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スイスの視点で振り返る日本関連の記事

スイスのメディアが報じた日本のニュース

天皇、雅子皇后、愛子さま
雅子さまは9日に60歳の誕生日を迎えられました。一部のスイスメディアは、雅子さまが公に姿を現す機会が増えたのとともに、皇位継承をめぐる問題が再浮上しているとの解説記事を配信しました。 Keystone

スイスの主要報道機関が先週(12月4日〜10日)伝えた日本関連のニュースから、4件をピックアップ。要約して紹介します。

【スイスで報道されたトピック】

  • クマによる襲撃事件が過去最多(12/4)
  • オスプレイ墜落で米兵8人が死亡(12/5)
  • タクシー運転手がハトを轢き逮捕(12/5)
  • ティックトッカーが日本で家を無料で入手する方法を紹介(12/6)
  • 日銀の引き締め観測で金利上昇(12/7)
  • 牛糞からロケット燃料を開発(12/7)
  • 函館で魚が大量死(12/7)
  • オスプレイ飛行禁止に(12/7)
  • 7~9月期GDP改定値、速報から下方修正(12/7)
  • 12日に五ノ井さんへの性暴力めぐる判決(12/9)
  • 元慰安婦への賠償命じる韓国裁判所判決が確定(12/9)
  • 新型核融合炉、日本で運転準備完了(12/9)
  • 雅子さま60歳に 女性蔑視の皇室典範は変わるか?(12/9)

この中から今回は①日銀の引き締め観測で金利上昇②7~9月期GDP改定値が下方修正③牛糞からロケット燃料を開発④女性蔑視の皇室典範は変わるか?―をご紹介します。

金融市場で引き締め観測

日銀の植田和男総裁が7日の参院財政金融委員会で、現在の金融緩和策の運営をめぐり「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言。また岸田文雄首相と面会し金融政策問題を協議したことを受け、市場では日銀が近く金融政策を引き締めるとの憶測が広がり、金利上昇、株価下落、円高・ドル安をもたらしました。

スイスの経済系ウェブメディアcash.chは「12月19日に予定される金融政策決定会合を前に、日銀が長年にわたるマイナス金利を解除するという市場の想定確率は50%近くまで上昇している」と解説。ただし日銀は国内の物価上昇は輸入インフレによる一時的な動きにすぎず、持続的な物価上昇には賃上げが必要だとみています。このため実際にマイナス金利の解除など引き締めに動くのは年明けの春闘の結果を見極めてからとの見方が大勢です。

cash.chは「次回の決定会合に対する期待は行き過ぎだ」との独デカ銀行のコメントを紹介しました。(出典:cash.ch外部リンク/ドイツ語)

日本経済、想定以上に減速

内閣府は8日、7~9月期の国内総生産(GDP)改定値が実質で前期比0.7%減少したと発表しました。電気通信事業者スイスコムのニュースサイトblue Newsは「コロナ禍の2021年以降で最大の減少幅になった」として、個人消費の落ち込みや在庫の積み上がりが背景にあると解説しました。

記事は、日銀の金融政策転換への思惑が広がる中で景気減速が明らかになったことに注目。「政策変更へのわずかな手がかりでも大きな影響を与える」と、敏感になっている金融市場の事情を描きました。(出典:blue News外部リンク/ドイツ語)

宇宙を征服する牛糞

ロケット開発のインターステラテクノロジズ(IST、北海道大樹町)が7日、小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」のエンジン「COSMOS」の燃焼器単体試験に成功したと発表。スイスでは仏AFP通信の記事「宇宙を征服する牛糞」が転載されたほか、無料紙20min.がきょう解説記事を配信しました。

20min.は「日本の宇宙産業は大きな節目を迎えた」と評価。バイオメタン燃料はバスや住宅暖房などには世界中で利用されていますが、ロケット燃料に使用されるのは世界で初めてです。宇宙産業の持続可能性にとってはもちろん、「資源に乏しい日本にとって重要な意味を持つ可能性がある」と解説しました。

AFP通信の記事も牛糞燃料の持続可能性を評価する一方、H3ロケットやJAXAの「イプシロン6」など打ち上げ失敗が続き、「日本の航空宇宙部門は近年数多くの問題に悩まされている」点を指摘しました。(出典: blue News外部リンク/フランス語、20min.外部リンク/ドイツ語)

ドイツ人皇室専門家に聞く皇位継承

皇后雅子さまが9日、60歳の誕生日を迎えました。スイスの通信社Keystone-SDAは同日、ドイツの通信社DPAの記事「雅子さまが60歳に 女性蔑視の皇室典範は変わるのか?」を転載。ポータルサイトgmx.chなどに掲載されました。

DPAは皇室専門家のドイツ人日本学者エルンスト・ロコヴァント外部リンク氏に取材。米ハーバード大卒で元外交官の雅子さまが皇室では「部外者」とされ、皇位継承者出産への強い圧力を受けてきたと指摘しました。「コロナ禍が終わり、娘(愛子さま)も成長した今、人々の雰囲気は変わりつつある」なか、愛子さま誕生以来何度も議論されてきたが、今日に至るまで答えが出ていない「女性蔑視との見方もある皇室典範を改正すべきか否か」と言う問題が再び国民の意識に浮上しつつある、としました。

性別に関係なく長子が皇位に就けるよう皇室典範が改正されれば、子孫の問題は解決されます。記事は6~18世紀にかけて日本には8人の女性君主がいたため、それ自体は珍しいことではないと解説。ロコヴァント氏の「愛子さまは理想的な君主になるだろう」とのコメントを引用し、日本人の間で次期皇后としての期待が高まっていると伝えました。そして「愛子さまは準備ができているだろう。母である雅子妃にとっては、遅きに失した償いになる」と結びました。(出典:gmx.ch外部リンク/ドイツ語)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「ワインの『指紋』から産地を特定 ジュネーブ大」(記事/日本語)でした。他に「スイスで浮上する原発の『新設シナリオ』」(記事/日本語)、「New Swiss train schedule boosts access to ski resorts」(記事/英語)も良く読まれました。

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今日のテーマ:銀行が、未来の経済学者や金融学者を養成する大学に資金を提供するのは正しいこと?

これは12月3日に配信した記事「大学への出資は社会奉仕か、金銭欲か?」に関する問いかけです。フランス語圏の読者からは「大学の上級職の任命にあたり、国家が新自由主義者を優遇すれば問題が生じる」といった指摘が出ています。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は12月18日(月)に掲載予定です。

校正:大野瑠衣子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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