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核融合プラントが30年以内に実用化へ

核融合炉の内部の温度は摂氏1億度にもなる

核融合の実用化は複雑で膨大な研究開発費を必要とするが、この分野の科学者は次世代が来る前に核融合反応の強大なエネルギーを解明できるようになると確信している。

このコンテンツは 2008/10/24 15:26

10月13日ジュネーブで行われたIAEA核融合エネルギー会議の開会時に、国際原子力機関 ( IAEA ) とイーター国際核融合エネルギー機構 ( イーター機構 ) が 協力協定に署名した。

超大型国際プロジェクト

「イーターは世界有数の重要な科学実験です」
とIAEA事務局次長のユーリ・ソコロフ氏は述べた。ラテン語で「道」を意味するイーター ( ITER ) は、現在南フランスのカダラッシュ ( Cadarache ) に建設中の核融合実験炉だ。太陽や水素爆弾のエネルギー源である核融合反応を用いて、地球上で利用可能なエネルギーを生産するという目標に向けて、核融合反応を制御できるかどうか実証するという実用的な目標を持っている。

高温と強力な磁気を用いて重水素と三重水素 (トリチウム ) の原子を融合させると、ヘリウムと高エネルギーの中性子が生まれ、強大なエネルギーが発生する。エネルギーが放出される分、反応後の物質は軽くなる。核分裂と違って病院の放射性廃棄物よりも低い、非常に低レベルの放射性廃棄物が後に残るにすぎないといわれる。

2007年10月に正式に設立されたイーター機構は、過去何十年間の研究をすべて統合し、2018年までにイーターを稼働させることを計画している。もし稼動に成功し、その技術の実用化が証明されれば、イータープロジェクトの参加国は2040年に「デモ ( DEMO ) 」と称する試験的な商業炉を建設する予定だ。そして最終段階では、核融合技術を世界中に広める計画を持っている。

カダラッシュのイーターの建設は、アメリカ、欧州連合 ( EU ) 、日本、中国、インド、ロシア、韓国が共同で行っている。建設費は50億ドル ( 約5000億円 ) 、20年間の運営費用が50億ドル ( 約5000億円 )、業務委託料が10億ドル ( 約1000億円 ) となり、約半分はEUが支払う。

しかし、イーターの設計を修正し、最新の科学的なデータを考慮すると、建設費は当初の見積もりより25%から35%以上増加すると技術者は考えている。新しい見積もりの検討を依頼された独立系の専門家グループは、2008年末までに報告を提出することになっている。

金銭的な価値

イーターはお金のムダではないとソコロフ氏は反論する。
「エネルギーの需要は非常に大きく、入手可能なエネルギー資源すべてを開発しなければなりません」
核融合によって、将来われわれは素晴らしいエネルギーを入手できるようになるとイーターのコミュニケーション・ディレクター、ニール・カルダー氏は語る。
「中国、インド、アジアそしてアフリカの人々が膨大な量のエネルギーを必要とするようになるでしょう。核融合は、機能するとすでに判明しているエネルギー生成法です。生産されるエネルギーは二酸化炭素 ( CO2 ) も出さず、ごくわずかな廃棄物を排出するだけとクリーンな上、生産に必要な燃料は無限にあります。浴槽一杯分の水とラップトップコンピューターに入っているようなバッテリー1つでヨーロッパの1家族が一生に必要とする量のエネルギーを供給することができるのです」

一方、グリーンピースのような環境保護団体は、イータープロジェクトを「高くつき、疑わしい上、危険」と烙印を押した。

核融合エネルギーがどれだけ早く実用化されるかは、世界がどれだけ核融合エネルギーを求めているかによるとカルダー氏は付け加えた。
「例えばロスアラモス(原子爆弾)プロジェクトには無制限の資金が投入され、10万人が取り組み3年で達成されました。月に人間を送り込んだアポロプロジェクトも同様です。もし世界が核融合を求めていて、資金をつぎ込むならば50年以内には確実に達成できるでしょう」

スイスのサポート

スイスはイーターのプロジェクトの直接的な参加国ではないが、密接に関わっている。スイスは、EUの第7研究プログラム ( 2007年から2013年 ) に対するサポートの一環としてヨーロッパ核融合に800万スイスフラン ( 約7億1500万円 ) の財政的援助をしている。

9月にスイス国民議会 ( 下院 ) はこのイニシアチブに全面的なサポートを与えることを表明した。全州議会 ( 上院 ) はイータープロジェクトに対し、まもなく決議することになっている。

スイスの約100人の技術者がイーター関連の核融合プロジェクトに過去15年間携わってきた。イータープロジェクトには、ローザンヌの連邦工科大学 ( ETHL ) のプラズマ物理研究所 ( CRPP ) とフィリゲン( Villigen ) のパウル・シェーラー研究所、そしてバーゼル大学物理研究所も関与している。水素原子を加熱するための電子チューブ、計測機器、超電導コイル、および絶え間ない中性子の激しい爆発に耐えられる素材の製造にスイスの技術が活用される。

過去何十年間という時間と多額の費用がこの研究に費やされたが、CRPPの所長ミン・クァン・トラン氏は、核融合エネルギーは確実に手の届くところにあると言う。
「30年以内にDEMO融合炉が電気エネルギーを生産し、それが電線網に流れるようになると確信しています」

swissinfo、サイモン・ブラッドレー ジュネーブにて 笠原浩美 ( かさはら ひろみ )

イーター

核融合を実現するには、原子を摂氏1億度近くまで加熱しなければならない。この温度でプラズマと呼ばれる素粒子の「スープ」状態が生じる。

核融合に必要な燃料は重水素と三重水素 ( トリチウム) の原子で、これらは地球上にふんだんにある水やリチウムから生成することができる。

放射能が何千年も残る核分裂の廃棄物と異なり、核融合で生じた廃棄物の放射能は100年から200年後に消滅すると考えられている。

イーター機構 ( ITER ) は2007年10月24日に設立された国際機関。中国、EU、インド、日本、韓国、ロシア、アメリカがこのプロジェクトに参加しており、経費はこれらの7つのメンバー国が共同で負担する。

イーターの主要目標は、50メガワットの電力の入力によって500メガワットの核融合エネルギーを300秒から500秒間出力することだ。

イーターは現在南フランスのカダラッシュ ( Cadarache ) の180ヘクタールの敷地に建設中。イーターの高さは60メートルで、重さは旅客機程度。現在約300人がカダラッシュのイーターで勤務しており、イータープロジェクトに携わっている研究者は世界中に約2000人いる。

イーターは2018年から始動する予定。商業用炉が稼働するのは2040年以降と見られる。

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