スイスの視点を10言語で
Press Review Teaser

スイスの視点で振り返る日本関連の記事

SWI swissinfo.chが毎週月曜日にお届けする「スイスのメディアが報じた日本のニュース」では、スイスの報道機関が配信した日本関連ニュースを要約して紹介しています。こちらのページは、これまでに配信した記事の一覧です。

取り上げるトピックスは外交や政治、科学技術、暮らしなど、多岐に渡ります。このページは毎週更新されますので、ぜひブックマークをするなどしてご活用ください。

また、「スイスのメディアが報じた日本のニュース」を毎週メールでお届けするニュースレターも発行しています。ご登録はこちらから。

4月29日~5月5日

労働不足の日本 熟練労働者の育成は

ドイツ語圏の日刊紙NZZは「労働力不足の先駆者」である日本で、熟練労働者を確保するために国や企業がどんな取り組みを進めているか、静岡大学の熊野善介教授とのインタビューを交えて深掘りしました。

記事はまず、日本の労働力におけるSTEM(自然科学、技術、数学、工学)分野の人材比率は国際的には高くないものの、「工業化が始まった150年前から職業教育の歴史がある」(熊野氏)ため、他のアジア諸国より有利だと指摘しました。

また「日本の職業・STEM教育を魅力的なものにしているのは、日本人がモノづくりと呼ぶもの、つまり物を作ることの長い伝統だ」と強調。大企業での正社員は憧れの的であること、専門学校や高専も卒業生のほぼ全員が就職できることを紹介しました。

課題として挙げたのは、労働力不足が深刻化し廃業する中小企業が増えていることと、イノベーション力が衰えていることです。後者について、熊野氏は「伝統的な詰め込み教育から発明の促進への転換」が米国に比べ10年遅れていると指摘しました。

STEM分野の女性比率の低さも指摘しました。しかしこれは「好機」でもあり、STEM分野で女性を増やすことで、労働力不足を緩和する余地が他国に比べて大きくなる、と結びました。

バイデン氏、中ロ印と日本は「外国人嫌い」

ジョー・バイデン米大統領が1日、選挙関連のイベントで演説した際、中国やロシア、インドと並べて日本を「外国人嫌い」だと発言。それに対し日本政府が「正確な理解に基づかない発言があったことは残念だ」と申し入れたことはスイス各言語圏で報じられました。

フランス語圏の大衆紙ブリックは、バイデン氏の発言を「中国とロシアが米国のライバルであるとすれば、日本とインドに関する彼のコメントは驚くべきものだ」と報道。バイデン氏が岸田文雄首相やインドのナレンドラ・モディ首相を国賓として待遇した事実を紹介しました。

ドイツ語圏のオンラインメディアGMXは、「ここ数カ月間、バイデン氏は失言や取り違えを繰り返してきた。これにより、同氏は大統領としては高齢すぎるという批判が高まっている」と付言しています。(出典:ブリック外部リンク/フランス語、GMX外部リンク/ドイツ語)

関西国際空港、30年間手荷物紛失なし

米CNNが2日、開業30年を迎える関西国際空港ではこれまで荷物の紛失(ロストバゲージ)が一度も発生していないと報道外部リンク。スイスのオンラインメディアbluewin.chのドイツ語・イタリア語版などがこれを取り上げました。

記事は、日本で最も混雑する空港の1つである関空が「他の多くの空港ではほぼ不可能なことをどうやって管理しているのか?」と疑問を呈しました。そして関空の広報担当者がCNNに「特別なことをしてきたとは思わない」と語った言葉を引用し、「スタッフは謙虚だ」と評しました。

また日経アジアを引用して「成功の秘訣は多層システムだ」と紹介。飛行機ごとに2~3人のスタッフが手荷物の数と種類を確認していると伝えました。

おすすめの記事
空港にならぶロストバゲージ

おすすめの記事

熟練労働者、「外国人嫌い」、荷物紛失ゼロ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの主要メディアが先週報じた日本関連ニュースから、①労働不足の日本 熟練労働者の育成は②バイデン氏、日本は「外国人嫌い」③関空、30年間手荷物紛失なし、の3本を要約してご紹介。

