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備蓄米、万博、校則…スイスのメディアが報じた日本のニュース

夢洲駅
大阪・関西万博の会場につながる夢洲駅。2024年12月撮影 EPA/FRANCK ROBICHON

スイスの主要報道機関が先週(2月10~16日)伝えた日本関連のニュースから、①価格高騰で初の備蓄米放出②期待感なき大阪・関西万博、の2件を要約して紹介します。

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価格高騰で初の備蓄米放出

コメの価格高騰が続く中、日本政府は備蓄米21万トンを3月半ばにも市場に放出することを決めました。不作や地震への対応ではなく価格高騰を理由に備蓄米を放出するのは初めてです。スイスでは日本食ブームもあってか、フランス語圏やドイツ語圏で詳しく報じられました。

大衆紙20min.フランス語版などは仏AFP通信をもとに、コメの高騰に苦しむ消費者の声を伝えました。1995年に発足した備蓄制度が、深刻な不作や災害がなくても放出できるよう法改正が為されたことも解説しています。宇都宮大学農学部の小川真如助教は価格高騰の背景として、寿司好きな外国人観光客の増加や、8月の「南海トラフ警報」発令にともなう買いだめパニックも指摘しました。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは日本人のコメの消費量自体は60年前に比べ半減していることにも触れました。また2024年秋の収穫後も価格が落ち着かなかった原因は、消費者ではなく卸売業者の買いだめにあると説明しています。(出典:20min.外部リンク/フランス語、ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

期待感なき大阪・関西万博

大阪・関西万博の開幕まで2カ月を切りました。ドイツ語圏の大手紙NZZは、1970年大阪万博やその時代背景と比べながら、今回の万博に対しては日本人から冷たい視線が注がれていると報じました。

1970年万博のテーマは「人類の進歩と調和」。「進歩」に関していえば、当時と比べ新幹線や携帯電話などの技術は大きく発展・広く普及し、平均寿命や人口も伸びました。しかし出生率は2.1%から1.3%に低下し、百歳以上人口は500人から9万人に激増しています。

一方、「調和」に関して記事は「いまだ信心ぶった願い」だと表現しました。1970年万博はアジアで開催される初の万博で、「日本は世界を相手にすることに誇りを抱いていた」。しかし今、「多くの人はマスツーリズムを迷惑だとみなしている」といいます。

記事は「日本は飽和状態にある」と続けます。国の借金は積み上がり、高齢者の年金をだれが支えるのかが大きな問題になっています。万博は「生活がいかに技術に支えられ、技術によって形作られているか」を示そうとする一方、「それが国の借金を減らすことにつながるかはわからない」と指摘しました。

「今の日本には(万博への)期待感があまり感じられない」。筆者が人々に万博のことを尋ねても、「つまらなさそうに『ああそうだね』とあいづちをうつか、『もっと重要な問題がある』と帰ってくる」と言います。

最後にこう投げかけました。「万博はデジタル時代にも居場所があるのだろうか?」(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

自殺対策で校則見直し広がる

服装・髪型から給食・掃除のルールまで、日本の学校にはさまざまな校則があります。ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は、校則を緩和する学校が増えていることとその背景について、チューリヒ大学の日本学者、スティーヴ・エントリッヒさん外部リンクに話を聞きました。

エントリッヒさんは、校則の見直しは1970~80年代に始まったと説明します。自殺やいじめへの対応として、「学校での競争を規制し、生徒がほかのことに興味を持つ時間を増やす」目的がありました。また国際的な学力調査で日本人は優秀な成績を収めながらも、読解力や創造性においてはやや劣っていることへの危機意識もあったといいます。

最近は東京を中心に校則見直しの動きがでていますが、エントリッヒさんは「校則が諸悪の根源でないことは確かだ」と見ています。むしろ慢性的な人手不足で残業が多い教師たちの働き方を見直し、子ども一人ひとりのニーズによりよく対応することが必要とされながら、具体策はあまり講じられていない、と指摘します。

また「自殺の原因が学校だけにあることはほとんどなく、家庭環境や非常に個人的な問題が大きく関係している」と話し、家庭で何か間違いが起こっている可能性、セーフティネットが長く機能しないこと、人々へのサポート不足、孤独感の高まりといった問題点も挙げました。しかし実際には自殺の原因に関するデータが不足していることを指摘し、「今必要なのは、原因をよりよく分類し、実際に効果的な対策を立てることができるようにするための熱心な研究だ」と強調しました。(出典:SRF外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「32億円で売り出し オードリー・ヘプバーン邸宅」(記事/日本語)でした。他に「米の鉄鋼・アルミ関税『エスカレートの可能性も』 スイス機械・金属連盟 」(記事/日本語)、「マイナス金利は『国益のため』 スイス中銀」(記事/英語)も良く読まれました。

ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。

次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は2月24日(月)に掲載予定です。

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校閲:大野瑠衣子

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