おすすめの記事 アメリカ大統領選 – スイスの視点 このコンテンツが公開されたのは、 2016/11/08 今回の歴史的な選挙は何を意味するのでしょう?スイスに住むアメリカ人やアメリカに住むスイス人の声をご紹介します。 もっと読む アメリカ大統領選 – スイスの視点
おすすめの記事 スイスの政治 ブルガリアでの国民投票、背景にはスイスの協力がある このコンテンツが公開されたのは、 2016/11/03 ブルガリアで11月6日、市民による三つのイニシアチブが初めて国家レベルで国民投票にかけられる。この国民投票の実施は、長年にわたるスイスの協力の成果でもある。 ブルガリアの首都ソフィアに威風堂々と建つ東南ヨーロッパ最大のコンベンションセンター「国立文化宮殿」。これは、長年の独裁者トドル・ジフコフの娘であるリュドミラ・ジフコフの意向で1981年に建てられたものだ。 その中の延々と続く薄暗い廊下を雨がしとしと降る秋日に歩いていると、今日まで残るジフコフの支配の精神を一層強く感じるような気がした。その建物で私が探していたのはハジ・トシュコ・ヨルダノフという名の男性だ。 重厚な木の扉が突然開いたかと思うと、小さくてふっくらとした長髪の男性が目の前に現れた。ヨルダノフさんだ。40代後半の彼は「スラヴィ・ショーへようこそ」と言いながら私を事務所の中に招き入れた。「ここを拠点に昨年、ブルガリア史上で最も大規模な署名運動を行った」と、ヨルダノフさんはまるでロックスターが今からコンサートを行うかのような調子で話し始めた。 ヨルダノフさんとスラヴィ・ショーの番組スタッフは、数カ月間でイニシアチブについて総計70万人分以上の署名を集めることに成功した。スラヴィ・ショーとは20世紀初頭から毎日放映されているブルガリアの人気トーク番組。最新のテーマについて議論が交わされる。その人気は高く、ときには視聴者の数が百万人にのぼるほどだ。 「より民主的で腐敗のない国のために全力を尽くす」と番組制作者のヨルダノフさんは言う。 ブルガリアの大統領選挙と同日に行われる11月6日の国民投票では、国民議会議員選出における多数代表制の導入、投票の義務化、政党の資金運営改革に関する三つのイニシアチブが国民に問われる。 スイスとの協働 ヨルダノフさんの事務所には50代半ばのスラヴェィア・ヒストヴァさんも居合わせていた。彼女はうなずきながら私たちの話に耳を傾けていた。ソフィアにあるシンクタンク「バルカン・アシスト(BalkanAssist)」の代表を務めるヒストヴァさんは数十年にわたり、ブルガリアの民主的な体制づくりのために尽力し続けてきた。その結果の一つとして国民投票が実現される。 「今回投票にかけられる三つのイニシアチブは、ブルガリア初の市民によるイニシアチブだ」と話すわりには、あまり嬉しそうな様子でないヒストヴァさん。「私が目指している理想までの道のりはまだ遠い」と言う。鉄のカーテンが落ち、政治が転換した後の90年代にヒストヴァさんは奨学金を受けてスイスに留学した。「常に国民が不信を抱いていない状態で、社会がどう機能するのかをそこで知った」 もうすぐでスイス滞在から20年が経とうとしている。ヒストヴァさんは当時スイスで直接民主制が実施されていることに感銘を受けた。「真の革新だ」と彼女は今日も強調する。それ以来ヒストヴァさんは、スイスの関係者たちと協力して直接民主制の推進に取り組んでいる。その際、民主主義の発展を支える活動の枠組みで最初にブルガリアを支援したのはベルン州だった。 次いでスイスの連邦外務省開発協力局(DEZA)がソフィアに支局を置き、スイスとブルガリア間の情報交換の役割を担った。「私たちは当時、地方自治体および国レベルで、ブルガリア市民に直接民主的な権利が付与されるよう尽力した」とヒストヴァさんは振り返る。 