もっと読む 熟練労働者、「外国人嫌い」、荷物紛失ゼロ…スイスのメディアが報じた日本のニュース

4月22~28日

建設資材シーカ、東京に熱視線⁠ ⁠

スイスの建設資材大手シーカ(Sika)が麻布台ヒルズ森JPタワーで投資家・アナリスト向け説明会を開催。トーマス・ハスラー最高経営責任者(CEO)が語った東京の高層ビル需要やアジア市場の展望について、ドイツ語圏の日刊紙NZZと経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト(FuW)が報じました。⁠ ⁠

「シーカが日本でこのようなイベントを開催するという事実は、業界に驚きをもたらした」。FuWによると、同社の売上高においてアジアは米欧に劣るものの、ハスラー氏は「世界の主要なメガシティはアジアにあり、中期的にはこの地域が最も重要な柱になる可能性が高い」と語りました。⁠ ⁠

シーカの建設用化学薬品は昨年11月に開業した麻布台ヒルズ森JPタワーのほか、東京の高さ187メートルを超える全ての高層ビルに使われています。昨年5月に独建設化学大手MBCCを買収した後、日本の拠点を7カ所から23カ所に増やし、「特に地方での存在感を確立」しました。2021年には横浜ゴムから自動車用のシーリング材や接着剤部門「ハマタイト」を買収し、「ホンダやトヨタ、日産への扉が開かれた」(ハスラー氏)と言います。 ⁠

NZZは、東京は政治・経済・文化の中心地として多くの労働者世代を惹きつける一方、スーパーやレストラン、病院などが集まる高層ビル群は高齢者からの人気も高まっていると解説。外国人投資家も不動産ブームに重要な役割を果たしていると伝え、「建設計画の増加見通しはシーカにとって朗報だ」と締めくくりました。⁠ ⁠

円買い介入に警戒⁠

外国為替市場で円安が止まりません。日銀の金融政策決定会合(25~26日)を控えた23日、FuWは相場から日銀にかかる利上げ・介入圧力について解説しました。⁠ ⁠

歴史的な円安は「日本の経済政策担当者の間で懸念の的となっている」とFuW。植田和男総裁が18日「円安が、輸入財の国内価格の上昇を通じて基調的な物価上昇に影響を与える可能性はある」とした発言は、インフレ率の上昇を望んでいる国としては逆説的だが、「間違いなくある種の緊急性を示している」と位置付けました。輸入物価が家計の実質所得の増加を妨げれば、日銀の目指す「成功サイクル」(物価と賃金の好循環)が危うくなるからです。⁠ ⁠

ただ2022年秋の円買い介入では計9.2兆円を投じたものの効果は限定的で、同年は14%円安・ドル高が進みました。足元の円安も介入では食い止められず、FuWは日銀による利上げか、米国が利下げするまでこの流れは止まらない、との市場関係者の見方を紹介しました。⁠ ⁠

富士山の写真スポットに黒幕設置⁠ ⁠

山梨県河口湖町にある「ローソン河口湖駅前店」に、長さ20メートル、高さ2.5メートルの黒幕が設置されることになりました。富士山はスイス人にも人気の観光地なだけに、このニュースはドイツ語・フランス語・イタリア語全言語圏で大きく報じられました。⁠ ⁠

イタリア語圏の地域紙コリエーレ・デル・ティチーノは、観光客から入場料を徴収することに決めた伊ベネチアを引き合いに「オーバーツーリズムを阻止し、脆弱さを増す都市を守る」必要があるのは地球の反対側でも同じだと伝えました。「悪いのは『誤った行動をする外国人旅行者』にある」とし、「観光客が規律正しい行動をとり始めるまで」黒幕は撤去されないだろうとの見方を示しました。⁠

おすすめの記事
河口湖から望む富士山

おすすめの記事

高層都市東京、介入観測、富士山に黒幕…スイスのメディアが報じた日本のニュース

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの主要メディアが先週報じた日本関連ニュースの中から、①建設資材シーカ、東京・アジアに熱視線②円買い介入に警戒③富士山の写真スポットに黒幕設置の3本を要約して紹介します。

もっと読む 高層都市東京、介入観測、富士山に黒幕…スイスのメディアが報じた日本のニュース

4月15~21日

中東危機でも上昇しない日本円⁠

⁠ 日本円は安全通貨の一つとされ、金融危機や地政学的な混乱が起きると円高が進みやすいという性質を持っています。ところが、イランがイスラエルを報復しても円安が止まらず、市場では日銀・財務省による介入や緊急利上げの憶測も。ドイツ語圏の日刊紙NZZは、日本でますます円の先安観が強まっている背景を探りました。⁠ ⁠

