スイスの新型コロナウイルス対策で科学的知見から政府に助言するタスクフォース(TF)の座長を務めたタンヤ・シュタッドラー氏は20日、スイス人口の約15%が今夏、オミクロン変異株の派生型「BA.4」と「BA.5」に感染する可能性があると警告した。
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シュタッドラー氏によると、両派生型の感染拡大によって集中治療室の病床を圧迫する危険性は「低い」が、入院および後遺症患者の増加が予想される。
同氏は20日付けの大衆紙ブリック外部リンクで「スイス人口860万人の約15%、つまり100万人以上が感染すると想定している」と述べた。また、感染者の大半は検査を受けないだろうとも語った。
欧州諸国では、感染力の強いオミクロン変異株の「BA.4」「BA.5」派生型が急速に広がり、感染者が急増している。
スイスでは感染者の減少傾向が3カ月続いたのち、再び増加傾向に転じている。連邦内務省保健庁(BAG/OFSP)の14日の発表によると、直近1週間の新規感染者数は1万6610人だった。1日当たりの感染者数は7日間平均で2124人で、前週と比べて45%増加した。
シュタッドラー氏によると、潜在的な患者数はもっと多い。スイスで最近行われた下水疫学調査から推計すると、実際の感染者数は昨年の冬を上回っているとみられる。
試算上では、「おそらく週に8万人以上が新たに感染している」。現在の推定値は過去2年の夏と比べてもはるかに高いと話した。
重症化するケースは少ない
オミクロン変異株の「BA.4」「BA.5」派生型は、3月に世界保健機関(WHO)の監視リストに追加されたほか、欧州疾病予防管理センター(ECDC)からも懸念すべき派生型として指定されている。
複数の専門家によると、両派生型は他のオミクロン変異株と比べて重症化するリスクは低い。ただ、感染率の上昇による患者数の増加は、入院や死亡の増加につながる危険性がある。
シュタッドラー氏は、スイスの感染者数は増加傾向にはあるが、重篤化し入院するケースはほとんどないと話した。
BAGの最新データによると、スイスでは直近の7日間で371人が新型コロナウイルス感染症で入院し(前週比16%増)、18人が集中治療室で治療を受けた(同14%減)。
「最新の統計では、ワクチン接種や感染した結果、スイスの成人の97%が新型コロナウイルスに対する抗体を持っている」
同氏は、スイスでの集中治療室の病床圧迫に対する心配は不要としながらも、「感染者が増加すれば、重症化リスクの高い人たちが入院することになり、コロナの後遺症患者も増えるだろう」と話した。「ワクチンを3回接種していても、感染予防効果は限られていると認識する必要がある」
スイスでは4月1日から新型コロナウイルス感染対策に伴う規制をすべて解除している。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
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