「香り」をとらえる面白さ 調香師ウルスラ・ヴァンデル氏

香りほのかに大人の女を演出する香水を作らせたら、右に出るものはいない。人気絶頂の調香師ウルスラ・ヴァンデル氏。
これまでに、高級ブランド・ニノセルッティを始め、スーパーモデルのシンディー・クロフォードやナオミ・キャンベルのために香水を作り出してきた。
調香師は香水の香りを調合する技術者で、一般にパフューマーと呼ばれる。多くのパフューマーが香料メーカーに所属するように、ヴァンデル氏もスイスの香料大手ジボダン社(本社・ジュネーブ)に身を置く。
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ヴァンデル氏が世に出した香水で一番のヒット作品は「ヒューゴウーマン」(97年)。独アパレル大手ヒューゴ・ボス社の香水シリーズで、軍用水筒のようなボトルに赤でプリントされたヒューゴのロゴマークが有名だ。
「ちょうど水のような香水を目指していた時でね。当時はまだ珍しくて、フルーツとスパイスのフレッシュな香りの香水に仕上がったの」
「香水が売れるのはコーディネートが完璧にきまったとき。宣伝のやり方もボトルも、その香水につながりを持たせれば、成功する下地はすでに出来上がっているわ」と成功の秘訣を話す。
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好奇心旺盛で、「どこにでも鼻先を近づける」子どもだった。学校では科学を専攻。次に写真にはまった。「成り行き任せなのよ。この2つがうまく組み合わさって、たまたまジボダン社の調香師養成学校に入っただけなの」と笑う。
1年目は基礎訓練。3,000種類もの香料素材を嗅いで、様々な香りを識別する嗅覚を養った。2年目はイミテーション能力を育成。
「絵を描くのと一緒。絵描きは巨匠の描いた絵を真似ることでその過程を学ぶでしょ。私たちも有名なブランド品を真似して作っていくの。3年目になって自分の香水を作ったわ。そうやって自分のスタイルを確立していくのよ」
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匂いの記憶は見えないだけに、調香師は製作に携わらない時でも日頃から香料を嗅ぎ、嗅覚を磨く。だが、そんなに難しいことではなく、誰もが調香師になれる可能性がある、とヴァンデル氏は語る。
「大事なことは、いつも何かを面白がる遊び心を持つこと、忍耐強くあること」と話す。
「サンプルを作って、何度も失敗を繰り返すでしょ。そうね、400〜600回位かしら。そうすると、これだ、と思う香りをとらえる瞬間があるのよ。必ず何かを感じるの」
サンプル作りで連日帰宅が遅くなることもある。「でもね、それだけの価値があるのよ」と笑う。「夜遅くまでサンプルを作って翌朝にオフィスに足を踏み入れるでしょ。一つ一つサンプルを嗅いで、何とも言えない香りに包まれるのがこの仕事の一番の楽しみだわ」
スイス国際放送 ロバート・ブルックス 安達聡子(あだちさとこ)意訳
調香師:
香水の香りを調合する技術者で、一般にパフューマーと呼ばれる。
パフューマーのほとんどは香料メーカーに所属。香料メーカーと高級ブランド会社との取引で香水製作の仕事をする。
香水の語源はラテン語で「煙を通して」という意味。

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