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トランプvs世界の製薬業界 2025年の主な出来事

両手を広げて机に座るトランプ。
ドナルド・トランプ米大統領は2025年5月12日、薬代を引き下げる大統領令に署名した。 Keystone

ドナルド・トランプ米大統領が進める医薬品への関税導入は、世界の製薬業界に混乱をもたらしている。2025年1月の大統領就任以来、業界を揺さぶってきた出来事を時系列で紹介する。

薬価交渉は伝統的に不透明だ。結果としてアメリカ人患者は、特許薬の購入に欧州平均の2~3倍もの高額な費用を支払っている。トランプ大統領はこれを問題視し、関税を歴史的に免除されてきた医薬品にも課す構えだ。トランプ氏は関税を交渉手段にし、製薬業界トップらに薬価引き下げと米国への生産回帰を迫っている。

その結果、製薬各社はアメリカで数十億ドル規模を投資すると相次ぎ発表した。一部は、中間業者を排除することで消費者への価格を下げると表明した。

医薬品のほとんどはなお関税の対象外であり、製薬大手は関税ショックを吸収できる可能性が高い。だが専門家は、中小企業が最も大きな打撃を受けると予測する。医薬品が輸出総額の4割を占めるスイスは11月中旬のアメリカとの合意で、他のスイス製品に課される15%の関税を逃れた。

2025年1月20日のトランプ大統領就任以降に製薬業界に降りかかった出来事を列挙する。

1月27日:トランプ氏、医薬品、集積回路、半導体に対し新たな輸入関税をかけると発表。具体的な税率は明示せず

2月18日:トランプ氏、医薬品と半導体に少なくとも25%の関税を課すと発表。年内に発効すると表明

2月26日:米製薬イーライ・リリー、米政府要人を講演者に招いたイベントで、米国内での270億ドル(約4兆2300億円)の投資を約束

3月21日:ジョンソン・エンド・ジョンソン、今後4年間で550億ドルを投資し、アメリカに4つの新工場を建設する計画を発表

4月1日:米商務省、医薬品有効成分、誘導体、完成品を含む医薬品の輸入が「国家安全保障」上の脅威となるかどうかを判断するため、第232条に基づく調査を開始

看板の近くに立つ男性。
ドナルド・トランプ米大統領は9月30日、ホワイトハウス大統領執務室で、ファイザー社との薬価引き下げ協定を発表 Keystone

4月2日: トランプ氏、57カ国を対象とする「相互関税」を発表。スイスは31%が課されるも、医薬品は対象外に

4月5日:スイス製薬大手ノバルティス、アメリカに230億ドルを投資し、2つの研究拠点と4つの製造施設を設立し、1000人の雇用を創出すると発表。これにより「アメリカ患者向けのノバルティスの主要な医薬品はすべてアメリカで製造される」と説明

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4月8日:トランプ氏、共和党の資金集めパーティーで「速報」として「医薬品への大規模な関税」を表明。「我々は医薬品に関税を課すつもりだ。そうすれば、アメリカは大きな市場なので、医薬品はアメリカに殺到するだろう」と述べた

4月9日:米政府、中国を除く全ての国に対する相互関税が7月9日まで延期されると発表

4月11日:多国籍製薬企業32社、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に対する要望書を提出。規制を簡素化し、欧州の製薬業界を支援するよう求める

4月15日:トランプ氏、処方薬市場に「抜本的な透明性と競争をもたらす」ことで薬価を引き下げる内容の大統領令(政府に具体的な措置を求める指示書)に署名。同大統領令は、ジェネリック(後発)医薬品の入手しやすさを向上させ、アメリカで保険会社、雇用主、製薬会社の間の価格交渉を仲介する医薬品給付管理会社(PBM)の排除を目指した

4月22日:スイスの製薬大手ロシュ、今後5年間でアメリカに500億ドルを投資すると発表。最終的には現在スイスからアメリカに輸出するよりも多くの医薬品をアメリカから世界各国に輸出できる生産能力を持つようになると表明

バイオテクノロジー企業、ジェネリック医薬品メーカー、多国籍企業など少なくとも15社がアメリカで数十億ドル規模の投資を発表。内容は研究開発能力の拡大から新規生産施設の建設、雇用創出に至るまで多岐にわたる。一部の表明には具体的な期限は明記されていないが、ほとんどの企業の計画は数年がかり。