しかし、ブルガリアが2007年に欧州連合(EU)に加盟すると、DEZAはブルガリアから撤退。代わりにヒストヴァさんと、彼女の幅広いネットワークで繋がっていた民主主義の専門家たちがDEZAの仕事を引き継いだ。 このプロジェクトはスイス国民が06年の国民投票で承認した連帯基金が運営。連帯基金はアールガウ州アーラウの「民主主義センター(ZDA)」の協力のもと、およそ2年前まで数々の協同プロジェクトを継続させてきた。スイスはブルガリア以外にポーランドでも民主主義的な体制の推進に取り組んできた。地方自治体における直接民主制や電子投票の導入、当局による情報伝達の強化が主な課題だった。 ヒストヴァさんと協働していたメンバーの中には長年の活動の結果、地方自治体の代表、国会や政府のメンバーになることに成功した人もいた。 定足数を利用した非民主的戦略 (直接)民主制の強化を目指した、国境を越えての取り組みの成果は明らかだ。今日ブルガリアは、最も発展した参政権に関する法を持つ国の一つに数えられている。さらに最近公表された国民の権利に関するランキングでブルガリアは、第2位のカテゴリーに分類された。同カテゴリーにはカナダ、ドイツ、フィンランドなどの国が並んだ。 「スイスの協力なしには、それを達成できなかっただろう」とヒストヴァさん。しかし、直接民主制の指標となる国スイスは、彼女にとって「諸刃の剣(もろはのつるぎ)」だと言う。それはスイス自体の問題ではない。スイスとブルガリアの歴史的、経済的状況が大きく違うからだ。ブルガリアは相変わらずEU加盟諸国で最も貧しく、腐敗した国の一つに数えられている。そのことをスイスが浮き彫りにさせる。「こうした(ブルガリアの)現実と、その一方でスイスがより発展している現実を突きつけられることは苦しみだ」とヒストヴァさんは嘆く。 実際に長期にわたった共産主義の支配は、11月6日の選挙にも影を落とす。大統領選挙と国民投票の同時実施を規定する現行の法のもとでは、秘密投票の原則が問われる。大統領の選挙の場合、有権者は投票所で投票用紙を自動的に受け取る一方で、国民投票のための用紙は自ら別途受け取りにいく必要がある。 最も非民主的であるのは、最低でも有権者の半分が国民投票に参加しなければ、これら三つのイニシアチブは無効になってしまうことだ。というのも、参加しなかった有権者は反対票を投じたものとみなされるからだ。しかしそれ以上に憂慮すべきは、有権者が国民投票用の用紙を取りに行くことで、周囲に革新の支持者であることを自動的に暴露することになってしまう点だ。 人口数百万の大都市ソフィアではこの方式が大きな問題になることはないかもしれない。しかし、田舎の伝統的な小さな地方自治体では、そこの長が幅を利かせていることは稀でない。そして彼らは市民が政治に「口出し」することを好まない。ブルガリアの国民投票は、現代的な国民投票の姿にはまだほど遠い。 もっと読む ブルガリアでの国民投票、背景にはスイスの協力がある
おすすめの記事 スイスの政治 スイスの脱原発、2029年に実現か? このコンテンツが公開されたのは、 2016/11/01 「新しい原発の建設を禁止し、現存の原発の運転期間を45年に限定する」。これが11月27日の国民投票にかけられるイニシアチブ「脱原発」の内容だ。これを国民が承認すれば、最後の原発が廃炉になりスイスが脱原発を達成するのは2029年になる。だが、緑の党のこの提案を政府も連邦議会も支持していない。両者にとって「2029年の脱原発」は早すぎるうえに、現在スイスは原発の運転期間を限定しない方針だからだ。 もっと読む スイスの脱原発、2029年に実現か?
