スイスの視点を10言語で

欧州、トンネルの安全性を再検討

ゴットハート・トンネル火災を受け、欧州でトンネルの安全性の問題が再燃した。専門家らはスプリンクラーの設置、ドライバーへの教育などをあげるが、欧州基準の制定には政治的な解決が必要だという。

「欧州の、または世界の他のトンネルから比べると、ゴットハート・トンネルの安全レベルは高い。が、改善の余地は多々ある。」と、スイス安全保障研究所のフーバート・ロエッグ氏はいう。39人の犠牲者を出した1999年仏のモンブラン・トンネル火災以降、ゴットハート・トンネルの安全対策は再検討された。現在は、トンネル内の車線と平行に避難用のトンネルがあり、250mごとに避難路と接続する最大70人収容可能な絶煙避難帯が設けられている。24日の火災事故でも数人のドライバーがこの避難路を通って脱出に成功した。また、15分でトンネルの空気を入れ替えられる換気システムもある。が、このトンネルにはスプリンクラーがない。ロエッグ氏によると、欧州にはトンネルにスプリンクラー設置を義務付ける規格はない。

スイス連邦道路交通局は、トンネル安全性改善法規の欧州基準を設けるのは困難だという。「我々はトンネルの設計・管理、トンネル内を通行する車種の管理などの法規を制定するよう圧力をかけている。が、トンネルの安全対策は万全でも交通事故の予防はできない。ゴットハート・トンネルでも安全対策はかなり尽した。が、今回の事故でも、発端は車輌の衝突だ。」とミシェル・エッガー道路交通次長はいう。エッガー氏もロエッグ氏も、死亡事故減少のためには、ドライバーに対する緊急時の対処法の訓練が必要だという点で一致する。「トンネル内で煙を見たら、直ちに出口に向かうこと。車内に留まったら死ぬ。」とエッガー氏。

ロヨラ・パラチオEU (欧州連合)交通担当委員は25日、ゴットハート・トンネル火災を受け、「99年のモンブラン・トンネル火災、また99年5月のオーストリア・タウエルン・トンネル火災(犠牲者12人)後、再び起きた惨劇に、我々はトンネルの安全問題の重要性を再確認させられた」とし、EUはトンネルの安全性について長期的に見て行くと語った。同時に、欧州委員会は、2002年初めから道路・鉄道トンネルの安全性改善の指導を提唱する意向を示した。ギレス・ガンテレット欧州委員会報道官は、時間帯を設定してトンネル内の通行を一方向に限定するなどの欧州基準の制定は「厳格な政治的決定」に関わると、難航を示唆する。さらに、ガンテレット報道官は、トンネル内での大型車の車間距離測定器設置、車間距違反者への罰金などの案を上げ、「安全性の改良手段はあるが、実施には政治的決定が必要だ。」と語った。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部