The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義

フェイスブックの仮想通貨プロジェクト スイスの位置づけは?

スマホ上のフェイスブックのアイコン
フェイスブックは独自の仮想通貨プロジェクトの拠点として、ジュネーブに非営利団体を設立した © Keystone / Christian Beutler

交流サイト大手の米フェイスブックが仮想通貨プロジェクトの詳細を発表した。スイス・ジュネーブに設立されたリブラ協会はどのような位置づけを占めるのか。

フェイスブックは先月、ジュネーブに非営利団体を設立したと正式発表した。スイスは「中立国としての歴史があり、ブロックチェーン技術にオープンだ。リブラ協会は中立で国際的な組織を目指しているため、この地に登録することを選んだ」と説明外部リンクした。

「仮想通貨国家」を自負するスイスでは、仮想通関に関連したブロックチェーン企業や非営利団体が続々と誕生している。

「スイス、特にジュネーブにいれば、リブラは国際社会や国際金融システムと密な関係を維持できる」。リブラ協会広報のダンテ・ディスパルテ氏はスイスインフォの取材にこう話した。「このプロジェクトにおける重要なポイントの一つは、あらゆる人々が生涯にわたり経済的に安定した生活を営むことができるよう、金融ノウハウ・サービスを提供するファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)があることだ。市民社会や国際組織に近い場所にいることが、我々のミッションに役立つ」

新仮想通貨リブラ

リブラ協会は、リブラと称する新しい仮想通貨の発行・管理を目的とする。リブラ価格を安定させるために法定通貨を引当金として管理し、リブラの流通網となるリブラ・ブロックチェーンの開発を進める。利用者間の取引の有効性を確認する重要な任務も負う。

任務はほかに、今後長期にわたるネットワークの促進および発展がある。例えば、すべての人々が経済活動で必要な金融サービスを利用できる「ファイナンシャル・インクルージョン」プロジェクトの支援活動がそれにあたる。

リブラ協会のホームページによると、立ち上げ時点で28人の「創設メンバー」が役員会を構成する。VISAやイーベイ、スポティファイ、ウーバー、ヴォーダフォンなどの民間企業のほか、ベンチャー投資家、ブロックチェーン企業、メルシー・コープスなどNGOも参加している。

スマホ決済がより速く

アップルペイやスイスのTWINTアプリなど、スマートフォンを使った決済システムは既にいくつも存在する。だがリブラは銀行など第三者機関を介さずに決済が完了する点が特徴だ。

既存のスマホ決済の場合、決済後に仲介企業が消費者の銀行口座から料金を引き落とす過程に何日かかかる。リブラはこの流れを簡素にし、速やかに全取引が完了する仕組みを目指す。

運用開始の時期は未定だが、来年早い時期になるとも報じられている。フェイスブックは決済システムの技術面を管理する子会社「カリブラ」も設立。まずは25億人以上のアクティブユーザーを抱えるメッセージアプリのワッツアップやメッセンジャーを通じた決済を可能にする。将来的にはフェイスブック上で金融商品・サービスを提供したい考えだ。

フェイスブックが支配?

これに対し、フェイスブックがインターネットだけでなくブロックチェーンや仮想通貨の世界を支配しようとしている、との批判が出ている。誰もが仮想通貨を発行し取引の有効性を承認できるビットコインと異なり、リブラは集権的な管理下に置く道を選んだ。リブラ協会が通貨の証明者を制限し、流通量をコントロールする。

リブラ協会は「重要な目標は、いずれ集権的な仕組みから分散型に変化していくことだ。それによりネットワークの構築・利用への参入障壁が下がり、長期的にリブラの生命力が強化される」とみる。

リブラ協会は5年以内に「事業運営に役員の承認が要らなくなる経営方式を目指す。それにより創設メンバーへの依存度を徐々に減らす。同じように、リブラ引当金の管理者としてのリブラ協会も創設メンバーへの依存を最小限にしていく」と表明している。

おすすめの記事
Facebook logos

おすすめの記事

米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立

このコンテンツが公開されたのは、 交流サイト世界大手のフェイスブックが仮想通貨プロジェクトを担う子会社「リブラ・ネットワークス」をスイス・ジュネーブに設立した。なぜジュネーブが拠点に選ばれたのか。

もっと読む 米フェイスブックがジュネーブに仮想通貨子会社を設立


人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

ひまわり畑

おすすめの記事

見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。

もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
UBS

おすすめの記事

スイス政府、金融規制改革の最終案を発表

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦内閣は6日、クレディ・スイス危機を踏まえた金融規制改革の最終案を発表した。自己資本規制を強化し、金融監督局の権限も強化する。

もっと読む スイス政府、金融規制改革の最終案を発表
ガザ

おすすめの記事

スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難

このコンテンツが公開されたのは、 パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルの「戦争犯罪」に関して、スイスの元外交官55人がスイス外相に共同書簡を送り、スイスの「沈黙と消極性」を非難した。政府に対して直ちに措置を講じるよう求めた。

もっと読む スイスの元外交官50人、ガザめぐる政府の「沈黙」を非難
軍隊

おすすめの記事

スイスで放射能測定の合同演習 

このコンテンツが公開されたのは、 スイスでは2~6日、国際チームがヘリコプターで空中の放射能測定を行っている。緊急時に広い範囲の放射能を迅速にチェックする予行演習だ。

もっと読む スイスで放射能測定の合同演習 
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡

このコンテンツが公開されたのは、 自殺カプセル「サルコ」を運営する自殺ほう助団体「ラストリゾート」共同設立者のフロリアン・ウィレ氏(47)が、先月5日にドイツで死去していたことが分かった。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が死亡
土砂崩れ

おすすめの記事

スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部レッチェンタール(ヴァレー州)で28日午後、大きな氷河が崩壊し、大規模な土砂崩れがふもとのブラッテン村を襲った。多数の家屋が倒壊し、1人が行方不明。

もっと読む スイス南部で氷河が崩壊 土石流がふもとの村を飲み込む
標準器

おすすめの記事

スイス、メートル法準拠から150年

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは150年前にメートル条約に調印し、メートルやキログラムを導入した。それまでスイスの測定単位は地域や使途によって大きく異なっていた。

もっと読む スイス、メートル法準拠から150年

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部