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コロナ時代の多国間外交のあり方とは

2020年11月23日にジュネーブのパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)で開かれたアフガニスタンに関する会議の様子 UN / Jess Hoffman

「国際都市ジュネーブ」は、シリア、リビア、イエメンなどの紛争国の和平交渉に参加する代表団の一部を、昨年3月以降も引き続き受け入れてきた。だが外交活動の多くがオンラインで行われるようになった今、このネット外交にはどれほどの価値があるのだろうか?

このコンテンツは 2021/03/03 08:30

新型コロナウイルスの感染拡大による公衆衛生危機は、世界の外交にどのような影響を残すのだろうか?そして、デジタルプラットフォームが集中的に使用されるようになったことで、ジュネーブやウィーン、ニューヨークなどの国際外交の中心地には、どのような未来が待ち受けているのだろうか?

デジタルの魔法

コロナ危機がもたらした重大な結果の一つは、ほとんどの外交機関や組織が、渡航制限や集会禁止に従うためにデジタルツールを一斉に使用し始めたことだろう。

国際問題の専門家で、ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)で歴史学を教えるダヴィッド・ロドーニョ教授は、コロナ危機で「外交官はこれまでに経験したことのない働き方をせざるを得なくなった」と指摘。「デジタルの世界は、意志があれば国際協力を強化し発展させることのできる多くの選択肢を提供してきた」と話す。

パンデミックが始まってすぐに国際機関が動き出したことで、デジタルへの移行が可能になった。「国連ジュネーブ本部は、遠隔で会議や会見を開くためのデジタルプラットフォームを開発し、危機に対処するために迅速に行動を起こした」と、ジュネーブの国連スイス政府代表部のヨルグ・ラウバー大使はswissinfo.chに語る。

今日、外国の代表団は自国を離れることなく国際討論や会議に参加している。ジュネーブの国連本部の情報筋によると、国連は2020年3~12月末の間に、インターネットを介して1200もの重要な国際会議を開いたという。そうして国際外交の基準が大きく変わった。

だがそのような中でも、「国際機関は、どのプラットフォームを採用するかという選択や、これまでと同じように国連の多言語併用の方針に対応する会議中の同時通訳サービスの提供など、困難や技術的問題に直面した」とラウバー氏は話す。

ジュネーブに拠点を置く国際機関と同じく、在外公館にも同じ制限が適用されるため、国連スイス政府代表部もホスト国、つまりスイスの感染対策措置を守る必要がある。

「政府代表部では対人業務を中断することはなかったが、本部には最低限の人数しか配置されなかった。スタッフの大半は今でも在宅勤務を続けている」とラウバー氏は説明する。

これは、政府代表部が二重の機能を持つ特別な機関であることに起因するのは言うまでもない。国連と国際機関でスイスの利益と価値観を代表するための機関でありながら、国際機関を受け入れているスイスの代表として、各機関のニーズが満たされていることに配慮しなければならない。

スイス大使、ラウバー氏にとって、「重要なのは国連をはじめとする国際機関の現場活動であり、それが中断されなかったこと」だという。中断するどころか、国連の執行機関はパンデミックの直接・間接的な影響を受けながらも、柔軟性、耐久性、回復力を発揮してきたという。

対面交渉の重要性

外交活動の効率化や透明性の点では、概してデジタルツールがもたらすプラスの影響に誰もが同意する。長い間世論が排除されてきた分野に、より民主的な側面をもたらしてもくれる。

だが現場での経験に基づき、デジタルツールの限界を指摘する外交官もいる。長期的な決定を下す場合や、特に平和について議論したり、人道的危機に直面して複数の代表団間で交渉を開始しなければならない場合には、すぐに限界に達してしまうという。

元国連シリア人道問題担当事務次長を務めた、ノルウェー難民評議会(NRC)のヤン・エグランド事務局長は、「直接対話は、紛争の当事者を一つにまとめるための最良の方法だった。例えば、イスラエルとパレスチナ解放機構との間では、1990年代初めのオスロ協定の合意に達するまでに、ノルウェーで15回もの秘密会談が行われなければならなかった」と振り返る。

「私がシリア問題の顧問をしていた時も、民間人への人道支援供給を容易にするため、ジュネーブでの交渉中に紛争当事者と何度も会って話し合った」と話す。「このような協議に重要な関係者が出席したおかげで、人道的な支援物資へのアクセスや避難、現地協定の合意に大きな進展が見られた。戦争状態にある双方やその代表者が実際に顔を合わせることは、大きな象徴的意味を持つ行為であり、それ自体が善意を示すものだ」

皆が同じテーブルに

では、パンデミックが終息すれば、多国間外交はまた従来のやり方に戻るのだろうか?エグランド氏は、「ZoomやMicrosoft Teamsなどの主要なプラットフォームやウェビナーは今後も使われ続けるかもしれないが、紛争解決のための外交活動がこれまでと別の道を歩むことはないだろう。当事者を一堂に集めることが重要であり、できれば皆で同じテーブルを囲むことが理想的だ」と述べる。

国連欧州経済委員会・木材委員会(ECE Timber Committee)のパオラ・デダ会長は「オンライン外交は機能するか?」と題する記事で、似たような見解を述べている。「デジタル技術は、情報を共有したり、人々の生活に関心と関連性の高い話題を扱ったりするセッションでは非常に有益だ」としながらも、「だが意思決定の場合は別の話であり、政府間プロセスで交渉や代表者間の意見交換が必要な場合には、オンライン会議は外交官の仕事を楽にするものではないようだ」と言う。

一方ラウバー氏は、テレビ会議の技術はパンデミックをきっかけに誕生したものではないことに注意を促す。「過去にも、ジュネーブまで来られない人々の参加を促進するために使われてきた。コロナ危機でその使用度が高くなり、確かに大きな変化があった。だが最も伝統的な外交活動は依然として重要であり、テクノロジーに取って代わられるものではないということを念頭に置くべきだ」

「昔の電話がそうであったように、デジタル技術は外交官が現場で行う仕事に取って代わることはできない。また、国際都市ジュネーブのような、多国間外交の拠点の代わりになることもない。ジュネーブは、複数の機関が同時に行う横断的な作業の、理想的な場所であり続けることだろう。そして、それらのことが残るだけではなく、スイスはその経験を世界の他の地域に提供しようと力を入れている」

過去数カ月でデジタルツールの有用性が示されてきたにもかかわらず、外交そして他の分野でも、人と人が直接会うことに取って代わるものはないことは明らかのようだ。

(仏語からの翻訳・由比かおり)

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