第76回ジュネーブモーターショー始まる
欧州最大級の自動車見本市、ジュネーブモーターショーが3月2日から開幕した。今年は省エネルギーや環境を配慮するエコカー(低公害車)が花形で、昨年に比べると出展台数が2倍となった。
また、未来の車を想定する新しいコンセプトカーの発表も多く、日産は欧州初公開のキャビンが回転する「PIVO」を、ルノーはスポーティーな「アルティカ」を、ロールスロイスは未来のクーペ「101EX」を公開した。
なお、今年は車専門雑誌、「ルビュー・オトモビル(Revue automobile)」の刊行100周年を祝って会場の地下には自動車史に刻印を残した14台の「名車」を飾っている。車マニアは1955年のメルセデス「300SLR」や1959年のポルシェ「356」に目を輝かすに違いない。
欧州市場トレンドのエコカー
今年、20ばかりのスタンドで紹介されているエコカーはハイブリッド、電気自動車、水素で走る燃料電池車、エタノール車や天然ガス自動車など。様々な方法で低燃費、低排気ガスの環境に優しい車が注目されているのは、EUやスイスのエコカーに対する減税措置や法改正などの政策が功を奏してきたのだろう。
そのうえ、スイスのガスモビル・イーモビル協会は「エコカー」専用スタンドまで設け、現在、スイス市場で出回っているハイブリッドカー(トヨタ、ホンダ)や電気自動車(ルノー、フィアット)、天然ガス自動車(シトロエン、メルセデス)を展示している。
上昇するハイブリッド熱
さて、排気ガスを抑え、燃費が良いハイブリッドカーにはガソリンエンジンと電気モーターやディーゼルエンジンと電気モーターなどの組み合わせがある。このハイブリッドカーの代名詞にもなりつつあるトヨタ「プリウス」だが、スピードに合わせてガソリンと電気を自動的に切り替えるのが特徴だ。
トヨタ自動車、広報企画部の山田哲也担当部長は「欧州では昨年ぐらいからぐっと注文が増えてきました」と語る。昨年は2万台に売り上げが伸び、今年はさらに成長するとみている。ホンダもこのハイブリッド熱の波に乗って、今年からCIVICのハイブリッド車を欧州で本格的に売り出す予定だ。
スイスでもハイブリッド車の売れ行きが急激に伸びており、2004年には1000台だったのが、2005年で2500台に上ったという。スイスでプリウスIIを購入する場合、現在のところ、5〜6カ月ぐらい待たなければならないという。生産面で追いつかないという状況だ。
ホンダの広報担当の岡本紀子氏は「これまでハイブリッドカーに興味のなかった欧州メーカーのトレンドが変わった」と分析する。もちろん、欧州メーカーでもハイブリッドカーの生産をし始めたが、前出の山田氏によると「ハイブリッドカーの技術先端を引っ張るのはなんと言っても日本の自動車産業、トヨタとホンダです」という。これは、ディーゼル車が多いヨーロッパではこれまで、欧州メーカーはハイブリッド技術よりも、いかにクリーンなディーゼル車を造るかに力を入れてきたからだという
ジュネーブモーターショーの位置付け
世界でも重要なモーターショーは東京の他に、デトロイト、パリやフランクフルトがある。日本の自動車業界からは「スイスのモーターショーは自国の自動車産業がないので公平な扱いを受けられるため、大変やり易い」との評判が高い。また、コンセプトカーが多いのが特徴といわれる。
欧州初公開で昨年の東京モーターショーでも話題になった日産のコンセプトカー「PIVO」(ピボ)を前にすると、未来映画を見ているようだ。透明なボールのような車体だけでなく、キャビンが回転するためバックをしなくて済み、家庭用コンセントで、15分で充電できる電気自動車だ。そんな夢のような車だが、日産自動車デザイナーの井上真人氏によれば「バッテリーのコストが下がれば2010年ぐらいには量産も可能になる」と語る。コンセプトカーを眺めて夢を膨らませるのはこのモーターショーの醍醐味かもしれない。
swissinfo、 屋山明乃(ややまあけの)
– 2006年、第76回ジュネーブモーターショーは3月2日から12日まで国際見本市会場パレクスポ(Palexpo)で開催中。
– 月曜〜金曜日は10〜20時まで。土、日曜日は9〜19時まで。入場料14フラン(約1200円)。
– 欧州3大モーターショーの一つ、ジュネーブモーターショーでは世界30カ国、260社が出展し、今年も約75万人の来訪者を見込んでいる。
– 今年は欧州初登場や世界初公開となる約140車種の乗用車が一般公開される。
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