スイス東部・グラウビュンデン州にあるツァーヴライラ湖ダム。スイスでは水力発電が重要なエネルギー供給源になっている
Keystone
国際エネルギー機関(IEA)は8日発表したスイスのエネルギー政策報告書で、スイスは脱原発計画により低炭素社会を維持しにくくなると指摘した。欧州連合(EU)と交渉中の枠組み条約において、EU電力市場に加わる方向で交渉を進めるべきだと推奨した。
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報告書は、スイスが2017年に決めた脱原発計画はエネルギー安全保障のうえで課題があると指摘。スイスの原子力発電はエネルギー供給の3割超を占め、水力発電(6割)に次ぐ重要な供給源だ。
このためIEAはEUの電力市場に参入すべくEUと交渉するよう推奨。電力市場への参入は、現在EUとスイスの間で交渉中の枠組み条約で争点の1つとなっている。交渉が成立すれば「スイス・EUの双方にとって柔軟な電力供給が実現する」と指摘した。
≫スイスの脱原発計画への歩み
≫EUと交渉中の枠組み条約、争点は?
特に冬にダムの水位が下がると、水力発電量が下がり、近隣諸国から電力を輸入せざるを得なくなると予測した。
「ほぼ炭素ゼロ」
報告書は、スイスはIEA加盟の30カ国中最も化石燃料発電への依存度が小さく、「電力分野はほぼ炭素ゼロだ」と称賛した。
エネルギー効率が大幅に向上し、2016年は00年に比べ人口が15%、経済は30%それぞれ拡大したにも関わらず、エネルギー消費量は同水準を維持した。
特に建物のエネルギー効率が改善。エネルギー関連研究に投入される公的資金が増えたことも寄与した。
一方、気候変動に関する政府間パネル(IPCC、本部・ジュネーブ)は同日、早ければ2030年にも世界の平均気温が産業革命前より1.5度上昇すると警告。スイスの二酸化炭素排出量の削減目標は「今までの傾向に照らすと野心的」と指摘した。
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