riri製ファスナー:スイス東部出身の実業家マルティン・オトゥマー・ヴィンターハルターは1923年、アメリカ人のギデオン・サンドバックから現代型ジッパーの前身となる発明の特許を買い取った。ヴィンターハルターはジッパーを大量生産する機械を発明し、球突起のついていたエレメント(務歯)を溝状に変えた。ririという社名は「Rinne-Rippe」―独語で「溝の肋」に由来する。
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駅の時計:スイスの鉄道駅にある時計は文字盤に数字がない。1944年、デザイナーでエンジニアのハンス・ヒルフィカーの考案だ。わかりやすく無駄を省いたデザインには、発射信号棒を連想させる秒針が備わる。かつてiPhoneの時計アプリに盗用されたとしてスイス連邦鉄道がアップル社を訴えた。
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フライタークのカバン:フライターク兄弟はともにグラフィックデザイナーで、カバン作りに丈夫で水に強い素材を探していた。アイデアを得たのは家の前で日々発生する渋滞だ。使用済みのトラック荷台カバーや自転車のタイヤ、自動車のシートベルトを使ったショルダーバッグの第1号がこの世に登場したのは1993年。
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コルビュジエ寝いす:その美しさと機能性は今も人々をとりこにする。「安息マシーン」の異名を持つ寝いすLC4だ。ル・コルビュジエが1928年、シャルロット・ペリアンとピエール・ジャンヌレとともにデザインした。時代を先取りしたデザインは熱狂を呼び、家具の現代史を塗り替えた。
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フォント「ヘルベチカ(Helvetica)」:グラフィック・タイポグラフィデザイナーのマックス・ミーディンガーの名は、書体「ヘルベチカ」の考案とともに1950年代に一躍有名になった。飾り気のない書体は専門家の人気を集め、企業や公共の標識、書籍で世界的に使われている。
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フィックスペンシル:筆記具メーカー・カランダッシュが1929年に生み出したフィックスペンシルは、世界で初めて特許取得済みクリップのついたノック式シャープペンとなった。
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角砂糖:チェコの砂糖製造所で所長を務めていたスイス人のヤコブ・クリストフ・ラートは、世界で初めて角砂糖を生んだ人物として歴史に名を残した。1840年に使いやすい形状を追求して実験を始め、粗糖を機械で立方体に固めることに成功。1945年に角砂糖加圧機で特許を取得した。
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ハーブキャンディー「リコラ」:パン・菓子店を営んでいたエミール・リヒテリッヒは、ハーブの治癒力を使って色々な配合を試すことに没頭していた。そして1940年、13種のハーブを混合したレシピを開発。「スイスのハーブシュガー」と呼ばれるのど飴の誕生だ。角ばった形状も特徴。このレシピはすべてのリコラシリーズのベースとなっている。
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アルミホイル:アールガウ州のハインリッヒ・アルフレッド・ガウチが1905年に特許を取得。食品を包んだり魚などの煮炊きに使ったりと用途が広く、今や台所の必需品になった。
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おろし器:医者のマクシミリアン・オスカー・ビルヒャー・ベンナーは1926年、スイスでおなじみのシリアル「ビルヒャーミューズリ」だけでなく、材料となるリンゴをすりおろす道具も考案した。丈夫なおろし金は50年経っても切れ味が落ちることはなく、発明から100年経った今もほぼ同じ形だ。
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ジロール:ジュラ州ラジュー精密機械工のニコラ・クレヴォアジエが1982年に考案したチーズ削り器。地元産のチーズ、テット・ド・モアンヌをナイフより速くエレガントに薄く切る方法を求めて生み出した。
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エーデルワイス柄シャツ:特徴的な花柄の生地を初めて生産したのは、ベルン州ロックヴィールの機織工、グーゲルマン。1960~70年代に生産が始まったが、誰が柄をデザインしたのかは分かっていない。意見が一致しているのは、まだ100年の歴史を持つ伝統ではないということだ。
