スイスの1−6月の機械受注、輸出好調で増加
スイスの1-6月の機械受注は前年同期比11.7%増加した。アジアを中心に海外需要が増え、国内の受注減を打ち消して全体を押し上げた形となっている。
スイス機械産業協会(通称スイスメム)が8月25日明らかにした。機械受注額は明らかにしていない。
ただスイスメムは業界の今後の見通しについて慎重な見方を崩していない。原油高が長期化すれば、消費が伸び悩み、企業も機械購入などの設備投資を抑制しかねないためだ。海外勢からの追い上げで競争も激化しており、業界全体のリストラの手綱は緩みそうにない。
輸出好調
機械受注は国内の機械メーカー290社が海外も含む各業界から受注した生産設備用機械の受注を集計した統計。スイスメムによると、1-6月の海外からの受注は前年同期比17.2%増で、国内受注の同3.4%減を大幅に上回った。
スイスでは、機械産業は国全体の輸出額の40%以上を占める主力な輸出産業となっており、1-6月の機械輸出総額は290億フラン(約2兆4,950億円)にのぼる。輸出実績を地域別に見ると、アジア向けが26.9%増と好調で、主力市場の欧州向けも6.5%増加した。
スイスメムは、昨年の不調から転じて、今年初めから回復局面に入ったと報告。この回復傾向は下半期も続くと予測している。
足元で景気回復が続く一方、スイスメムは原油高で原料コストが上昇している現状を踏まえ、「世界経済に減速感が出てくる可能性がある」と慎重な見方を崩していない。このため、景気回復下でも、先行きは労働者にとって厳しいものになりそうだ。
厳しい先行き
ドイツを代表する大手電機メーカーのジーメンスや、大手自動車メーカーのダイムラー・クライスラーが今年半ば、一部事業所で週35時間労働から週40時間制を導入して注目を集めたが、スイスでも最近、労働時間延長の是非をめぐる議論が活発化している。
現在のところ、労働組合側は労働時間延長を受け入れる姿勢を見せていない。スイスは他の欧州諸国と比べて、労働時間が長いためだ。
一方、スイスメムのヨハン・シュナイダー・アンマン会長は「短期間契約でプロジェクトごとに必要な労働力を投入できるような柔軟性が必要」と訴える。雇用の海外流出に歯止めをかけ、国内の労働力に競争力をつけるためには、労組側の譲歩が必要との考えだ。
「いまや大企業だけでなく、中堅クラスも海外へ生産ラインを移行している。スイスは雇用を生み出しているのではなく、失っているという厳しい現実に目を向けるべきだ」と同会長は話している。
スイス国際放送、外電 安達聡子(あだちさとこ)
スイスメムによると、1-6月の機械受注は前年同期比11.7%増加した。
売り上げも同7%増。輸出額は290億フラン(2兆4950億円)で同10.6%増えた。
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