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ゴダール監督、スイスの自宅で自殺ほう助

ジャンリュック・ゴダール
© Keystone / Gaetan Bally

「勝手にしやがれ」や「さらば、愛の言葉よ」などの名作を生みだしたスイス・フランス国籍のジャンリュック・ゴダール監督が13日、91歳で死去した。スイスの自宅で自殺ほう助を利用した。

1960年ごろにフランスで起こった映画運動「ヌーベルバーグ(新しい波)」を立ち上げた1人。常に映画製作の境界を広げてきた画期的なアーティストとして称賛されている。常に新しい形式のナレーションとジャンプカットを取り入れた。

スイスのアラン・ベルセ内務相は13日、ツイッターで「スイスは最も偉大な映画制作者の1人を失った。同氏の作品は、世界中の幾世代もの映画監督にひらめきを与えた。彼の計り知れない業績と影響力は歴史に残るだろう」と賛辞を述べた。

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ゴダール氏は約 150 本もの映画や動画を撮影し、亡くなるまで活動を続けた。1959年に撮影され翌年に公開された初の長編「勝手にしやがれ」が大ヒット。遺作となった「イメージの本」(2018年)はカンヌ国際映画祭で「スペシャル・パルムドール」を受賞した。

2010年にはアカデミー名誉賞を授与されたが、ハリウッドでのオスカー像授与式への招待は断った。イスラエルの政治に対する批判的な見解は論争を巻き起こし、一部の地域では「反ユダヤ主義者」と非難された。

ゴダール氏は1930年12月3日、スイス出身でパリに暮らす裕福な家庭に生まれた。幼少期をスイス西部レマン湖畔のニヨンで過ごした。パリで民俗学を学んだ後、当初は作家・画家を目指していたが、映画に転向。1953年にスイス国籍を取得した。

前述の他に「軽蔑」(1963年)、アルファヴィル(1965年)、「気狂いピエロ」(1965年)、「中国女」(1967年)、「ゴダールのリア王」(1987年)、全8章から成るシリーズ映画「ゴダールの映画史」(1988~98年)などの作品がある。

ゴダール作品に出演した女優アンナ・カリーナと結婚、その後アン・ウィアゼムスキーと再婚した。1977年以降はスイス西部レマン湖畔のロールで、3番目の妻となったスイスの映画製作者、アンヌ・マリー・ミエヴィルと暮らしていた。

ミエヴィル氏は、ゴダールが 今月13 日、ロールで「愛する人たちに囲まれながら」安らかに息を引き取ったと発表した。フランス語圏のスイス公共放送(RTS)外部リンクによると、ゴダール氏の顧問を務めるパトリック・ジャンヌレ氏は、スイスでは合法とされる自殺ほう助により死亡したとする仏リベラシオン紙の報道を認めた。「医療報告書によると、ゴダール氏は複数の疾患を煩い、スイスで自発的に依頼して(自殺ほう助のための)法的支援を受けた」と述べた。

ゴダール氏の親友だったジャンヌレ氏は「身体は疲弊していた。さまざまな病状のためにもはや普通に生きることができなかった。とても独立し正直だった彼にとって、他の人と同じような身体的手段を持てないことは大きな障害だったと思う」と語った。

英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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