した。イニシアチブは議会の決定に関係なく国民投票で有権者の是非を問う。
このコンテンツが公開されたのは、
国民議会(下院)で11日に行われた採決は反対127票、賛成67票で、全州議会(上院)に続き否決された。採決に先立って行われた議論は9時間以上に及び、採決は深夜0時前にずれ込んだ。
>>スイスの「国内法優位イニシアチブ」って何?
保守派・国民党が立ち上げたこのイニシアチブは今年後半に国民投票が行われる見通し。同イニシアチブは、国際法上の強行規範(拷問、奴隷制度、侵略の禁止など)を除き、いかなる場合においても連邦憲法が国際法に優先するという条項を、連邦憲法に盛り込むことを求めている。
国民党は「近年、連邦最高裁判所、連邦内閣、行政、法曹界は国際法が国内法に優先する、という風潮にある」と批判し、憲法を最上位にすえることで「スイス固有の民主主義を取り戻す」と訴える。
連邦政府は昨年、国際法を軽んじる姿勢を取れば他国の信頼を失うなどとしてこのイニシアチブに反対を表明。発起人の国民党以外にイニシアチブを支持している政党はいない。
スイスのシモネッタ・ソマルーガ連邦司法相は、イニシアチブは「白か黒か」を決める極端なもので、「スイスのあり方と正反対だ」と述べた。さらにイニシアチブが可決されればスイスは不必要な「コルセット」によって締め付けが厳しくなると懸念。イニシアチブの内容は漠然としていて矛盾を含んでいると付け加えた。
おすすめの記事
スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス下院委員会は連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)の留学生の学費をスイス人学生の3倍に引き上げる案を可決した。27日に始まる夏期本会議で審議する。
もっと読む スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
おすすめの記事
FIFA、脱スイスに向け定款改正
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)は17日、本部をスイス・チューリヒ以外に移せるよう定款を改正した。
もっと読む FIFA、脱スイスに向け定款改正
おすすめの記事
ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
このコンテンツが公開されたのは、
6月15~16日に開催されるウクライナ平和サミットの舞台として、ルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」が注目を浴びている。かつては庶民も受け入れられる高級リゾートして地元に愛されていたが、近年は事情が違うようだ。
もっと読む ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
おすすめの記事
スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
このコンテンツが公開されたのは、
気候変動の影響で、スイスで花粉症患者が増加している。有症率は2割で、経済損失は最大で年間6900億円に上る。
もっと読む スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
おすすめの記事
ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
このコンテンツが公開されたのは、
欧州国別対抗の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝が11日、スウェーデン南部マルメで行われ、「ノンバイナリー」を自認するスイス代表のNemo(24)が優勝した。会場周辺ではイスラエル参加に対する大規模な抗議活動も行われた。
もっと読む ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
おすすめの記事
スイス北東部でオーロラ観測
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北東部のゼンティス山頂で6日未明、オーロラが観測された。
もっと読む スイス北東部でオーロラ観測
おすすめの記事
ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。
もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
続きを読む
おすすめの記事
国内法優位イニシアチブ、その争点は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは25日、国際法よりもスイスの憲法を優先するよう求める国内法優位イニシアチブ(国民発議)「外国の裁判官ではなくスイスの法律を」の是非が国民に問われる。イニシアチブの基にあるのは、スイス国民の下した決断が国際条約に阻まれて実現されないという事態をなくそうという考えだ。だが反対派は、イニチアチブが可決されれば、人権が危険にさらされかねないと主張する。
もっと読む 国内法優位イニシアチブ、その争点は?
おすすめの記事
スイスの直接民主制と国際法、折り合いはどう付ける?
このコンテンツが公開されたのは、
国内法と国際法、相反した場合にどちらを優先するかー。これはスイスで長年議論されてきたが、とりわけ問題になるのが、直接民主制との関係だ。両者の間でどう整合性を取るのか。専門家が六つの「処方箋(しょほうせん)」を説明する。
もっと読む スイスの直接民主制と国際法、折り合いはどう付ける?
おすすめの記事
国際法より国内法を優先?「国内法優先イニシアチブ」とは
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでいま、国際法より連邦憲法を優先するよう求めるイニシアチブ(国民発議)が話題になっている。発起人の右派国民党は「(憲法を最上位にすえることで)スイス固有の民主主義を取り戻す」と訴えるが、連邦政府などは、国際法を軽んじる姿勢を取れば他国の信頼を失うと反対する。一体どんな内容なのか。
もっと読む 国際法より国内法を優先?「国内法優先イニシアチブ」とは
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。