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IWC年次総会 合意は1年間凍結

日本、ノルウェー、アイスランドだけで年間1500頭のクジラが捕獲されている Keystone

IWCは6月23日、2日間にわたる非公式協議の結果、決裂を避け88カ国による総会を再開させたものの、「日本、アイスランドなど捕鯨推進派の4カ国と非捕鯨国の間の溝が埋まらない」として実質的な合意を1年後に先送りした。

スイスの交渉団も非公式協議に参加し、全体の捕鯨頭数を削減する議長案が受け入れられなかったことは、「クジラの種の持続性」という観点から大きなダメージだとコメントした。

議論の行き詰まり

  モロッコのアガディールで6月21日から開催された国際捕鯨委員会 ( IWC ) では、1986年に決定した商業捕鯨モラトリアム ( 暫定的停止) に代わる議長案として、調査捕鯨の枠組みを撤廃し、南極海、北太平洋など地域別に捕獲頭数を管理し、捕鯨を徐々に減らしていく案が提出された。これは、捕鯨頭数を大幅に削減させるが、沿岸捕鯨などの商業捕鯨を再開させるものだ。

 しかし、IWCの議長を務めるアントニー・リバプール副議長は23日
「根本的な立場が、非常に異なっている」として、今回の議長案に合意が得られないことを表明した。

 「ほぼ3年間にわたる討議の結果、議論は再び行き詰ってしまった」
 と、アメリカの主席交渉代表官モニカ・メディナ氏も落胆の色を見せた。

 数カ国の交渉官たちによれば、調査を目的に主に捕鯨を続けている日本が、捕獲頭数は減らすものの南極海での捕鯨を続けると主張したことに、オールトラリアなどが反対したという。

クジラ全体を保護する管理システム

 一方、連邦経済省獣医局 ( BVET/OVF ) の広報担当官マルセル・ファルク氏も1年間の交渉凍結に落胆し
 「クジラにとって非常に悪いニュースだ。モラトリアムは継続されるが、今のままでは非常に多くのクジラが捕獲され続ける」
 とコメントした。

 「自然資源であるクジラの種の持続性」を最も重視し、多様な種の絶滅を避ける立場のスイスは、今回の交渉で
 「絶滅の危機にないクジラの沿岸捕鯨のモラトリアムを徐々に取り除き、一方で絶滅の危機にあるものを含むすべて種類のクジラの商業的捕鯨を禁止するべきだ」
 と主張した。

 「もしクジラ全体を保護する管理システムを国際的に受け入れれば、現行の商業用捕獲の暫定的停止であるモラトリアムは撤廃できる」
 とファルク氏は話す。なぜなら「モラトリアム」を多くの人が「捕鯨禁止」と勘違いしているが、それは事実ではなくモラトリアムはクジラ全体を保護していないからだという。

外電、swissinfo.ch

「自然資源であるクジラの種の持続性」を重視。
捕鯨管理の基準は最新の科学的なデータを元にして、数や捕鯨方法を決める。 
国際捕鯨委員会 ( IWC ) が提案する先住民生存捕鯨を支持する。
ノルウエーやアイスランドが主張する一方的な商業捕鯨は認めない。
日本の調査捕鯨については、可能な限り殺さなくともよい方法を支持。
南極海での調査捕鯨は禁止とする。
太平洋で捕鯨の対象となる種類を増やさない。
クジラの管理対象をこれまで34種類から90種類に広げる。
環境汚染を配慮した捕鯨を進める。
保護地域については、科学的データに基づき意味があると判断された場合に設定する。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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