おすすめの記事 スイスの政治 スイス 国連次期事務総長グテーレス氏の任命を歓迎 このコンテンツが公開されたのは、 2016/10/14 スイス政府は、13日に行われた国連総会によるアントニオ・グテーレス次期国連事務総長への任命を心から歓迎。外務省は13日の声明で、「グテーレス氏に協力し、彼の将来の職務執行においてはサポートしたい」と述べた上で、ポルトガ… もっと読む スイス 国連次期事務総長グテーレス氏の任命を歓迎
おすすめの記事 スイスの政治 民主主義の秘密が眠る村、アルト このコンテンツが公開されたのは、 2016/10/10 リギ山のふもとに位置する、牧歌的な雰囲気の漂うシュヴィーツ州のアルト村。この村にはスイスでも変わった政治制度がある。自治体に関する案件の是非について、有権者は村の集会で公に議論を交わす。だが、集会で票決は取らず、後日改めて投票を行うのだ。「集会デモクラシー」と秘密投票を合わせた、古きハイブリッド型制度を敷くこの村を訪れた。 もっと読む 民主主義の秘密が眠る村、アルト
おすすめの記事 スイスの政治 国民の参政権でランキング1位のスイス だが厳しい批判も このコンテンツが公開されたのは、 2016/10/07 先日、ドイツのベルテルスマン基金から発表された「国民の権利」ランキング中、国民の参政権の項目でダントツの1位に輝いたスイス。だが同時に、スイスが長年抱えている弱点も容赦ない批判を浴びている。その弱点とは「金融行政における透明性の欠如」だ。 もっと読む 国民の参政権でランキング1位のスイス だが厳しい批判も
おすすめの記事 スイスの政治 スイス国民、老齢・遺族年金の増加案を否決 このコンテンツが公開されたのは、 2016/09/25 スイスで25日、三つの案件の是非をめぐり国民投票が行われた。老齢・遺族年金の1割増しを求める「AHVプラス」イニシアチブは反対59.4%で否決。環境に配慮しながら持続可能な経済発展を目指す「グリーン経済」イニシアチブも反対63.6%で否決。一方、諜報活動を強化する新法案は賛成65.5%で可決された。 もっと読む スイス国民、老齢・遺族年金の増加案を否決
おすすめの記事 スイスの政治 スイスに住む外国人の参政権、自治体で大きな違い このコンテンツが公開されたのは、 2016/09/21 スイスに住む外国人がどの程度の参政権を持てるかは、住む自治体や州により大きく違う。確かに、スイスの文化的・言語的な差異が参政権においても溝を作っているが、それだけで全体像を語ることはできない。 筆者はイタリア人だがスイス・ジュラ州で生まれ育った。以前住んでいたジュラ州・バスクールでは、18歳から自治体と州の両 もっと読む スイスに住む外国人の参政権、自治体で大きな違い
おすすめの記事 スイスの政治 スイスの国民発議 125年の歴史 このコンテンツが公開されたのは、 2016/09/20 スイスの直接民主制に必要不可欠なイニシアチブ(国民発議)が導入された1891年から、これまでの125年のあゆみを振り返る。(SRF, swissinfo.ch) イニシアチブはスイスの直接民主制の鍵となる部分だ。これによって国内外問わず、スイスの有権者の誰もが憲法改正を提案することができる。 イニシアチブの提起はひとりで行っても構わないが、一般的には同じ関心を持つグループによって行われる。具体的に書かれた請願書に、少なくとも有権者10万人の署名を18カ月以内に集めなければならない。 連邦内閣事務局による署名の有効性が確認された後、提起された問題は議会が討議をし、賛成もしくは反対の立場を表明する。また議会が対案を出した場合には、レファレンダムの対象となる。 イニシアチブの可決には投票者の過半数および州の過半数の賛成票が必要だ。1891年の導入からこれまでに可決されたイニシアチブは22件。世紀の変わり目を境に、その数は増加している。 もっと読む スイスの国民発議 125年の歴史