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ランディチェア:スイス人デザイナー、ハンス・コレー(1906~91年)が考案した椅子ほど典型的なスイス製家具と認識されているものはない。1939年のチューリヒ万国博覧会で屋外に使う椅子として生まれ、デザイン界のアイコンになっている。
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皮むき器レックス(REX):ダボス出身のアルフレッド・ネヴェックツェラルが1947年に考案し、特許を取得。この発明品は世界の調理シーンを変えた。オリジナルのREXはアルミだけでできており、簡単に安く生産できるが品質は高い。
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USMハラー:モジュール式の収納システムはUSM社のシェーラー兄弟と建築家のフリッツ・ハラー氏が1960年代に共同製作。シンプルなモジュールを部屋の大きさや必要によって自在に組み合わせを変えることができる。診療所や事務所、受付ホール、個人の私室など至る所にある。
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TMPペーパーコレクター:スイスの工業デザイナー、ヴィリー・グレーザー氏が1989年に発案した新聞保管かご。エレガントな金属製かごは古紙をスタイリッシュにまとめられる。国外でも人気が高く、デザイン界の代表作とされている。
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RAKOコンテナ:プラスチック製造業ウッツ社の創業者ゲオルク・ウッツは、ウサギ小屋から郵便受け、ニワトリかご、パレットまであらゆる製品を開発した。プラスチックコンテナのRAKOは1965年に生まれ、爆発的な人気を得た。今やスイスのほぼ全家庭が持っていると言っても過言ではない。
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スイス人はどちらかというと慎重で朴とつとした気質だと言われる。だが実は、人々の暮らしを大きく変える発明品をいくつも世の中に送り込んでいる。
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スイス人の発明品を並べてみると、いずれも形状が美しく便利なことに気づく。いくつかはスイス製であることを象徴するデザインに成長した。
かつての農業国は今やイノベーション大国に成長した。2012年には「グローバル・イノベーション・インデックス」でスイスが首位に立った。1人当たり特許出願件数は欧州1位。18年は955件と、ドイツの332件や米国の132件を大きく上回る。スイス発の発明品リストは長く、それぞれが持つ歴史も面白い。
スイスのお家芸である製薬に関連した発明が多いのは何ら不思議ではない。例えば人工のビタミンC、抗炎症作用のあるコルチゾン、ジアゼパムなどの鎮静剤がそうだ。物議を醸す幻覚剤LSDを発明したのもスイス人化学者のアルバート(アルベルト)・ホフマンだ。
暮らしを便利にするイノベーションは特に重宝されている。ファスナーやセロファン、アーミーナイフ、腕時計、折り畳み物干し、ガーリックプレスなど、スイス人の功績は枚挙にいとまがない。
最も大きく世界を変えた発明の一つは、アルバート・アインシュタインの相対性理論だろう。スイスを代表する重電ABBの前身ブラウン・ボベリ外部リンク社を創業したチャールズ・E・L・ブラウンは、高圧の三相システムで電力を送る方法を考案。高圧線の基礎を築いた。
(出典:欧州特許庁、スイス歴史辞典)
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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スイスはイノベーションの国だ。イノベーションに関する世界ランキングでは常にトップか上位グループに入っている。しかしある調査によると、イノベーションの担い手は中小企業から、主に製薬分野やIT分野の大企業へと移行しているという。実際のところはどうなのだろうか?
チューリヒ北部のヴィンタートゥールにあるビールメーカー「ドッペルロイ」。見方によっては、この中小企業にはイノベーション力がないと言える。ドッペルロイは特許を申請することもなく、研究開発に多額の予算を投じているわけでもないからだ。
しかし同社は創業から4年で生産能力を20倍に拡大。スイスで成功の見込みのあるニッチ市場を見つけ、人気のクラフトビールへの需要を一気に伸ばした。ドッペルロイの製品は幅広く、ペールエールからスタウトやウィスキー入りのビールまであり、一方変わったものを求めていたラガービール好きの人たちに受けた。
同社が生み出したイノベーションは、スイスドイツ語で「首切り」という意味のビール「コプフアプ(Chopfab)」のマーケティングの中だ。
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