5月5日:トランプ氏、規制による遅延を減らし、国内生産を促進するための行政命令に署名

5月8日:イギリス、他国に先駆けてアメリカと相互関税で合意。基本税率の10%は維持。医薬品関税は、アメリカへの医薬品輸入に関する第232条に基づく調査の進捗状況に応じて決定されることに

5月12日:トランプ氏、ブランド医薬品については最恵国待遇価格に従うよう命じる大統領令に署名。最恵国待遇は、価格を同等の国々が支払う最低価格に合わせることを取り決めた原則。メーカーには30日以内に最恵国待遇政策に加入する必要がある

デスクに座る男とその後ろに立つ4人の男。
トランプ氏は5月12日、ジェイ・バタチャリア国立衛生研究所所長、メディケア・メディケイドサービスセンターのメフメット・オズ長官、ロバート・ケネディ・ジュニア保健相、マーティ・マカリ米食品医薬品局(FDA)長官らが見守る中、処方薬価格引き下げの大統領令に署名 Keystone

5月14日:仏サノフィ、今後5年間でアメリカに少なくとも200億ドルを投資する計画を発表

6月24日:ノルウェーのノボノルディスク、ノースカロライナ州に41億ドルを投資する計画を発表

7月8日:トランプ氏、閣議中に医薬品への200%の関税を「1年か1年半後」に課すと発言

7月21日:英アストラゼネカ、バージニア州に設立される「世界最大の単一製造投資」として500億ドルを投じると発表

7月22日:日米、相互関税の15%への引き下げで合意。日本は米政府が選定したプロジェクトに対し総額5500億ドルを投資することが条件に。ジェネリック医薬品は本協定の対象外

7月31日:トランプ氏、国内外の製薬会社17社に書簡外部リンクを送り、最恵国待遇価格に合わせるために9月29日までに各社が果たさなければならない拘束力のある約束を説明。「もし御社が行動を起こさなければ、私たちはアメリカ国民を不当な薬価設定から守るためにあらゆる手段を講じる」

8月21日:米・EU、基本税率を15%にすることで合意。医薬品への関税率は15%の上限が設定され、ジェネリック医薬品は9月1日から関税の対象外に

9月17日:英グラクソ・スミスクライン、アメリカでの研究開発などに5年間で300億ドルを投じると発表

9月25日:トランプ氏、10月1日からアメリカに輸入されるブランドまたは特許取得済みの医薬品に100%の関税を課すと発表。「企業が米国内に医薬品製造工場を建設していない限り」との条件付き

9月29日:トランプ氏が7月31日に製薬17社に送った書簡の回答締め切り日。米ファイザー、国内での投資700億ドルを発表し、最恵国待遇(MFN)価格での販売をトランプ政権と約束した最初の製薬会社に。同社は3年間関税を免除され、2026年に開設予定の消費者直販ウェブサイト「TrumpRx.gov」で一部の医薬品を現在の価格より約85%安く販売することに

10月1日:トランプ氏はこの日から特許つき医薬品に100%の関税をかけると表明していたが、発動されず

講壇の男たちが微笑む。
ファイザーのアルバート・ブーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は9月30日、米政府と合意に達した  Copyright 2025 The Associated Press. All Rights Reserved

10月10日:アストラゼネカ、500億ドルの対米投資を発表。MFN価格協定をトランプ政権と締結し、関税を3年間免除

10月16日:独メルク、対外不妊治療薬(EMDセローノ)をTrumpRx.govで割引価格で販売開始。これが関税免除の条件だった

11月6日:イーライ・リリーとノボノルディスク、糖尿病薬と減量薬の価格を引き下げ。関税の3年間免除で米政府と合意

11月15日:スイス、リヒテンシュタイン、アメリカの3カ国、医薬品を含めて相互関税が15%を超えないことを規定する共同声明を発表。その条件として、リヒテンシュタインは3億ドル、スイス企業は米国50州に少なくとも2000億ドルを投資する。うち3分の1は2026年末までに、残りは今後5年以内に実施される

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担当: Mavris Giannis

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編集:Virginie Mangin/gw、英語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:宇田薫

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