交流サイト大手の米フェイスブックが仮想通貨プロジェクトの詳細を発表した。スイス・ジュネーブに設立されたリブラ協会はどのような位置づけを占めるのか。
このコンテンツが公開されたのは、
フェイスブックは先月、ジュネーブに非営利団体を設立したと正式発表した。スイスは「中立国としての歴史があり、ブロックチェーン技術にオープンだ。リブラ協会は中立で国際的な組織を目指しているため、この地に登録することを選んだ」と説明外部リンクした。
「仮想通貨国家」を自負するスイスでは、仮想通関に関連したブロックチェーン企業や非営利団体が続々と誕生している。
「スイス、特にジュネーブにいれば、リブラは国際社会や国際金融システムと密な関係を維持できる」。リブラ協会広報のダンテ・ディスパルテ氏はスイスインフォの取材にこう話した。「このプロジェクトにおける重要なポイントの一つは、あらゆる人々が生涯にわたり経済的に安定した生活を営むことができるよう、金融ノウハウ・サービスを提供するファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)があることだ。市民社会や国際組織に近い場所にいることが、我々のミッションに役立つ」
新仮想通貨リブラ
リブラ協会は、リブラと称する新しい仮想通貨の発行・管理を目的とする。リブラ価格を安定させるために法定通貨を引当金として管理し、リブラの流通網となるリブラ・ブロックチェーンの開発を進める。利用者間の取引の有効性を確認する重要な任務も負う。
任務はほかに、今後長期にわたるネットワークの促進および発展がある。例えば、すべての人々が経済活動で必要な金融サービスを利用できる「ファイナンシャル・インクルージョン」プロジェクトの支援活動がそれにあたる。
リブラ協会のホームページによると、立ち上げ時点で28人の「創設メンバー」が役員会を構成する。VISAやイーベイ、スポティファイ、ウーバー、ヴォーダフォンなどの民間企業のほか、ベンチャー投資家、ブロックチェーン企業、メルシー・コープスなどNGOも参加している。
スマホ決済がより速く
アップルペイやスイスのTWINTアプリなど、スマートフォンを使った決済システムは既にいくつも存在する。だがリブラは銀行など第三者機関を介さずに決済が完了する点が特徴だ。
既存のスマホ決済の場合、決済後に仲介企業が消費者の銀行口座から料金を引き落とす過程に何日かかかる。リブラはこの流れを簡素にし、速やかに全取引が完了する仕組みを目指す。
運用開始の時期は未定だが、来年早い時期になるとも報じられている。フェイスブックは決済システムの技術面を管理する子会社「カリブラ」も設立。まずは25億人以上のアクティブユーザーを抱えるメッセージアプリのワッツアップやメッセンジャーを通じた決済を可能にする。将来的にはフェイスブック上で金融商品・サービスを提供したい考えだ。
フェイスブックが支配?
これに対し、フェイスブックがインターネットだけでなくブロックチェーンや仮想通貨の世界を支配しようとしている、との批判が出ている。誰もが仮想通貨を発行し取引の有効性を承認できるビットコインと異なり、リブラは集権的な管理下に置く道を選んだ。リブラ協会が通貨の証明者を制限し、流通量をコントロールする。
リブラ協会は「重要な目標は、いずれ集権的な仕組みから分散型に変化していくことだ。それによりネットワークの構築・利用への参入障壁が下がり、長期的にリブラの生命力が強化される」とみる。
リブラ協会は5年以内に「事業運営に役員の承認が要らなくなる経営方式を目指す。それにより創設メンバーへの依存度を徐々に減らす。同じように、リブラ引当金の管理者としてのリブラ協会も創設メンバーへの依存を最小限にしていく」と表明している。
おすすめの記事
おすすめの記事
米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立
このコンテンツが公開されたのは、
交流サイト世界大手のフェイスブックが仮想通貨プロジェクトを担う子会社「リブラ・ネットワークス」をスイス・ジュネーブに設立した。なぜジュネーブが拠点に選ばれたのか。
もっと読む 米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
おすすめの記事
スイスのサマータイム廃止はいつ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで夏時間(サマータイム)が始まった。3月31日午前2時にすべての時計の針が1時間ジャンプし、午前3時を指した。だが夏時間制はとうの昔に廃止されるはずではなかったのか?