記事は「円の急激な下落は、政府と日銀にジレンマをもたらしている」と指摘。一方では経済を腰折れさせることのないようゆっくりと金利を上昇させ、緩やかなインフレに導きたいと考えています。他方では円安が輸入物価を押し上げることが懸念され、追加利上げの必要性が高まっているといいます。⁠ ⁠

市場ではさらに円安が進むとの見方が広がっています。人口減少が進むなか、多くの日本企業が海外での成長を求め対外投資を増やしています。過去1年で24兆2000億円が純流出し、円安要因になっているのです。個人投資家も円安を見込み、新少額投資非課税制度(NISA)を利用して海外株に投資しています。⁠ ⁠

日本は停滞を脱したのか?⁠

日経平均株価が過去最高値を更新し、日銀が17年ぶりに利上げに踏み切ったことで、日本経済の今後に注目が集まっています。ドイツ語圏の経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトは早稲田大学の上田晃三教授に、日本が本当に長期停滞を脱し持続可能な経済成長に向かっているのか、話を聞きました。⁠ ⁠

上田氏の結論は、「短期循環上は回復局面に入ったかもしれないが、構造的停滞局面はまだ脱していない」です。その理由として、①賃上げと物価の好循環が中小企業やサービス業にまで浸透していない②中期的には高齢化問題を解決しなければならない③需要とイノベーションが弱いことを挙げました。⁠ ⁠

スイス資産運用会社が見る日本のガバナンス改革⁠ ⁠

フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフトはまた、日本の長期株高の背景の一つであるコーポレート・ガバナンス(企業統治)改革にも注目。資産運用会社UBPインベストメンツで日本株を担当するズヘール・カーン氏らに取材しました。⁠ ⁠

UBPは今、「コーポレート・ガバナンスの劣る企業の株をショート(空売り)することでアルファ(超過利益)の大半を生み出している」と言います。カーン氏が特に関心を寄せているのは、2024年3月期決算の発表が集中する5月。資本構成が改善されそうな企業や、赤字部門からの撤退が予想される企業に注目しているそうです。取締役会の構成や、株式持ち合いの度合いを分析しています。⁠ ⁠

おすすめの記事
UBPジュネーブ

おすすめの記事

円安、脱停滞、企業統治改革…スイスのメディアが報じた日本のニュース

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの主要メディアが先週報じた日本関連ニュースから①中東危機でも上昇しない日本円②日本は停滞を脱したのか?③スイス資産運用会社が見る日本のコーポレート・ガバナンス改革、の3本を要約して紹介します。

もっと読む 円安、脱停滞、企業統治改革…スイスのメディアが報じた日本のニュース

4月8~14日

日米首脳会談 対中包囲網・月面着陸に注目

岸田文雄首相が8~14日に訪米し、10日にはジョー・バイデン米大統領との首脳会談、11日にはフィリピンのマルコス大統領を交えた初の3カ国首脳会談が行われました。

ドイツ語圏の日刊紙NZZは論説で、「国賓としての訪問は、バイデン・岸田両氏は日米が今後も『親友』であり続けることを望んでいるという明確なメッセージを強調した」と位置付けました。「日本はフリーライダーから、インド太平洋における最も重要な安全保障パートナーへと姿を変えた」とし、バイデン氏の言う「親友」は「信頼できる」という認識だと読み解きました。

ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)は日米接近によって「日本が北大西洋条約機構(NATO)に加盟する可能性があるのかという疑問が生じる」として、そのメリットや実現可能性を考察。「志を同じくする民主主義諸国との接近は日本の孤独を軽減」し、「産業・技術大国である日本はNATOの軍事的利益にも沿う」とみています。

一方、日本と欧州間の距離を踏まえると「緊急時に迅速・効率的に防衛し合うことはできない」デメリットも。またNATO諸国の間で「日本とどの程度集中的に協力したいかについて意見が一致していない」ため、特に欧州側で政治的にも実現困難だと分析しました。

またフランス語圏では、日米会談に合わせ、米国主導の月探査「アルテミス計画」で日本人が米国人以外の人類として初めて月面に着陸するとの取り決めが結ばれたことが注目されました。

