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WHO、SARSの疑いのある乗客は搭乗禁止勧告を

昨年11月から発症した中国広東省の肺炎も香港で流行しているSARSと同種のものとWHOは認定した。 Keystone

世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)はアジアで猛威をふるっている原因不明の肺炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大に歯止めをかけるため、感染指定地域の各国の保険当局や通関当局へ、出国審査の際、スクリーニングを行うように呼びかけた。

WHOはSARS肺炎の病原体は風邪や腸炎を引き起こすのはコロナウイルスの新種であるとの見方を強くしており、香港大学医学部の研究チームが診断テストを開発中でまもなく利用可能になる予定だと発表した。これによって、感染や病状の診断が容易になるという。

これまでの感染者

 昨年11月末から中国広東省で大量発生した肺炎患者はSARSかどうかの確認がとれていなかった。しかし、WHOは専門チームを中国へ派遣し、この結果、香港などで流行しているSARSと同じものだとの結論を得た。これにより、感染者数はぐっと増え、中国の806人の感染者、死者34人(27日発表)を加えると世界の感染者数は27日現在、1408人、死亡者53人という数になった。香港でSARSは未だに猛威をふるっており、感染者数は上昇しつづけ、27日発表では67人が感染し、10人死亡している。

スクリーニング

 WHOの勧めるスクリーニングとは国際線搭乗時に乗客に咳きや呼吸障害や熱などあるか、SARS患者との直接な接触はあったかどうかを問診し、感染の疑われる人は搭乗を禁止するというもの。これによって、知らずに出国する人々を避けると同時に飛行機で旅行する人々の不安解消を目指す。明らかに病気の症状のある人は保険当局に連れていくように勧告している。

 WHOの勧告は感染確認地域に指定された中国(北京、上海、広東省)、ベトナム(ハノイ)、カナダ(トロント)、シンガポール(全域)、台湾(全域)に当てはまる。反対に、これらの地域へ旅行する人々への渡航自粛はまだ出ていない。香港当局はすでに、外国人の入国審査時にも、健康状態の申告を課すと発表し、ローリング・ストーンズのコンサートなど国際イベントも中止している。日本の厚生労働省は、出国者が一時的に帰国できなくなる恐れがあるとの注意喚起をするとしている。

感染に関して

 27日、ジュネーブで行われたWHOの記者会見で香港でのケースで航空機内で伝染した疑いのある患者が出てきたため、WHOが感染に必要とする「直接の接触」(close contact)とはどのように定義するのかとの質問が出た。WHOのヘイマン博士によると「感染者と同じ列または2列前後の乗客やスチュワーデスなどが該当するが、コンタクトの近さだけでなく接触の時間なども関係がある」と説明した。現在、香港と広東省での何故大量発生に至ったのか研究チームは原因究明を急いでいる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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