もっと読む スイスのサマータイム廃止はいつ?
続きを読む
おすすめの記事
仮想通貨「リブラ」、主要提携企業の脱退で波乱の船出
このコンテンツが公開されたのは、
米フェイスブックの仮想通貨プロジェクト「リブラ」は提携企業のうち7社が脱退を表明し、大きな打撃を受けた。プロジェクトの音頭をとるリブラ協会(本社・ジュネーブ)は憲章の策定や経営陣の刷新で、規制当局からの圧力に抗おうとしている。
もっと読む 仮想通貨「リブラ」、主要提携企業の脱退で波乱の船出
おすすめの記事
スイス中銀、フェイスブック仮想通貨「リブラ」に懸念
このコンテンツが公開されたのは、
法定通貨に紐づいた仮想通貨は価格が安定するか?スイス国立銀行(中央銀行、SNB)の答えは「否」だ。米フェイスブックがジュネーブを拠点に展開する仮想通貨計画「リブラ」が、中銀と真っ向から対立する可能性が出てきた。
もっと読む スイス中銀、フェイスブック仮想通貨「リブラ」に懸念
おすすめの記事
ブロックチェーンが変えるスイスのビジネス
このコンテンツが公開されたのは、
ブロックチェーン技術が初めて登場した2008年、データの管理ややり取りに革命が起きると期待された。技術のビジネス化に10年の時を要したが、ようやく活用事例が現れ始めた。その舞台はスイスだ。
もっと読む ブロックチェーンが変えるスイスのビジネス
おすすめの記事
ビットコインとブロックチェーンを支える技術
このコンテンツが公開されたのは、
ただのたわ言か、あるいは、およそ全ての価値あるモノの取引方法を変える革命的な技術か。
分散型台帳技術(DLT)とは一体何か。どのような仕組みで、誰が利益を得るのか。この動画ではフィクションと事実を分け、熱狂の先にあるものを見ていく。
もっと読む ビットコインとブロックチェーンを支える技術
おすすめの記事
米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立
このコンテンツが公開されたのは、
交流サイト世界大手のフェイスブックが仮想通貨プロジェクトを担う子会社「リブラ・ネットワークス」をスイス・ジュネーブに設立した。なぜジュネーブが拠点に選ばれたのか。
もっと読む 米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立
おすすめの記事
無印良品がスイス上陸、ユニクロは来るのか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・チューリヒ郊外に5日、無印良品のポップアップストアがオープンした。日本の小売大手の参入は以前から国内各紙で報じられ注目を集めたが、気になるのは、同じく日本ブランドで男子プロテニスのロジャー・フェデラーを広告塔に持つユニクロがスイスに来るかどうかだ。
もっと読む 無印良品がスイス上陸、ユニクロは来るのか?
おすすめの記事
「フェイク(偽)ニュース」からいかに選挙を守るか?
このコンテンツが公開されたのは、
直近の例に、マケドニアの国名変更の是非を問う国民投票がある。マケドニアの国名は長い間、同国の北大西洋条約機構(NATO)と欧州連合(EU)加盟への障壁となってきた。同国の場合、投票結果を有効とするためには投票率50%が必…
もっと読む 「フェイク(偽)ニュース」からいかに選挙を守るか?
おすすめの記事
SNSを駆使し有権者を動かすスイスのデジタル政治活動家
このコンテンツが公開されたのは、
背の高いその青年はカジュアルな服装で、あごのあたりに無精ひげを生やし、親しみやすい黒っぽい目をした、一見どこにでもいる普通の若者だ。この数カ月の間にいくつかの新聞で描写されていた通りだ。
もっと読む SNSを駆使し有権者を動かすスイスのデジタル政治活動家
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。