AUKUSでは信頼欠く

日米首脳会談に先立つ8日、米英豪の軍事同盟「AUKUS(オーカス)」は共同声明を発表し、先端技術分野で日本との協力を検討していると明らかにしました。NZZは10日付の記事で、「米英豪は日本と緊密に連携したいが、あまり信頼していない」との見出しで現状を分析しました。

声明は「三国の国防大臣が、新型兵器やシステムの開発に関して日本の関与をより緊密にしたいと考えていることを意味する」と説明。日米首脳会談を機に日本のAUKUS参加も取り沙汰されていますが、第4のパートナーが加わることで原子力潜水艦の調達がさらに複雑化するという懸念や、「サイバーセキュリティと機密情報の保護に関して、日本が欧米諸国に後れを取っている」ことから、AUKUS内には反対意見が強いことを紹介しました。

元横綱の曙太郎さんが死去

大相撲で外国出身力士として史上初めて横綱となった、元曙の曙太郎さんが4月、心不全で亡くなりました。スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語の全言語圏で報じられました。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーは「敵意と賞賛 外国人が日本の国技をどう変えたか」と題してその功績を振り返りました。1993年の横綱昇進は「国内で激しく批判され、初めて横綱として出場したときは非常に敵対的な雰囲気に包まれた」ものの、同年7月の名古屋場所で優勝したことは「日本人の意識を変え、徐々に心を掴んでいった」と言います。記事は「曙の偉業は自身の功績に加えて、日本の国技において外国人が受け入れられ、歓迎されるようになったということだ」と総括しました。

ドイツ語圏のオンラインニュースサイトwatson.chも独自記事を配信。曙関が活躍したのは相撲の隆盛期で、結びはスイスでもテレビ観戦できたと言います。貴乃花との激戦の動画には「まるでテニスのフェデラー対ナダル戦」とのキャプションを付けました。

スイスで曙さんの死が大きく報じられた背景の一つには、相撲引退後の転向もあるようです。watson.chやbluewin.chイタリア語版は、「スイスのアンディ・フグによって有名になった日本のK-1に挑戦したが、ほとんど活躍しなかった」と紹介しました。

おすすめの記事
車の運転席に乗った曙太郎さん

おすすめの記事

日米首脳会談、AUKUS、曙太郎さん死去…スイスのメディアが報じた日本のニュース 

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの主要報道機関が先週伝えた日本関連のニュースから①日米首脳会談②AUKUSでは信頼欠く③元横綱・曙さんが死去、の3件を要約して紹介します。

もっと読む 日米首脳会談、AUKUS、曙太郎さん死去…スイスのメディアが報じた日本のニュース 

こちらもオススメ

スイス便利情報滞在ビザの申請方法から出生手続き、学校制度のしくみまで、スイスに関する役立つ情報やリンクを掲載しています。

日本語読者向けに特別編集:swissinfo.chの記事は多言語で配信されていますが、こちらのリストでは、日本語読者向けに特別に日本語編集部が追加取材などを行った記事をリストアップしています。ぜひ一度ご覧ください。

暖冬でも観光好調 時計業界は正常化へ 1~3月期スイス経済回顧

豊かなスイスでのホームレス暮らし

金取引の新星UAE スイスの脅威になるか

カーボン・オフセットを推進するスイス 気候目標達成に貢献するのか?

「世界人権宣言」採択75周年、私たちは何を祝うべきか?

合法的にハイに スイス・バーゼルで娯楽用大麻の販売実験 

花粉症を技術で軽減 スイスで花粉7種を自動測定

生物多様性の救世主?陸上の環境DNAをドローンで採取

【ポイント解説】クレディ・スイスのAT1債訴訟

タイヤ由来のマイクロプラスチック 人体と環境へのリスクは?

スイスがいまだ砂糖税導入を拒む理由

スイスの自殺ほう助団体の会員数が過去最高に増えている理由

外国人採用は看護師不足を解決するか?スイスから学べること

豊かなスイスで高齢者が貧困に陥るワケは?

おすすめの記事

おすすめの記事

ニュースレター登録

ニュースレターにご登録いただいた方に、スイスのメディアが報じた日本のニュースを毎週月曜日に無料でEメールでお届けします。スイスの視点でニュースを読んでみませんか?ぜひこちらからご登録ください。

もっと読む ニュースレター登録

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部