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猫島、ごみ箱、ポケカ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

佐柳島
瀬戸内海に浮かぶ佐柳島は、人間より猫の方が多い島として観光名所になっている 提供:(公社)香川県観光協会

スイスの主要報道機関が先週(5月26日~6月1日)伝えた日本関連のニュースから、①「猫島」おびやかす高齢化②街にごみ箱復活?③スイスにポケモンカードブームが再来、の3件を要約して紹介します。

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「猫島」おびやかす高齢化

住民より猫が多いことで知られる瀬戸内海の佐柳島(香川県多度津)。猫は貴重な観光資源となっていますが、島は着実に高齢化が進み、猫の将来にも不安が。ターゲス・アンツァイガーなどTamedia系のドイツ語圏日刊紙に現地ルポが掲載されました。

「佐柳島は細かく見ていくと、高齢化のようすがわかる」。学校は閉鎖され、商店は廃業し、集落は空き家だらけ。お腹を空かせた猫の姿だけが目立ち、「猫たちの悲痛な鳴き声は、まるで島の衰退を嘆くかのようだ」と言います。

「猫たちは時代遅れのライフスタイルの継承者だ」と記事は続けます。人口が多かったころ、佐柳島では多くの家庭がネズミを捕るために猫を飼っていました。水産業で潤っていた島で、猫は特に目立つ存在ではなかったそうです。

しかし人口が都会に流出する一方、猫は島で繁殖を続けています。「佐柳の猫は人間のいない生活を知らない」。猫の保護にあたる島民の間では、猫たちの将来を案じる声が聞かれます。

多度津町は人口減・猫増加に歯止めをかけようと、島への移住を促したり、野良猫を去勢したりしています。しかし移住者は増えていないようです。猫観光は島の貴重な収入源ですが、観光客による餌付けで猫が増えるというジレンマも。対応の難しさを記事は伝えました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

街にごみ箱復活? 

街にごみ箱を置くと通りはごみだらけに?日本の公共の場にごみ箱が置かれない理由とその変化の兆しについて考察する記事が、ターゲス・アンツァイガーなどTamedia紙に掲載されました。

都市からごみ箱が消えたきっかけは、1995年3月の地下鉄サリン事件。地下鉄構内のごみ箱にサリンが隠されていたことからごみ箱が撤去されましたが、記事によると「撤去後初めて、ごみ箱がないことはポイ捨てを防ぐ手段にもなることが判明した」。日本人はごみを持ち帰るか、そもそもごみが出ないように行動するようになった、と解説します。

ごみ箱を設置しないことのもう1つの側面として、「面倒と出費を避けるために試行錯誤された日本の方法」とも分析しています。起きていないこと、存在しないことは怒りのタネにならない。だから電車内では通話してはいけないし、日本は難民を受け入れない。「公共のごみ箱がほとんどないという事実は、この放棄文化の魅力的な事例の1つだ」

しかしこうした日本の慣習に不慣れな外国人観光客が増えたことで、街にポイ捨てや放置ごみが目立つようになってきました。記事によると、渋谷区はごみ箱の設置を検討しており、潜在的な副作用やごみ箱が邪魔にならない場所を探っているといいます。記事は「あまり積極的ではないようだ。無理もない。ごみ箱の復活が街をきれいにするかどうか、まったく保証はないのだから」と結びました。(出典:ターゲス・アンツァイガー外部リンク/ドイツ語)

スイスにポケモンカードブームが再来

世界のトレーディングカード市場を牽引してきた「ポケモンカードゲーム」。スイスの大衆紙ブリック・ドイツ語版は、スイスでポケカが再びブームを迎えているとして、スイスのポケカ専門家に話を聞きました。

記事によると、5月29~31日に開催されたスイス最大級のサブカルイベント「ファンタジー・バーセル」で、ポケモンカードのスタンドが特に大盛況だったといいます。スイス最大のポケモンコミュニティ「カードコレクター」の共同創業者兼マネージングディレクター、パスカル・ランドルト氏は同紙に「ポケカはノスタルジーであり芸術であり、熱狂だ。人々が愛し、価値を見出すもの。ポケカは人々を団結させる」と語ります。

ランドルト氏によると、イベントだけでなく日常的にも、「学生から銀行員まで」さまざまな社会階層がコレクションに情熱を注いでいます。

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ブーム再来に一役買ったのは、米インフルエンサーのローガン・ポールや元ラッパーのロジック、歌手のジャスティン・ビーバーといった著名人たち。2020年代に入って彼らがポケカに大枚をはたき、身に着けたり額装したりしたことが話題を呼んできました。

ランドルト氏は「現在、リザードン、ピカチュウ、イーブイといった第1世代を含む、非常に強力なセットがいくつか再登場しており、世代を問わず関心を呼んでいる」と加えます。投資・転売目的の売買も活況で、「古くて希少、状態が良いカードは4~5桁フラン(数十万~数百万円)に値上がりする可能性がある」。ブームにともない、詐欺や偽造も増えているそうです。

ランドルト氏は今後もブームは続くと断言します。「大人が価格動向について議論している横で小さな子どもたちがお小遣いをカードに投じているのを見るにつけ、この情熱がすぐに消えることはないと確信する」(出典:ブリック外部リンク/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

福島の除染土、官邸の花壇に再利用を検討外部リンク(5/27)
コメ価格に取り組む小泉新農水相外部リンク(5/28)
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マンガの災害予告で日本旅行の予約激減外部リンク(5/31)
日航123便事故の教訓外部リンク(5/31)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む」(記事/日本語)「氷河崩壊で被害の村、洪水の危険 スイス南部」(記事/日本語)でした。他に「移動式ホール『アーク・ノヴァ』がスイスに初帰国」(記事/日本語)、「スイス政府、ドイツへの戦車71両の売却を承認」(記事/英語)もよく読まれました。

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校閲:大野瑠衣子

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