犠牲者のために祈りを捧げる日本の自衛隊員。2011年3月20日撮影
Keystone / Shuji Kajiyama
2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原発の事故当時、ドリス・ロイトハルト氏はスイスのエネルギー相を務めていた。同氏はスイス紙のインタビューで10年前を振り返り、連邦内閣にいた4人の女性は原発の段階的廃止を決めるうえで重要な役割を果たしたと語った。
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2018年末に連邦内閣を退任したロイトハルト氏は、スイス・フランス語圏の日刊紙ル・タンに4日付で掲載されたインタビュー外部リンクで在任期間を振り返り、原子力エネルギーを放棄するよう右派の男性閣僚を説得するのに苦労したと話した。
「女性は一般的に、環境や国民がさらされているリスクにより敏感だと思う。安全性が問題となる時、少し余分にコストが掛かっても、女性は進んで新しい解決策に目を向けようとする。女性閣僚らは、新しいエネルギーミックスを選ぶことができると一早く確信していた」(ロイトハルト氏)
当時の他の3人の女性閣僚は、左派の社会民主党のミシュリン・カルミ・レ氏とシモネッタ・ソマルーガ氏、中道右派の市民民主党のエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプフ氏だった。
中道右派のキリスト教民主党のロイトハルト氏は、福島第一原発事故の規模をすぐには認識していなかったと認めた。
「事故はスイスから遠く離れた国で起きていて、日本ならこの種の出来事を真剣かつ専門的に対処するだろう、というのが私の最初の反応だった。それが大災害だとはすぐには分からなかった」とル・タン紙に語った。
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次第に災害の深刻さが明らかになり、スイスは行動を起こす必要があると判断。11年3月14日、スイス政府は原発建設計画の一時停止(モラトリアム)を命じた。
「スイスは当時、最も古い原発3基を最新の原発に置き換える予定だったため、早急に決断する必要があった。私たちは新たにリスク分析を行い、スイスのエネルギー政策として原子力発電という選択肢を残せるかどうか検討しなければならなかった。そして、この新世代発電所の建設を申請していたスイスの発電所のオーナーらに(建設計画の一時停止を)伝えた。政府の決定はオーナーらに多大な損害を与える可能性があったため、つらい時間だった。正直なところ、私は2晩の間あまりよく眠れなかった」(ロイトハルト氏)
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そうしてスイスは11年、国内総発電量の約3分の1を供給していた原子力発電からの段階的脱却を決定した。
スイスの有権者は17年の国民投票で、原発の新設禁止やエネルギー消費量の削減によって再生可能エネルギーの促進を目指す新エネルギー法を支持。19年12月には、ベルン近郊のミューレベルク原発が稼働開始から47年を経て、永久に運転を終了した。解体が決まっているスイスの原発5基のうち、最初の廃炉となった。
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(英語からの翻訳・江藤真理)
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