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パリ会議、地球温暖化対策の資金調達も焦点

ペルーのアマゾン川流域における洪水対策は、「緑の気候基金(GCF)」から資金提供を受ける最初のプロジェクトの一つだ AFP

パリで今月30日から開催される、地球温暖化対策を話し合う国際会議「COP21」。そこでは、政治的交渉だけではなく、気候変動を抑制する技術のための財源をどう確保するかも、今後の対策に大きく影響を与えてくる。

 国連が主導する気候変動関連交渉では、温暖化対策プロジェクトのための資金調達がますます重視されるようになっている。パリの国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)外部リンクの前に、年間目標額の1千億ドル(約12兆3千億円)を集めようと各国の外交官たちは奔走している。

 その達成額は、まだ半分ほどだ。経済協力開発機構(OECD)の推計によると、過去2年間の約束支援額は平均570億ドル。途上国側は、援助資金なしではクリーンなエネルギーや輸送手段に投資することも、気温上昇がもたらしうる破壊的な影響に備えることもできないと主張している。

気温の上昇

欧州の気候専門家で構成される独立科学グループ「クライメート・アクション・トラッカー(CAT)」が10月に発表した報告書では、各国が表明している温暖化対策が全て実施されたとしても、地球の気温は2.7℃上昇すると予測されている。

CATによると、昨年の国連気候変動リマ会議での分析では3.1℃の上昇が予測されていたため、それに比べると改善している。

 気候データウェブサイトの「カーボン・ブリーフ(Carbon Brief外部リンク外部リンク」によると、これまでに提出された各国の温暖化対策目標(国連用語ではINDC/国別目標案とも呼ばれる)を今後15年間で達成するには、貧しい国々へ数兆ドルの支援が必要だという。

「賢い支出」

 しかし、温暖化対策資金のメインとなる「緑の気候基金(GCF)」への拠出の確約を各国から取りつけるのは容易ではない。

 国際気候・生物多様性ファイナンスを専門とするスイス連邦環境省顧問のステファン・マルコ・シュワガー氏は、緑の気候基金は関係者の多くが期待していたほど速くは展開していないと話す。

 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は昨年から、基金への拠出約束104億ドルを正式な合意に組み込むために多大な努力をしてきた。スイスは、15〜18年の間に、3回に分け1億ドルを拠出すると約束している。「いわば貯金箱にお金がある今、そのお金を迅速かつ賢く、影響力のある形でどう使っていくかが焦点となる」(シュワガー氏)

 また、昨年のリマ会議で詳細に話し合われたテーマである、気候変動ファイナンスの定義がまだ十分に明確になっていないことや、基金からの支払いに腐敗が絡む可能性のあることに、資金提供者である先進国が「いくらかの懸念」を持っていることも指摘する。

民間部門

 ところで、気候変動に立ち向かうための資金調達は、民間からの投資に期待されている。国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のクリスティアナ・フィゲレス事務局長は昨年のCOP会議で、今後15年間でクリーンテクノロジーとインフラに900億ドルが投資され、その大半が民間投資によるものだと予測している。

 国際エネルギー機関(IEA)外部リンクも、気温上昇を抑制するためのクリーンエネルギーに、20年までに約5兆ドルが使われるだろうと考えている。

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 このような数字は途方もない額に思えるかもしれないが、経済界のリーダーたちは動じないようだ。

 検査・検証を専門とするSGS社で企業責任監査の副部長を務めるダニエル・リュフェナハト氏は、民間企業はすでに大きく貢献しているが、今後は政府が民間と協力していく必要があると話す。「国が作る計画は、企業がもたらす技術やイノベーションにかかっているからだ」

 銀行や民間企業および州政府の支援を受けている団体「サステナブル・ファイナンス・ジュネーブ(Sustainable Finance Geneva)」のベルトラン・ガコン会長は、タバコの販売には気候変動対策よりも多くのお金が使われていることを例に挙げ、気候変動ファイナンスが現状に即していなければならないと言う。

 「調達目標額は非現実的ではない。民間部門はすでに、気候変動対策に必要な資金の3分の2から4分の3を提供している。金融市場はやるべきことをしている」

グリーンボンド

 グリーンボンドとは、気候変動問題に取り組むプロジェクトの資金調達のために発行される債券のことだ。昨年以来、グリーンボンド市場は急成長を見せ、新たな発行額は400億ドル以上に達している。確定利付債であるグリーンボンドは、再生可能エネルギーの発電所やエネルギー効率の向上、環境に優しい輸送技術に至るまで、さまざまなプロジェクトの財源となっている。

 金融市場全体から見ると、グリーンボンドはまだ「大海の一滴」にすぎないが、気候変動対策の資金が「かなりの額になり始めている」とガコン氏は話す。

 「グリーンボンドは、民間と公共部門(政府や年金基金など)の両方が投資できる、初めてのインパクト債券だ」とガコン。世界銀行が発行を始めたグリーンボンドだが今では、投資家は単に誰が発行主かということだけではなく、そのお金の使われ方にも注意を向けるようになった。

 銀行大手クレディ・スイスとチューリヒ保険はいずれも、グリーンボンド市場の拡大に貢献している。チューリヒ保険の責任投資部長が最近になり、化石燃料製造企業のグリーンボンドの購入もありうると発言し、市場でグリーン投資の定義そのものに対する疑念が再燃したが、同社は昨年、グリーンボンドに20億ドルの投資を決定している。

インパクト投資

 ジュネーブに本社を置く投資管理会社「クアディア(Quadia)」は、グリーンファイナンスのもう1つの分野である「インパクト投資」を専門とする。こういった会社はスイスで増加傾向にある。インパクト投資とは、資金調達が困難だと思われる革新的なビジネスに資金を提供するものだ。

 プライベートバンクのロンバー・オディエでインパクト投資部長も務めるガコン氏は、インパクト投資は投資家にとって非常に魅力的だと言う。社会・環境課題の解決に貢献できるだけでなく、金融・投資家にあまり取り上げられていない国やプロジェクトへの投資が多いために利益が大きく、またポートフォリオが多様で運用実績が高いからだ。

 銀行家は今後「文化的変化」に適応しながら、「持続可能なファイナンス」の持つ多くの利点をより明確に認識する必要があるとガコン氏は話す。

二酸化炭素排出量

 ガコン氏はさらに、炭素利用による環境・社会的コストなどが市場にもたらす影響が考慮され、各自が自分の二酸化炭素排出量を簡単に測定できるような方法の開発などが投資の要因になれば、投資家の行動を変える一助となるだろうとも言う。

 SGSのリュフェナハト氏は、多くの上場企業が、「正しいこと」をしているか、気候や人権などの社会的関心に応えるような経営をしているどうかで評価される傾向にあることを意識し始めていると言う

 連邦環境省顧問のシュワガー氏は、「何にでも『グリーン』という名前をつければいいわけではない。材料は同じなのに、ラベルを貼り代えただけの洗剤を作るようなやり方ではいけない」と警告しつつも、消費者の間で気候変動への意識が高まり、「迅速で大きな」変化が起きているかどうかに関心が集まっているために、民間部門では肯定的な動きが見られると話した。

(英語からの翻訳・西田英恵 編集・スイスインフォ)

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