気候変動に伴う異常気象は、スイス農業にどんな影響を及ぼすのか?スイス農家組合外部リンクは、異常気象により国内農家に影響が出ており、何らかの対策を講じなければならないと訴えた。一方で、デメリットばかりではないと指摘する声もある。
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同組合の理事長で連邦下院議員のマルクス・リッター氏は、同日ベルン近郊の農場で開かれた記者会見外部リンクで「すぐに行動を起こさなくてはならない」と訴えた。
リッター氏は、霜やひょう、暴風雨、長期の雨や日照り、夏の干ばつが農家に与える影響は拡大していると述べた。例えば昨年の夏は極めて降雨が少なく、ジャガイモやトウモロコシ、小麦、動物の飼料など穀物に大きく影響した。
組合は、水の使用量がより少なくて済む、環境に優しい作物の生産を促進したい考えだ。
だが農業自体も気候変動の一因だ。温室効果を持つメタンガスは、牛のげっぷやおならからも排出されている。リッター氏は「これをゼロにするのは難しい」と語った。
組合は二酸化炭素法の改正を支持する。法改正は温室効果ガスの排出を減らし、気候変動に関するパリ協定へのスイスの貢献を促す内容だが、現在連邦議会で審議がストップしている。
温室やトラクターに使用される燃料を含むと、農業から発生する温室効果ガスは全体の13%を占める。
イチジク?
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)のクリスティアン・フォン・ブルク記者は、気候変動がスイス農家に与えるのはデメリットだけではないと解説外部リンクする。暖かい気候により、これまで国内では栽培できなかったアンズやイチジク、キビ、大豆も育つ可能性がある。ワイン用のブドウの育成もよくなりそうだ。
フォン・ブルク記者は「これらすべては農業の役に立つ。 既に多くの農家は実験を始めている」と述べた。
一方、農家は気候変動の進行が速いことに不安を感じている。リッター氏は「このペースが続けば非常に温暖で乾燥した気候になる可能性がある」と警告した。
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